第21話〜命令
曇りがちな天気の続いたある日。
トモは防具を新調し、依頼をこなし、ユキを外の世界に慣れさせる毎日を過ごしていた。
今日もまた仲介人を通して依頼を受け取る。
………はずだった。
「………?」
しかし今回に限って複数ある指定場所の一つに、仲介人は現れなかった。
代わりにいたのは、この街に溶け込んでしまいそうな真っ白なローブを着た、恐らくは男。
顔はローブ同様に真っ白な仮面に覆われていて、ローブ越しの体格と仮面越しのくぐもった声から男だと判断した。
「命令です。」
依頼ではなく『命令』。
それは普段の仕事とは違った意味合いを含む。
「今夜日付の変わる時間、地下施設3-57地点に来なさい。君が持つ『白い獣』を連れて」
「…………⁉︎」
白いローブの男はそれだけ言うとその場を離れていった。
あくまでゆったりとした自然な足運びで。
しかし見る者からすれば分かる、強者の気配を滲ませながら。
トモはしばらくその場に立ち尽くしていたが、踵を返しねぐらへと帰って行った。
後に残されたのは雪の上の足跡のみ。
辺りには誰一人いない。
いや。
その場から数十メートル離れた建物の屋上に、一人だけいた。
風景にも空気にも溶け込むように、一人の少女が。
「………見つけた。」
そう呟き、少女は小さく微笑んだ。
そしてトモの後を追うように姿を消した。
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