第14話〜時計塔
時計塔。
それはこの街の中心であり、最も高い建造物。
時の流れをこの街の生まれた時から告げてきた、歴史そのもの。
その時計塔も、一年に一度メンテナンスのために停止する日がある。
それが吹雪が去った次の日の昼である。
「鐘の調子はどうだ?」
「問題ありませんね。【保存】と【耐久】の術式が刻まれていますから劣化することもないですし、よほどの衝撃がなければ傷一つ付きませんよ」
「まぁ形式的なものでも怠るわけにはいかんよ。それがこの街に生きる者の義務なのだから」
「もちろん手を抜くなんてことはありませんがね。……あとは動作確認のために2回鳴らせば終わりです」
「そうか、ご苦労だったね」
「いえ、この塔は【防風】の機能もありますんで、下よりよほど快適な環境ですよ」
そんな会話を足下に聞きながら、トモは街を見下ろしていた。
地上から数十メートル。
外壁の内側に視界を遮る物はなく、時計塔に刻まれた術式のお蔭で凍えることもない。
街は連日の吹雪で真っ白に染まっていた。
雪化粧に彩られた街は一面が白亜の彫刻のようだ。
綺麗な円を描くようにして囲う外壁。
高さ5メートル程の外壁に囲まれた街は、そこだけ円形に切り抜かれて山々に囲まれた平地の真ん中に置かれたようだ。
外壁から平野を抜ければ森があり、遠くにこの地を囲うように山々が連なる。
この街は三重の外壁に囲まれているのだ。
それは同時に三重の檻に閉じ込められているということでもある。
ここに上がり見渡す度に、トモはそう思う。
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