第54話〜勇者の法則
紅蓮の閃光が辺りを染め上げる。
敷地は瞬く間に戦火の檻に閉じ込められた。
「きっと貴方は勇者という存在を、法則を憎んでいるでしょうね。力があれば滅ぼしてしまいたいと思うほどに。他の魔王の方々もそうでした。しかし…」
トモは辛うじて、マゼンダの手で刻まれた【耐衝撃】【ダメージ分散】【属性攻撃軽減】の刻印により、本当に辛うじて五体満足で生きていた。
被害は致命的というほどではないが、先ほどの一撃で防具類の刻印は消し飛び、防具としての役割もほとんど果たしていない。
抑えられ、分散され、炎の効果を弱められてなお全身に衝撃によるダメージと中度の火傷を負っていた。
しかし、何を言っている?
この女性はトモに何を語っている。
「しかし、私にいいように遊ばれているうちは勇者はおろか帝国を守る兵士達にも敵いませんよ。何せ私は、勇者の中でも下から二番目、つまり最弱に近い強さしかないのですから」
トモはクリスとの間に隔絶した実力の壁があることを感じていた。
まるで個人ではなく大軍と戦っているような、大人に赤ん坊が挑んでいるような、それほどの戦力差。
そんな彼女ですら、勇者としては最弱に近い。
それでは、トモは勇者という存在を……。
……?
今思考がまた不自然に…。
その隙が致命的だった。
瞬く間に戦火の炎を撒き散らした紅蓮の閃光が、トモに向かって放たれる。
「せめて苦しまないように、一瞬で灰になりなさい」
まるで生きているように鮮やかな紅が、引き伸ばされた世界を流星の如く迫る。
トモの命の火が太陽のような炎に飲み込まれ
『………。』
トモの意識は一瞬で掻き消された。
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