明日死ぬかもしれない彼女と平凡な毎日を過ごす彼
三村
明日死ぬかもしれない彼女と平凡な毎日を過ごす彼
「私、明日死ぬかもしれない」
「…………は?」
「だ・か・ら、私もしかしたら明日死んじゃうかもしれないって言ってるの!!」
「えっ、いやいやいや急にそんなこと言われてもさ……ど、どうして?」
「なんとなく」
「…………え?」
「なんとなくそんな気がするの!!」
「な、なんだよ……びっくりさせんじゃねえよ。ちょっと本気にしちゃったじゃないか!!」
「別に冗談言ってるわけじゃないの!!本気でそう思うの!!」
「なんか根拠でもあるの?」
「今日ね、朝起きたらね」
「うん」
「なんかその……ビビッ!!てきたのよ」
「はあ、くだらね……学校遅れるから早く行くぞ」
「待ってよ!!ちゃんと私の話聞いてよ!!」
「うるせえなあ……どうせ、『100万日後に死ぬローランドゴリラ』でも読んだんだろ。お前本当に流行りものの影響受けやすいよな」
「ちがうから!!別にそんなんじゃないから!!とにかく、今日は明日死んでもいいように一生分遊ぶことにしたから!!」
「そうかよ、勝手にしろよ」
「もちろん、あんたにも付き合ってもらうから」
「は、ふざけんじゃねえよ今から学校があるんだぞ!!」
「いいじゃん、一日ぐらい休んだってばちはあたらないわよ」
「先生に怒られちまうじゃねえかよ!!大体なんで俺と一緒になんだよ。他のやつでいいだろ」
「だって、あんたのこと好きだもん」
「…………え?」
「あんたのことが好きだって言ってるのよ」
「何冗談言って……」
「本気よ。だって明日死んじゃうかもしれないんだよ。言わずに死んだら、幽霊になっても後悔し続けるもん」
「いや……えっ、ちょっと突然すぎて状況が飲み込めないんだけど……」
「とにかく、これで私達カップルになったんだからさ、早くデートしにいこ」
「いやいや待てよ」
「なによ、もしかして私が彼女なのがいやなの」
「そ、そんなわけないだろ。そりゃお前とは幼なじみで、しかも学年でトップクラスの美少女だからずっと意識してたけどさ……でも、もし告白してふられっちゃったら今の関係まで壊れちゃうかもしれないって考えると、その……告白できないというか……」
「私もよ」
「……え!!」
「私もずっとそう思ってた。でも、明日死んじゃうかもしれないからさ」
「う、うん。そ、そういうものなのか……なあ?」
「とにかく早くデートしに行こうよ」
「え、なにもうどこに行くか決まってんの」
「そりゃ、定番のデートスポットていえばさあ……」
「はあ、やっと着いたね。イズミーランド!!」
「三回ぐらい電車乗り換えして一時間半近く電車に乗ったからな」
「今日は、初デート記念アンド明日死んじゃうかもしれない記念に遊びまくるぞ!!」
「いやいや、明日死んじゃうかもしれない記念てなんだよ。すげえ不謹慎じゃねえか」
「まあまあ細かいことは気にしない早速あれに乗ろうよ!!」
「いやあ、平日だから結構すいてるね」
「うん、それはいいんだけどさあ……」
「どうしたの?」
「お前高いとこ苦手だったよな」
「そうだけど?」
「大丈夫か?ジェットコースターなんて……」
「ううん、どうだろ?でも私一度もジェットコースター乗ったことなかったからさ、人生で一回もジェットコースターに乗らないで死ぬなんていやじゃん。あ!ほらもう乗れるみたいだよ!」
「安全レバーが上がらないかちゃんと確認してくださーい」
「……なあ、本当に大丈夫か?」
「心配しなくても大丈夫だって」
「それでは元気にいってらっしゃーい!!」
「はあ、死ぬかと思った……」
「本当に死にそうな声だしてたな、周りの人めちゃくちゃ引いてたぞ」
「だってだって……」
「はあ、やれやれだな」
「まあ、気を取り直して……今度はお化け屋敷に行くよ!!」
「え、いやちょっとまて、俺お化け屋敷とかそういうの苦手だからさ……ここら辺で待ってるよ」
「やだ」
「ええ……」
「だって、これ逃したら二度と二人でお化け屋敷に行けないかもしれないんだよ!!」
「で、でもさあ……」
「ほら男ならつべこべ言わずにとっとと行くよ!!」
「いや、まて手引っ張るな!!やめ、止めてくれえ!!」
「今日はほんと楽しかったね!!」
「俺は一日中振り回されっぱなしだったけどな……」
「でも楽しかったでしょ」
「……まあな」
「あ、ほら見て!!花火だよ」
「ほんとだ。きれいだなあ」
「好きな人と一緒にデートして花火を見て……本当に幸せだなあ……これで我が人生に一片の悔い無しってかんじだね!!」
「……なあ悪いけどいったんこっち見てくれないか」
「何よいきな………ん!!」
「……」
「えっ、い、いま、きっキキキス…………」
「俺も後悔したくないからさ……」
「え、今なんて……」
「……何でもねえよ」
「もう夜おせえな、きっと親も激怒してるだろうな……」
「……そうだね」
「なあ、またいつか一緒に行こうぜイズミーランド」
「うん、もちろん、いこいこ!!」
「今度は学校サボらずちゃんと休日にな」
「わかってるよそんなこと」
「……本当か?」
「本当よ!!」
「ぷっ、ははははは……」
「もう何笑ってんのよ」
「ごめんごめん、それじゃあまた明日な」
「うん、また明日……」
明日彼女は、彼は、この世にいないかもしれない。でも、それは明日になるまでわからない。
明日死ぬかもしれない彼女と平凡な毎日を過ごす彼 三村 @akaaosiro3824
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