第28話〜そっと扉を閉めていく

「おやおや、これはどういうことだろうね、ランドルフさん」


トモが部屋に入ると、そこには七人の男たちがいた。


一人はトモの一応の上司に当たるランドルフ。


四人はランドルフの部下で護衛。


残りの二人は見覚えがないが、相当な実力者だということは分かる。


特に拘束具のようなもので全身を覆っている男に守られた男は、正直護衛などいらないほど強い。


どうやら取り込み中だったようだ。


ランドルフは普段の余裕な顔を怒りと焦りに歪ませている。


「貴様、知っていて知らん顔決めてやがったのか!」


「当たり前だろう?二流のランドルフさん。うちの情報網を甘く見ないことだね」


これは修羅場、というやつだろうか。


入れと言われたから入ったが、どうやら空気が読めないタイミングで来てしまったらしい。


剣呑な空気に殺意の割合がどんどん増していく。


これでも気配を読むのは得意なのだが、この区画の部屋は特殊な細工でもしてあるのか中の様子が分かりづらい。


空気を読むことと空気になるのが得意な方だが、ここは席を外した方が無難だろう。


というわけでトモは気配を空気に溶け込ませて、ソッと扉を閉めて退室する。


閉まる直前までランドルフの怒鳴り声は響き渡っていた。


滅多に会う機会のない上司で助かっている。


しかしいつも仲介人を通して命令を届けてくれているのはランドルフなりの優しさなのかもしれない。


いい上司を持った。


トモはとりあえず空気を読んでその場を立ち去った。

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