第5話〜二人と一匹の足跡
大通りから外れた細い路地。
複雑に入り組んだその路は、地元民でなければ迷路に入るのと変わらない。
人がやっとすれ違えるかどうかといった細い路が延々と続き、まるで出口などなく同じところをぐるぐると回っているような錯覚すらしてくる。
雪で白一色に染められているのも原因の一つだ。
もちろんトモが迷うようなことはない。
方向感覚や記憶力は鍛えられているし、何よりこの街のことは隅々まで知り尽くしている。
地元民や建物を作った大工よりも、建物の特徴と配置を把握している。
この街の中にいる限り、誰もトモからは逃げられない。
行く当てなどないような足取りでどれだけ進んだだろうか。
前から進んできた男とすれ違う。
互いに顔を窺ったりなどしない。
狭い路地を互いに端に寄ってすれ違うだけ。
そして二つの影が交差した時には、前からやって来た男の袖口からは封筒が消え、代わりにトモの懐に封筒が差し込まれていた。
男とトモは何事もなかったように……実際に当事者以外にはただすれ違った以外には何もなかったように見えた……そのまま歩調を乱すことなく進んでいく。
あとに残ったのは雪の上に残された二人分の靴跡と、小さな獣の足跡だけ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます