第3話 ゲームスタート

 「ノブ起きなさい、朝よ」

 

  ノブはドアをドンドンと叩く音と女性の声で気がつく。その女性の声は、少し怒りの入った口調だった。ノブはベッドで寝ていたようだ。

  

 「俺の知らない部屋だ。」


  ノブが現状把握に声を出せない間にドアの向こう側の女性は動き出した。


「返事がないなら実力行使よ」


 ドアの破壊音とともに女の子が入ってきた。その女の子は水色の服に大きな剣を背負っていた。頭の上の空中には、【ユウナ】と表示されていた。


(ゲームをプレイするとは言っていたけどまるでゲームの世界みたいだ。一応、感触や匂いはあるけどとりあえずはこの女の子と話すか?)


「君は、ユウナ?」


「そうよ、あんた幼なじみの顔を忘れたの?」


ユウナは、半ば呆れて俺を見た。 


「ああ、すまん。寝ぼけていたみたいだ」


「それよりノブ! おばさんからあんたを冒険ギルドに連れていくことを頼まれてるのよ。今日こそこの部屋から出でてニートを卒業だからね!」


   ノブは状況が掴めなかったがユウナの言うことに従った方が良いと思った。


「わかった、行くよ。着替えるからちょっと待ってて」


  ノブはパジャマから着替えようと服がどこにあるか探したがタンスには何も入っていなかった。


「あんたバカー? こうやってメニューウィンドウを開いてアイテム欄から服を装備するだけでしょう」


 ノブはユウナの言う通りの仕草をするとメニューウィンドウが現れた。ノブはアイテム欄にある【普通の服】を装備するに設定するとパジャマから服に切り替わった。


「すまんすまん、ニート生活が長かったから忘れてしまったよ」


「じゃあ、下に降りるわよ」


ノブはユウナの後を追い2階から1階へ降りた。ユウナは小走りで歩き女性に話しかけようとしていた。


「おばさん、ノブを部屋から出したよ。これから冒険者ギルドに行って登録まで済ましてくるね。」


 その女性の名前の表示は、【ノブの母さん】と表示されていた。


(なんだこのゲームは、自分の主観で表示するのか? まあ分かり易くて良いけど…)


「ノブ、気を付けて行ってらっしゃい」


「ああ、行ってくるよ」


そしてノブとユウナは、家を出た。

外に出ると中世のヨーロッパの街並みが広がっていた。その街並みはファンタジーロールプレイングゲームような家が全て同じような作りになっている。すれ違う人々の名前の表示はほとんどが【????】となっていた。ノブは多分名前がわかると表示されるのだろうと思った。


「なあ、ユウナ。ユウナは冒険者の登録は済んでいるのか?」


「はぁ? あんた、16歳になったら普通は登録するのよ。私はもう登録して2年経っているわよ。そんなことも知らないの?常識でしょ。

 今日は忙しいところをおばさんに頼まれたからあんたを連れていくだけだから」


「そうか、教えてくれてありがとう」


「冒険者ギルドに着く前に、一応ステータスはチェックしなさい、どんなジョブに向いているか選ばなきゃならないから。それからステータスは相手から見えないわよ自分しか見えないわ。」


「わかった」


ノブは先程覚えたメニューウィンドウを表示させステータスを見た。


なまえ       :ノブ

ねんれい   :17

しょくぎょう : ニート

レベル    :1

HP              :10/10

MP          :210/210

ちから       :2

すばやさ      :2

たいりょく  :2

かしこさ      :10

うんのよさ  :10

のうりょく  :睡眠耐性


「どれどれ、うわー2と10が並んでいるぞ、職業がニートってなんだよ?」


「どう?」


「職業ニートって書いてある。ステータスは2と10しかない。」


「やっぱりレベル1だからステータスは低いわね。ニートなにそれ?」


「ニートって働きもせずにずっと家にいるとなれる職業だよ。」

 

「聞いたことないわね。そもそもあんたは、なにも知らないから教えてあげる。」


 この世界は、レベルアップでステータスが上がること、モンスターを倒せば経験値が貰えレベルアップすること職業によりスキルが取得できること、 そして転職はレベル40からできることをノブはユウナから教えてもらった。 ちなみに ユウナはレベル65で職業は聖騎士だ。 中堅の上位だということをユウナから教えてもらう。


  次にユウナはサポートキャラというものを説明する。NPCとのやり取りで好感度という隠しパラメーターがあり。その好感度が上がるとNPCを仲間にすることが出来る。仲間にできるのは最大で二人までとなっている。


 ノブ達は、冒険者ギルドのある建物に入った。中は何人か待ち合わせできるだけの広さがあった。ベテランであろう冒険者が何人かいた。

 

「おい、そこの弱いヤツはお断りだぜ。さっさと帰んな!」


如何にも柄の悪そうな髭を生やしたおっさんが、話しかけてきた。


「すみませんが、  登録したいので退いて頂けますか?」


「あー? 俺の攻撃を避けられたら、 退いてやるよ 」


そういうとおっさんが殴って来た。もちろん、ノブは格闘技なんて習っていなかったので避けることは出来ず全て攻撃を受け最後はアッパー気味の攻撃にぶっ飛ばさる。 

  右上にあるHPのバーが一気に下がって行きバーが赤くなった。すると後ろにいたユウナが前に出た。


「カジル、コイツの面倒はわたしが見るから大丈夫よ」


「ちっなんだ、ユウナがいるのかよ。

 命拾いしたな、次に会う時は強く成っていろよ!」


 ガジルは捨て台詞を言って何処かへ行ってしまった。

 

「アリサ回復お願い」


「大丈夫ですか?  ヒールで回復させます」


 アリサという美人のお姉さんがこっちに来てノブを魔法で回復させる。


「ありがとうございます」


「ノブ、こっちよ早く来なさい」


 ノブはアリサさんに手短にお礼を言って受け付けのお姉さんの前まで走った。


「ここが新規登録の受け付けね。始めに言っとくけどこのキャラはNPCだから余分なことは喋らないわよ」


「いらっしゃいませ。冒険者ギルドの新規登録でしょうか?」


「はい、お願いします。」


「では、この水晶に手をかざしてください。」


 ノブは、言われるまま水晶に手をかざした。すると、水晶が眩しいくらいに白く輝いた。

 

「うぉー眩しい! 俺って光属性でもあるのか?」


「ノブ、あんたバカでしょ! ただの演出よみんな同じぐらい輝くのよ。」


 ユウナがまたジト目でノブを見た。はい、三回目のジト目を頂きましたとノブは心の中で呟いた。


「ノブ様、登録完了しました。では、  冒険者ギルドのシステムについて説明します。」


 この冒険者ギルドのシステムは、簡単だった。 レベル10までが初級、レベル50までが 中級、レベル51以上は上級とカテゴライズされておりクエスト毎に レベル制限がある。 だから、レベルが低いとクエストを受けれないものが多い。 また、パーティー単位で受けることも可能で、 その場合はパーティー内でレベルが一番低い人が基準となる。だから、上級者パーティーの中にレベル1の俺が入った場合は、初級のクエストしか受けられない。そしてギルドランクというものはなくSS級冒険者みたいなものはない。


「冒険者登録された方はまず始まりの洞窟にて精霊様から訓練を受けて頂きます。始まりの洞窟までのルートを自動登録しますか?」


「はい、お願いします。」


すると、ノブの視界にカーナビのように透明な矢印が目の上の方にでるようになった。


「じゃ、行きましょう」


 ユウナはそう言うとノブの手をつかんで引っ張って走り出した。ノブはあまりの早さに足が縺れ途中から鯉のぼり状態になってしまった。


「うぉー、ユウナ早いよ」


「あんた、トロすぎるからこれぐらいしないと今日中に終わらないでしょ。」


 ノブはかれこれ15分は鯉のぼりを堪能し、突如急ブレーキをかけられた体は逆方向に向けられそして背中を地面に叩きつけられた。

 

「着いたわよ」


 「いてー、背中をもろ打った。」


「リミッターがあるんだからそれぐらい我慢しなさい。」


「ここが始まりの洞窟かー?」


「ええ、そうよ。レベル5までしか入れないからあんた一人で行きなさい。入ったらすぐに精霊が出てくるから話しかけなさいよ」


「わかった」


ノブは背中を擦りながら洞窟の中へ入っていった。

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