第57話〜みつけた
クリスによって戦場跡と大差なく破壊されたロズウェル邸の庭だったが、二日間で大まかに修繕されつつあった。
その間ロズウェルは地下へと潜っていた。
これは別段逃げていたわけではなく、地下の区画にある隠れ家で過ごしていただけだ。
今回トモを始末した件で、魔王軍から報復を受けることはほぼ無いと言っていい。
ロズウェルが行ったことは勇者の血筋が街にいるとリークしただけ。
確かにクリスという帝国の勇者がロズウェルの元を訪れ、さらにその場でトモもいた。
しかしこれはロズウェルを暗殺に来たトモがクリスと鉢合わせ、そしてクリスの判断で始末されただけ。
ロズウェルは何の指示も命令もしていない。
ただ勇者の血筋に関する情報をリークしたように、トモが呪いを解くのに訪ねるであろう裏組織の幹部たちに、ロズウェルが襟元に付けている紀章こそが全ての術式や呪いを解く鍵であると流しただけのこと。
あとはタイミングを合わせるだけ。
クリスがロズウェルのもとを訪れるタイミングで屋敷の警備に僅かな隙を作り、これ見よがしに襟元に紀章を付けておいた。
気配を完全に隠したトモの接近には気づけなかったが、さすが勇者というべきかクリスがトモの存在に気付き、力量差を察したトモはとっさにナイフで紀章を狙うも阻まれた。
そしてあとはロズウェルの思惑通りにトモはクリスに始末され、ロズウェルは念の為地下に籠った。
魔王軍との密約も、帝国との関係も、その一切をロズウェルにとって不都合なくこなす。
この手練手管でもって裏組織の長となり、さらには表立った地位も獲得したのだ。
勇者もどきなどにこの地位を揺るがされる事などあり得ようはずがない。
ロズウェルは綺麗に修復された屋敷の自室で笑みを浮かべた。
今回は多少の損失はあったが、そんなもの裏組織からしてみれば大したものでもない。
表立った被害も帝国からの見舞金という名の口止料でお釣りがくる。
そして一方的な搾取を行おうとした魔王軍からは一本取ることができた。
何の損失もない。
むしろ近々不穏な気配を見せていた部下の始末まででき、帝国には小さいながらも貸しができた。
ロズウェルはメイドにワインでもとって来させようと机の上のベルに手を伸ばし
みつけた
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