第22話〜監視の目

ねぐらへと帰る道すがら、トモはいくつもの視線を感じていた。


いや、実のところあの白いローブの男に会う少し前から気付いていた。


普段から監視されていることは知っていたため気にしていなかったが、今回に関しては数も質も違った。


特にあの遠くから気配を散らすようにしてこちらを見ていた相手は別格だった。


あの白いローブの男と同等か、もしかしたらそれ以上かもしれない。




トモはそっと息を吐いた。


あの男は『白い獣』と言っていた。


間違いなくユキのことだろう。


いくつも疑問が浮かんでくるが、確証のあるものがない。


そして今夜行かないという選択肢も、ない。


トモはこの街から離れることができない。


つまり彼等からは逃げることができないということだ。




不意にトモは足を止めた。


トモを監視していた視線が消えたからだ。


それも一斉に。


ただ一つを除いて。


このタイミングで監視が外れることなどあり得ない。


トモには吹雪の時でさえ監視が付けられている程なのだから。


トモは懐のユキが入った鞄を優しく抱きしめると、近くの横道へと飛び込む。


そしていくつか複雑なルートを進み、隠蔽された地下への入り口へと身体を滑り込ませた。


念のためさらに迷路のような地下水路を進み、広めの空間に出ると足を止めた。


間違いない。


追跡されている。


そして間も無く足音が聞こえてきた。


隠す気もないのだろう。


普通に歩いてこちらに近付いてくる。


音の感覚と歩調からして小柄な女性もしくは子供。


人数は一人だけ。


トモはいつでも逃げられるよう、闘えるように自然体で身構える。


もし監視たちをほぼ同時に倒した相手ならば相当な腕前だ。


ユキを庇いながらでは厳しいかもしれない。


足音はすぐそばまで来ていた。


そして水路の暗がりから、ついに追跡者が姿を現した。

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