第5話〜二人と一匹の足跡

大通りから外れた細い路地。


複雑に入り組んだその路は、地元民でなければ迷路に入るのと変わらない。


人がやっとすれ違えるかどうかといった細い路が延々と続き、まるで出口などなく同じところをぐるぐると回っているような錯覚すらしてくる。


雪で白一色に染められているのも原因の一つだ。


もちろんトモが迷うようなことはない。


方向感覚や記憶力は鍛えられているし、何よりこの街のことは隅々まで知り尽くしている。


地元民や建物を作った大工よりも、建物の特徴と配置を把握している。


この街の中にいる限り、誰もトモからは逃げられない。




行く当てなどないような足取りでどれだけ進んだだろうか。


前から進んできた男とすれ違う。


互いに顔を窺ったりなどしない。


狭い路地を互いに端に寄ってすれ違うだけ。


そして二つの影が交差した時には、前からやって来た男の袖口からは封筒が消え、代わりにトモの懐に封筒が差し込まれていた。


男とトモは何事もなかったように……実際に当事者以外にはただすれ違った以外には何もなかったように見えた……そのまま歩調を乱すことなく進んでいく。


あとに残ったのは雪の上に残された二人分の靴跡と、小さな獣の足跡だけ。

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