第20話 自宅にて




 私は自宅のダイニングテーブルに、白いバスケットに入ったフラワーアレンジメントをそっと置いた。そして、近くにあるイスに腰かける。じっくりと、齋藤さんがプレゼントしてくれたフラワーアレンジメントを見つめる。何だかまだ気持ちがそわそわする。楽しかった余韻が私の心をイタズラにくすぐる。


「でも……」


 そう呟きながら、思う。


 次、齋藤さんと会えるのは、いつになるだろう。今にして思えば、偶然が重なって起きた再会だった。

 …………、連絡先、聞いとけばよかったかな。って、なっ、なに、そんなこと思ってるのよ。もう、今さら遅い。

 思わず寂しさが顔を出しそうになり、頭を軽く振る。せっかく今、良い気分なんだから。

 このまま今日の夜は過ごしたい。それにさ、もう会えないってわけじゃない。だって彼は、私のお隣さん、なんだから。

 白いバスケットに入った花達を見つめ、頬がつい緩む。ふと、横においてあった物に目が止まった。


……、せっかくだし。


 私は、齋藤さんが買ってくれたアイス、ハーゲンダッツのストロベリー味に手を伸ばす。

 カップの蓋をそっと開けた。程よく溶けたアイスが、カップの縁から少し溢れる。ちょっと慌てて、指ですくいとり、そのまま、口に持っていった。


「んっ……、甘い」


 そして、ほのかに酸っぱい。


 つい、また指で少し、アイスをすくい取った。


「これくらい、今日はいいよね」


 そう自分に言い訳して、二口目を味わう。

 また、齋藤さんと出会えますように。そんな甘酸っぱいことを頭の片隅に思いながら。

 でもそんな私の思いは、意外と早い形で、突然やってくることとなるのだけれど。この時の私は、そんなことしるよしもなかった。

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お隣さんが引っ越してきました @myosisann

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