第25話〜地下施設3-57
深夜。
雪がチラつく街中をトモは行く。
見上げれば雲一つない、星々が今にも降り出しそうな透き通った空がある。
空に雲がなくとも街には雪が降る。
きめ細やかな雪は道を、建物を覆う。
この街で雪が全て溶けきることはない。
春を失ったこの街に雪解けは訪れない。
地下施設3-57。
そこは街の中心よりやや東寄りの場所にある。
所謂上流階層の密会場。
もっとも警備が厳重で、外から繋がる道は存在せず、いくつかある入り口は全て上流階層の建物の地下にある。
ということになっている。
しかし図面に描かれていないからといって、実際には抜け道が存在しないなどということはない。
トモはこの街の地下通路や水路の図面には描かれていない路を通って区画に侵入する。
いつも利用している出入り口が全て見張られていたからだ。
中には複数の手練れと、明らかに同業者も混じっていた。
そして何よりこの街の住民以外の、外からやって来たと思われる人影もいくつか発見した。
明らかにきな臭い。
罠である可能性が高い。
ミスした覚えも契約を破った覚えもないが、もしかしたら始末される可能性もある。
もっとも、狙いはトモではなくユキである可能性の方がはるかに高かったが。
上流階層の密会場だけあってこの区画には等間隔に灯りがある。
といっても松明などの火を使ったものではない。
魔石を使った高価な灯りだ。
揺らめくことの無い明かりが無機質な通路を照らしている。
時間は深夜よりもやや早い。
それほど広くは無い区画は、トモの知覚の範囲内のためどれほどの人数がいるのかは手に取るように分かる。
どうやら外に比べてあまり詰めかけてはいないらしい。
トモは指定された部屋の扉に手をかけた。
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