第4話〜ユキ
外に出ると雪がちらついていた。
といってもサラサラとした粉雪だ。
空を見上げるとよく晴れている。
吐く息が白く、路の片隅に積もった雪に朝日が反射して眩しい。
まだ半分も昇っていない太陽の反対側では微かに蒼く輝く月が沈みつつあり、星々は少しずつ存在を霞ませていく。
端に除けられた雪とは別に薄く降り積もった雪を踏み締め、まだ疎らな人影に紛れて進む。
その後ろをユキがトコトコと追いかけてくる。
足下を邪魔にならない距離で、しかしピタリと付いてくる。
薄汚れていた毛並みも今では名前の通り雪に紛れてしまいそうなほどだ。
拾ってねぐらに連れて帰り、看病して目を覚ましてから、ユキはどこにいくにもトモから離れようとしない。
部屋に閉じ込めようとしても何時までも扉を前足の爪でガリガリと削って出ようとする。
眠っていてもトモが離れれば目を覚まして付いてこようとする。
仕事に支障が出るからと説明しようにも言葉が通じない。
終いには根負けして連れていくことにした。
幸いなことに今のところ仕事に影響はない。
仕事の依頼も街中なので、もしかしたら雪に紛れて気付かれていないのかもしれなかった。
これが他の野良犬のように吠えたり、好き勝手に動き回るようだったら捨てるか最悪処分していただろう。
しかしユキは獣であるにも関わらず、どこか知性的な瞳をして、無言で付いてくるだけだった。
もしかしたら言葉を尽くして説明すればおとなしくねぐらで待っていてくれるかもしれない。
しかし息を吹き返してから一度として鳴いたことがないユキの、すがるような眼差しを前にしてしまえば、言葉など出てくるはずもなかった。
もっとも仮に言葉が通じたところでトモが話すことなどなかっただろうが。
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