第4話 初めての戦闘

   ノブは恐る恐る始まりの洞窟に入った。洞窟の中はそれほど薄暗くなくむしろ明るいほどだった。ノブは辺りを見回していると小さな妖精が近寄って来た。


「私は愛と勇気の美少女妖精、ピッピよ」


   「自分を美少女って言うなんてスゲーな。愛と勇気の妖精ってことは、あんパンが顔の人と友達なのかな?」


「まずは適正からね。 ジバザハットお願い」


「はい、にゃーん」


 オレンジいろのシルクハットがノブの頭に乗った。


「トラックに引かれた猫の自縛霊と銀河大戦争の商人が合わさった名前だな。」


「これは、すごく難しいにゃーん」


「 まさか、クラス分けをするのか?」


「違うにゃーん、だまっててにゃーん」


「決まったにゃーん、グリフィ…。 スタッフにゃーん。」


「今、魔法使いの学校のクラス名を言おうとしなかったか?」


「違うにゃーん、そんなことは言ってないにゃーん」


「あなたには、このスタッフをあげる。魔法使いの適正があるようだから頑張ってね」


「ジバニャ、おっと違った。ジバザハットありがとう。」


「今、自縛霊の猫を言おうとしていただろう。」


「はい、これスタッフよ。」


  そう言いながら木のバットを渡された。


「どう見ても木のバットなんですが…」


「じゃあ、戦闘の仕方を教えるわ。

 テンスラ出てきなさい。」


  白い仮面を付けたスライムがノブの前に現れた。


「うわー、今度はラノベかよ。パクリすぎだろ。」


  「いい? モンスター には必ず急所があるの。スライムの場合、仮面よ。わかったらやってみなさい。」


 ノブは渋々、スライムの仮面に竹竿で突いた。スライムの仮面に当たると赤い吹き出しで1と表示された。


「 モンスターから攻撃には気をつけて。あと9回仮面に当たれば倒せるわ」


 その後、ノブはテンスラから3回の攻撃を受けギリギリで倒した。


「はい、 これはクォーターポーション4つあげる。 全HPとMPの1/4が回復するの。  これでチュートリアルは終了よ。」


「ありがとう」


 ノブはクォーターポーションを飲みながら出口へと向かった。始まりの洞窟を出るとユウナが待っていてくれていた。


「終わった? 」


「ああ、終わったよ。帰ろう。」


「それで、レベルは上がったの?」


 ノブはステータスを表示して確認した。

ノブは何回も見直したがレベル1のままだという現実に項垂れるのであった。


「 何回見てもレベル1のままだが。」


「はぁ? 普通一匹でも倒せばレベルアップするんだけど。」


「俺にもわからない。」


「まあいいわ。 ギルドに戻って初級クエストを受ければ嫌でもレベルアップするわ。じゃあ 、行くわよ。」


 ノブは、帰りもユウナに手を繋がれ鯉のぼり状態でギルドに帰るのであった。


 ギルドは、朝に比べて人が疎らだった。あのベテランのガジルはいない。ノブ達は、 受け付けの方へ歩いた。


「始まりの洞窟をクリアしました。次のクエストをお願いします。」


 「承知しました。始まりの洞窟をクリアした方は、3つのクエストから選んで頂きます。一つ目は、  薬草の採集です。二つ目は、ゴブリンの討伐です。三つ目は、街中のゴミ拾いです。

どれにしますか?」


「じゃあ、薬草の採集で 」

 

「承りました。これが薬草の群生マップとサンプルです。薬草の周辺には、HPが10のスライム、通称テンスラが出現しますので十分に注意をお願いします」


「わかりました。では、行ってきます。」


ノブ達は、再び冒険者ギルドの外へ出た。


  俺たちは、ウィンドウのマップをみながら30分歩いた所で薬草の群生地帯にいる。モンスターに遭遇することなく着いた。


「ここら辺に薬草があるみたいだ。これが薬草かな?」 


 雑草をゲットした。


「じゃあ、 こっちは?」


雑草をゲットした。


「なんだ、雑草ばかりだ」


「鑑定がないからしょうがないでしょ。さっさと見つけなさいよ」


ノブは、10回抜いて1つの薬草を見つけた。


「ふぅー、やっと一つ見つけた」


「油断している場合じゃあないわよ。テンスラが来たわよ。」


  ノブは唯一の武器の竹竿を構えた。テンスラ一匹が、こちらに近寄って来た 。


「うぉー、これでも喰らえ。」


  木のバットによる渾身の突きでテンスラに攻撃した。


「ペシ」


「あんた、テンスラごときにダメージ与えれないなんて本当に弱いわね。」


 その後、ノブはダメージを食らいながらテンスラを倒した。


 「で、レベルは上がった?」


  「ステータスを確認してみる。」



なまえ       :ノブ

ねんれい   :17

しょくぎょう : ニート

レベル    :1

HP              :3/11

MP          :210/210

ちから       :3

すばやさ      :2

たいりょく  :2

かしこさ      :10

うんのよさ  :10

のうりょく  :睡眠耐性


 ノブは、ステータスを見るとレベルは1のままだったことに落胆した。経験値はテンスラを3匹倒したのに1のままではあったがHPとちからは1上がっていた。


「レベルは、まだ上がっていないよ。」


「はぁ? 何それ?

  まあいいわ。テンスラ倒せたし薬草もゲットしたし後は帰るだけね。」


「まだ、一つしか薬草を採ってないぞ。」


「 良いのよ。一つでもあればクリアなんだから。 それにもう夕方だから帰りましょ。」


 ノブは空を見上げれば、赤くなっていた。夢中になっていて全然気が付かなかったようだ。


「わかった。帰ろう。」


ノブたちは、ギルドに帰りクエストを無事クリアした。


「ユウナ、今日1日ありがとう。」


「うん。明日からは一人でクエストやってね。今日だけは、おばさんの頼みだから面倒見ただけだからね。」 


「わかってる。明日からは一人で頑張るよ。」


「そう、じゃあね。」


  ユウナは、 足早に帰って行った。

ノブは、今日の出来事を振り返ってみた。


「今日1日で、課題が山積みだ。 いろいろ考えなきゃならないけどクタクタだから帰って寝よう。」


  それから一時間、家への帰り道が分からず迷ってしまった。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


  ノブはミラに今までの出来事を説明した。さすがにガイドのガガさんの事や前世の日本については話さなかった。


「とまー、危うく死ぬところだったんだ。

 スキルは職業に紐付いているから取得できない。そもそもレベルが上がらないから転職もできないので詰んでいるんだ。」


 ミラは、頷きながら少し何か考えていた。

 ノブが説明している時、 何個か質問を受けた。何か心当たりがあるのだろうか、外れてても良いからこの状態から抜け出せる糸口でもあればとノブは思ってしまう。


「なるほどあなただけ、違うシステムが実装されているのね。かつて文明が栄えた超古代人とシステムが似ているわね。

 私はこう見えても超古代文明の知識があるのよ。私ならあなたを死なないぐらいにはできるわ」


「え、 それは本当? できるのならお願いします。」


「ええ、 本当よ。 ただし、過酷な鍛練になるわよ。それでも良い?」


「はい、お願いします 」


 俺は即決で答えた。この詰んだ状態から抜け出せるなら何でもやるしかない。


「 じゃあ、始まりの街までこれを着けて走って帰るわよ。」


 ミラはタイヤとロープを出した。


「え? これ何?」


「 コンダラよ。 我が門派は、 まずこれを着けて走り込みするのよ。 」


「昭和の野球アニメかよ。しかも古くて平成世代にはわからないぞ。」


「さあ早く着けて、走っている時には歌を唄うのよ。」


「わかったから歌だけは勘弁してくれ。」


そう言いながらロープを腰に巻き、ノブは重いコンダラを着けて走り始めるのであった。

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