第19話〜冒険者パーティー

ここの所多かった依頼もひと段落ついた。


トモは膝の上で丸まったユキの背中を優しく撫でる。


ユキは心地好さそうに目を細めた。


防具の修理も3日かかるので、しばらくは落ち着いていられそうだった。


帰って早々にユキの好物のリンガを使った離乳食を作り、余ったものは全て食べたのだが、運動量の多いトモにはやはり満腹には程遠い。


なのでよく行く酒場兼食事処で早めの夕食を食べることにした。


トモは壁に掛けられたコートを手に取り、身にまとう。


仕事はないが最低限の武装を整える。


最後にユキを入れるための鞄を身につけ、ユキを抱いて中に入れる。


扉を開け外に出る。


外は良く晴れていた。





外に出て歩くこと数分。


時間帯もまだ夕方には時間があるからか、それほど店に客はいなかった。


この店の店主、というよりはマスターとはそこそこの付き合いだ。


トモの顔を見ただけですぐにいつも注文するものを用意してくれる。


もっとも毎回同じものしか頼まないので、一々確認するのも面倒になったのかもしれないが。


壮年の白髪混じりのマスターはまず平皿にミルクを入れてトモへと差し出した。




食事を終えてから緩やかに時間が流れた。


マスターは見計らったタイミングで温かい飲み物を出す。


僅かに含まれるアルコールと相まってトモの身体がぬるま湯のように火照ってくる。


トモはそろそろ会計をと懐に手を伸ばそうとする。


するとそのタイミングで店の扉が開き、数名の客が入ってきた。


間を外されたトモはなんとなく、座り直す。


それを見たマスターはもう一杯を入れて差し出してきた。


トモは無言で頷く。


やはりここのマスターは分かっている。




入ってきたのは冒険者のパーティー。


若い男が3人、女が2人。


クエストを終えて戻ってきたらしい。


年頃は皆十代後半から二十代前半ほどか。


見覚えのない顔と装備。


若者たちは酒を頼むと盛り上がり始めた。


どうやらクエストがうまくいったことで飲みにきたらしい。


比較的装備が新しいところを見ると、最近この街にやって来たのだろう。




マスターに出された飲み物をゆっくりと味わい、そろそろ戻ろうかと腰をあげる。


さすがにもう外は薄暗くなってきた。


鞄で丸まっているユキもそろそろ飽きただろう。


支払いを済ませて出入り口に向かう。


すると先ほどのパーティーのうちの一人に声をかけられた。


「おい兄ちゃん、もう帰っちまうのかよ?まだ夜はこれからだぜ?こっち来て一緒に飲まねえか?」

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