第62話〜旅立ち
「準備はいいかい?そろそろ馬車が出ちまうよ。……マゼンダはさっさとユキを離しな!」
そう声をかけられ、トモとユキはバックパックにまとめられた荷物を背負った。
門まで見送りに付いてきたマゼンダは名残惜しそうにユキにぴったりとくっついている。
ここ数日でうちとけたのか、ユキもマゼンダには心を開いているようだ。
さすが心は乙女である。
警戒心の強いユキも、幼さゆえにか純粋なものを感じ取ったのだろうか。
しかしはたから見たら完全に美女(美幼女)と野獣である。
「怪我とかには気をつけるのよぉ?外は悪い人とか恐いモンスターがたくさんいるんだからね。何かあったら私のお姉様か妹たちを頼りなさい」
マゼンダはその厚い胸いた…胸にユキを優しく抱き、鋭い眼こ…つぶらな瞳を潤ませている。
「マゼンダは本当に心配性ねぇ。あたしが道中付いてるんだから、野盗だろうがモンスターだろうが問題ないよ」
「でもローゼお姉様、街に入ってからだって悪い男に騙されたり、旅の途中病気になることだってあるかもしれないじゃない…」
「それこそ生きてればどんなことだってありえる話さ。さぁトモにユキ、馬車が出る前にさっさと乗りな」
「ユキちゃん、トモちゃん、元気でね~!お手紙、待ってるわぁ!」
熱烈な見送りを受け、トモたちが乗った馬車は門を出て進んでいく。
もうこの街がトモを捕らえることはない。
ユキも馬車の窓から森の方を見ている。
この街を出る前にトモと訪れた、フェンリルの住処を思い出しているのだろう。
全てから解放され、過去の記憶に囚われたトモ。
復讐はまだ一人目が終わったばかりだ。
馬車は進む。
無言の殺し屋と、無口な少女の旅はまだ始まったばかりだ。
第1部完
無言の殺し屋と無口な少女 砂上楼閣 @sagamirokaku
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