第9話
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「うぉぉぉぉぉ!!!」
「たぁぁぁぁぁ!!!」
「うむ、素晴らしいぞ!このガリウスも少しばかり本気を出さねばなるまいて!」
新良貴遥人と凛堂眞琴はガリウスに裂帛の気合いとともに斬りかかる。対するガリウスは勇者と聖騎士の放つ2人の鋭い剣戟を難なく受けてみせる。ここ演習場では寅蔵を除く勇者一行や城の騎士達が戦闘訓練を行っていた。勇者一行ら高位職業のスキルは強力であり、城の騎士達も訓練の手を止めて見入っていた。
「ガリウス騎士団長と互角かよ・・・。2人がかりとはいえすげぇな・・・。」
「たった2週間で騎士団長とこれだもんなぁ・・・。異世界転移者ははんぱじゃねぇよなぁ・・・。」
勇者と聖騎士は剣術スキルに特化した職業であり、通常の職業である剣士や騎士よりもスキルの習得速度やスキルの威力の補正が非常に高いことが知られている。現在ガリウスが使用しているのはスキル<高速剣術Ⅱ>であるが、勇者と聖騎士が使用しているのは<高速剣術Ⅰ>であり、スキル間に大きな補正差があるにもかかわらず職業補正によりそれを互角にしてしまっている。攻撃の威力は力などの基礎ステータス値、スキルレベル、スキルの効果、職業による補正により決まるため、ガリウスは<高速剣術Ⅱ>を使用することで対応できているが、通常の剣士であれば<高速剣術Ⅲ>を用いなければこの2人の剣劇をうけることは出来ないだろう。ただ、<高速剣術Ⅲ>自体通常の職業では習得自体がほぼ不可能なスキルであることから、高位職業の非凡さがうかがえる。
「・・・なぁ・・・。」
「ん?・・・どうした?」
「俺おかしくなっちまったかもしれねぇんだけどさ・・・。」
「おかしいのは元からだ。言ってみろ。」
「・・・眞琴ちゃんかわいすぎねぇか?」
「「「それな。」」」
「訓練してて怪我したときとかにさぁ・・・。心配そうな顔で『大丈夫??』とか言ってくれるやん?ヒールしてくれるやん?神やん?」
「「「せやな。」」」
「俺・・・男の子でもいいやって・・・この頃思うねん。」
「「「わかる。」」」
勇者一行の訓練は毎日行われており、ギャラリーが出来るのはいつも通りの風景となりつつある。
残りの2人、葛葉沙耶香と藤宮透子はサウバーとの訓練を行っていた。
「・・・<第2階位炎術 ファイアアロー>」
「ほう!術の構築も早いですな!藤宮殿。素晴らしいですぞ!私も本気で行くとしましょう<第3階位炎術 ファイアランス>!」
「透子ちゃん!打ち消せなかった分は此方でカバーします!<ホーリーウォール>!」
サウバーと透子が派手に魔術の応酬をする。沙耶香と透子もそれぞれ高位職業である聖女と賢者であり、聖女は回復と防御魔法に特化しており、賢者は攻撃魔法に特化している。
賢者である透子は通常の職業である魔術師よりも魔法スキルへの職業補正が非常に高く、サウバーもファイアランスで応戦する形になっている。
「俺・・・10年頑張ってファイアアロー覚えたんだが・・・・。」
「泣くな・・・透子ちゃんは天才だ。」
「つるぺた黒髪ロング合法ロリは正義だ?わかるね?」
「俺は沙耶香ちゃんの爆乳を見守るぜ・・・。」
「・・・あの禿魔術師もっと水術使えよ、空気読めねぇな?透けさせろっていってんの。!?うぉぉぉぉ!あちぃぃぃぃぃ!?サウバー様冗談ですうぅぅぅぅぅぅ!・・・俺・・・この訓練が終わったら沙耶香ちゃんにヒールしてもらうんだ・・・。」
訓練場では騎士達の怪我が絶えないため、沙耶香や眞琴が中心となり騎士達の傷を癒やしていた。訓練後で彼女らも疲労困憊であるにもかかわらず、嫌な顔など全くせず笑顔で怪我を治療していくその姿に胸打たれる者が多かった。
「ふむ・・・そろそろ、昼ですな。訓練を終えるとしますか。」
「はい。サウバー様ご指導ありがとうございました。」
「・・・ありがとうございました。」
「いやぁ、お二人のスキルの向上は目を見張るものがありますなぁ!私も城内では天才天才ともてはやされているのですが・・・」
ちょうど城内に昼の鐘が鳴った。訓練終了の合図である。
「ふぅ・・・もう昼か。よしおまえ達休憩にするか!」
「はぁ・・・はぁ・・・よっし。ありがとうございました!」
「はぁ・・・はぁ・・・ガリウスさん、ありがとうございました!」
演習場の騎士達はそれぞれの足取りで食道へと向かう。沙耶香と眞琴は訓練で怪我を負った者の治療を始めた。
「眞琴ちゃん・・・ありがとうございます・・・!」
「もう・・・ちゃんってなんなのさ。僕は男なんだから・・・。」
「沙耶香様いつも本当にありがとうございます・・・」
「いつも訓練お疲れ様です。ご無理なさらないでくださいね。他に痛むところはありませんか?」
「(おっぱいがたゆたゆしとる・・・。)・・・はっ!ありません!ありがとうございました!」
サウバーとガリウスはそんな彼女らをみながら、次の訓練のことを思案していた。
「ガリウス殿。彼らはこの2週間でかなり成長できていますな。」
「うむ・・・。後数週訓練すれば、ダンジョンに実地訓練に行ってもいいかもしれぬな。」
「寅蔵殿はいかがなされますか?」
「ああ、彼か。『運転手』という職業だが、文官に調べさせたが今までにない職業ではあるようなのだ。ただ、戦闘向きでは明らかになさそうではあるな・・・。誰が訓練を施すのが適切かわからんままなのだ・・・。」
「一度訓練にお呼びしてもよろしいのでは?」
「うむ・・・。そうだな。異世界転移者であるからな。きっと魔王討伐に活かせる何かがあるだろう。どれ、私が直々に試してやろう。」
「おぉぉお?」
なんかブルッと来たな…
「如何なさいましたか?久留米様?」
「あぁ、いえ、何でもありませんよ!」
ガハハと高笑いするガリウスと、庭掃除の手伝いをしながら身震いをする寅蔵であった。
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