異邦人歓迎15

「ふぅーん。これがアンタの本気って訳か」


 言葉では一切焦りを見せないようにしながら、継実は内心「これは凄い」とエリュクスの文明に対し少なからず驚きと感心の念を抱く。それほどの存在感を、継実が見上げている『物体』は放っていた。

 

 目測ではあるが、それが継実が観測した『物体』の大きさ。途方もない巨大さだ。ここまで馬鹿デカいものなんて、今までの人生で見た事もない。七年前に至近距離で目の当たりにした、人類文明を終わらせたかのムスペルだって五百メートルしかないというのに。

 下半身はある程度の液性を保っているのか、スライムのように不定形だ。幅は五百メートル近くある。しかしその柔らかな部分は高さ百メートルほどと、全体から見ればごく低い部分のみ。

 高さ百メートルよりも上は硬質化し、『身体』を形作っていた。鍛え上げた人間の腹筋を彷彿とさせる屈強な胴体を持ち、腕は肩と脇腹から一対ずつの合計四本生えている。頭のような部分には目も鼻も口もない。ならばのっぺりとした顔面に一体どんな意味があるのか、継実には見当も付かなかった。背中からはざっと五百メートルはあろうかという触手が無数に生え、うねうねと気味悪く蠢いている。

 一言で例えるなら、不気味な巨人。

 雲よりも高い超巨大物体が、目のない顔で継実をじっと見つめていた。


「(流石にこのサイズ差は不味い……!)」


 巨人を前にして継実は危機感を抱く。

 先の『前哨戦』で継実は、五十メートルの艦船を何十何百と撃沈してみせた。エリュクスの文明が持つ技術力より継実の身体能力なのは明白。しかし流石にこれだけ『体格差』があると力の優位を保てるとは思えない。それに相手は変幻自在の存在だ。一体どんな攻撃を仕掛けてくる事やら。

 真っ向勝負をするのは不味いと、本能的に予感する。継実の率直な印象を述べるなら、一対一でやれば八割方負けるだろう。無論こちらは全力を出した上で、だ。

 ではどうすべきか? 簡単な話だ。別にこんなものをわざわざ相手にする必要なんてない。継実の敵はあくまでも巨人の前で棒立ちしているエリュクス。アイツの粒子ビームで跡形もなく吹っ飛ばせば勝負は付く。

 卑怯千万大いに結構。野生で生きる生物に、正々堂々ほど無意味なものはない。


「では、さらばだ」


 しかしそれに気付いたのは、細菌並の自我しかないエリュクスも同じ。

 継実が粒子ビームの準備を始めた時、エリュクスの上から大量の液体金属が降り注ぐ。見れば巨人が腕を一本伸ばし、その手から液体金属を垂れ流しにしていた。滝のように激しく降り注いだ金属に飲まれ、エリュクスは姿を眩ます。

 継実は即座に粒子ビームを撃ち出したが、エリュクスを飲み込んだ大量の液体金属がこれをはね除ける。白銀の壁を打ち破った技も、その何十倍も分厚い壁が相手では流石に通じない。舌打ちする継実の前で、エリュクスを飲み込み終えた液体金属はずるずると引き上げられ、巨人の中に中へと取り込まれる。

 これでエリュクスは巨人の中。つまり奴を丸ごと吹き飛ばすには、巨人の胸に風穴を開けねばならなくなった。

 やはり、真っ向勝負をしなければならないようだ。目論見が早くも挫かれてしまった継実であるが、しかしくよくよしている暇などない。

 巨人は既に、四本腕の一本を大きく振り上げている。


「っ……!」


 継実は咄嗟に両腕を顔面の前で交叉させるように構え、防御の体勢を取る。

 直後に巨人は豪腕を継実目掛けて振り下ろした! 防御する、という継実の判断は誤っていなかった。豪腕のスピードは凄まじく、逃げても恐らく避けきれなかっただろう。

 とはいえ受け止めて正解とも言い難い。

 豪腕から繰り出される破壊力は凄まじく、継実の体勢を大きく崩すほどだったのだから。


「うぐ、ぎ……! こ、の……!」


 どうにか巨人の拳を受け止め、踏ん張る継実。しかし身体は大きく後に傾き、今にも押し倒されそうな状態である。

 大きさにして自分の約八百八十二倍、体積にして六億八千六百万倍 ― 金属で出来ている相手なのだから体重差は恐らくそれ以上の ― の相手にこれだけ奮戦しているのだから、間違いなく継実の力は『出鱈目』や『理不尽』の類だ。だが、倒されてしまってはどんなに出鱈目でも意味がない。自然界で意味を持つのは、生き残る事のみ。

 このままぺちゃんと潰されたなら、いくら奮戦しても無意味だ。


「な、めんな……このくず鉄がァ!」


 継実は構えていた両腕の手を開き、粒子ビームのエネルギーを蓄積。

 ほんの一瞬で交叉させていた腕を後ろへと退かし、自分目掛け進んでくる巨人の腕が接触するよりも早く掌を前へと向けて、粒子ビームを撃ち出す!

 粒子ビームを用いても巨人の拳は焼き切れない。全く通じていない訳ではなく、表面を気化させたり吹き飛ばしたりは出来ているが、大質量でこれを耐え抜く。とはいえ継実は端から拳の破壊など期待していない。

 目論んでいたのは拳を押し出す事。粒子ビームの、亜光速に達した粒子の運動エネルギーは凄まじい。その反動だけで継実の身体を大空へと浮かせるほどに。

 亜光速の『質量』に押された巨人の拳は一気に、数十メートルと後退していく。拳との距離が取れたのを見てから、継実はその場から全力で跳躍。粒子操作能力により自分の身体を『加速』し、普通に跳ぶよりも速く移動する。巨人の拳は猛スピードで継実を叩き潰そうとしたが、実際に潰せたのは進路上にあった岩礁とそれを覆う藻だけ。

 岩礁に命中した巨人の拳は、岩礁地帯が波打つほどの衝撃波を撒き散らした。ミュータント化した藻に包まれた岩場が、大きく揺れたのである。あんなものをまともに喰らったら流石にヤバい……継実は自分が感じたものが正しかったと確信した。

 巨人は一発の鉄拳では諦めず、何度も何度も、四本の腕を使って継実を殴り潰そうとしてくる。その度に継実は跳躍や粒子ビームを用いて回避。相手に隙が出来ないか、好機が訪れるのを待つ。

 しかし巨人の方は流れを変えようとしてくる。

 巨人の胸部から、無数の『ガトリング』が現れたのだ。総数、凡そ数万。

 ガトリングは白銀の弾を秒速数キロもの速さで撃ち出してくる。秒間数発の連射速度だが、繰り出された砲の数と合わされば秒間十数万発の一斉射撃だ。

 継実もこれは回避しきれず、全身に弾を浴びてしまう。弾丸命中によるダメージこそ皆無だが、されどこの弾の用途が目標の射殺でない事はロボット兵士との戦いで経験済み。

 弾丸はどろりと溶けて、継実の身体に纏わり付く。更に手足の関節部分で固体化し、四肢の動きを阻もうとしてきた。そしてこのタイミングを見計らったように、巨人は豪腕を振ってくる。

 動きを鈍らせ、豪腕で叩き潰す。知と力の合わせ技だ。

 それに継実は、二つの合わせ技を上回る純粋なパワーで対抗する。


「はああああッ!」


 気合の掛け声と共に生み出す、莫大な熱量。一万度を超える熱波により、身体に纏わり付く白銀はどろりと溶け出した。新たに命中する弾丸も触れた傍から溶けていき、機能を喪失していく。

 その熱量を維持したまま、継実は最小限の動きだけで迫りくる拳を回避する。されどそれは疲れて動きが鈍ったのではなく、巨人が打ち出す拳をギリギリで躱すため。掠めた鉄拳との摩擦で肌がチリチリと焦げ付く中、継実はにやりと笑みを浮かべた。

 身を翻し、継実は巨人の拳に爪を突き立てて登り始める。拳とはいえ巨人は液性金属の集まりであり、表面はつるつるとしたもの。普通ならば爪など立てられないが、一万度の高熱を纏い、溶解させながら食い込ませれば造作もない。

 拳の上に立った継実は、勢い良く駆け出した! 継実は拳を抜け、腕の上を猛然と疾走。巨人の頭部目掛けて一直線に進む!

 無論いくら人型とはいえ、相手はあくまでも液体金属の塊。頭の中には脳みそは勿論、高性能の電子頭脳も積まれていないだろう。ならば何故頭を目指すのかといえば、継実の目がそこに無数の粒子が集まっているのを観測したから。

 恐らく大出力の荷電粒子ビームを撃とうとしているのだろう。五十メートル級の艦船でたかだか一テラワットの出力しかなかったが、巨人の体積は艦船のざっと二万七千倍。単純計算で二万七千テラワットのビームを撃てる事とかり、流石の継実も冷や汗ものだ。何しろこれは十メガトンの水爆が持つ全エネルギーを、たった一秒で放出するのに匹敵する。ミュータントに核兵器が通じないのは核が何十キロにも渡って『拡散』するからであり、高々数平方メートル以下の範囲に圧縮された状態で同程度のエネルギーをぶつけられたらミュータントでも普通に危険だ。

 しかしそのエネルギーを逆流なりなんなりさせれば、継実を巨人の身体は恐らく内側から吹っ飛ぶ。

 継実が狙っているのはそれだ。粒子ビームを撃ち込んでも倒しきれない相手だが、自爆を誘えば力の差を逆転出来る。問題はどうやって逆流させるかだが、継実の能力は粒子操作だ。触れてしまえばどうとでも出来る自信はある。

 逆に、触れなければ無理だ。継実の能力はミドリと違い、遠隔操作が苦手なのだから。いや、ミドリとてあくまで脳内物質や思考の制御が得意なのであり、遠隔操作でモノをぶん回すのが得意という訳ではない。数万テラワット等という巨大エネルギーの制御は、恐らくミドリでは無理だろう。

 発射間際の砲門に腕を突っ込み暴発させる。

 文面だけで寒気のする作戦。しかしこれしか手がないと思えば、継実に迷いなどなかった。

 頭目掛けて駆けてくる継実を見て、巨人もその意図を察したのか。継実が走る自身の腕目掛け、三本の腕で殴り掛かってくる! 普通の生物からすれば自傷行為も同然だが、身体そのものが不定形である巨人にとってはダメージとなり得ない。躊躇いなどする筈もなく、豪腕は最高速度で振られる。


「おっと! 今の私をさっきまでと同じと思うな!」


 しかし継実はこの拳を前に、先と違って笑みまで返す。

 何故なら今の継実の速さは、地上で拳を必死に避けていた時を上回るから。

 一万度の高熱を纏った事で、継実の身体は高い『運動量』を持っていた。この運動量を粒子操作により、自分の移動速度に加算。今までよりも数段上のスピードを手にしたのである。

 勿論高熱を発する事には欠点もある。継実自身何度も繰り返し自覚していたように、エネルギーの消耗が激しくて持久力に欠ける点だ。今までこの状態を用いなかったのは、相手の実力が未知数のうちに体力をすり減らしたくなかったが故の行動。だが、相手が本気を出したのならば出し惜しみや様子見をする必要はない。全力でぶつかり、叩きのめすのみ!

 殴り付ける腕よりも速く駆ける継実。叩くのでは間に合わないと理解したのか、巨人は闇雲に殴り付けるのを止めた。継実と巨人の頭までの距離は残り八百メートルほど。継実の速さならばもう一秒と掛からずに辿り着ける。

 巨人もまた同じ。高度な文明の演算能力が、一瞬にして継実の動きと到達時間を正確に導き出すだろう。そして殴る形では止められないと判断したに違いない。

 拳に代わり新たに繰り出したのは、継実が走る腕に巨大な『壁』を生やす事だった。


「(行く手を遮るつもりか……!)」


 これ見よがしに作り出された壁は、高さと幅が共に十メートル程度のもの。回避するのはさして難しくない。

 問題は、回避時の動きが予測される点だ。右に避けようが左に避けようが、或いは跳び越えようとも、その動きを巨人は全て計算して予測している筈。どんな動きをしようとも、叩き潰すための準備をしているだろう。

 或いは……

 巨人が何をするつもりか、完全に予測するのは困難だ。相手だって同じだろう。ならば自分の一番得意な方法で挑むしかない。

 即ち真っ正面からの大勝負。


「邪魔ァ!」


 継実は壁を、殴り抜ける!

 白銀の壁は継実に殴られた瞬間にどろりと溶けて、弾け飛ぶ。一万度の高温を纏う継実の身体を止めるには、強度も耐熱性も足りなかったのだ。動きを制限する筈のそれを、継実は夢か幻のように通り過ぎる。

 壁では継実を止められないと判断したのか。次の攻撃を仕掛けてきたのは、巨人の背中から生える触手達。太さ数メートル長さ数千メートルはあろうかというそれらは、先端を恒星のように眩く光らせていた。

 継実の目には光の正体などお見通し。荷電粒子ビームのチャージだ。それも艦船が撃ったものより、何十倍も高出力の代物。まだまだ継実の粒子ビームには及ばないが、『匹敵』するとは称して良いだろう。これが何百本も同時に襲い掛かってくるとなれば、中々に厄介だ。

 しかし、それは継実にとって脅威である事を意味しない。

 触手達はわざとタイミングをずらしたのか、バラバラに荷電粒子ビームを撃つ。都市一つ容易く焼き尽くすであろう光は亜光速で飛び、継実に命中した


「ふんっ!」


 が、継実はこれを殴り飛ばす!

 無論ただ拳の力を叩き込んだのではない。粒子操作能力を用い、荷電粒子ビームの方向を変化させたのだ。継実を貫く筈だったビームは、きっちり百八十度反転。

 撃ち手である触手に返され、大爆発を起こす! 自分が放ったビームを発射口に受けた触手は、内側から大きく裂け、黒煙と共に中身を露出させた。すぐに溶けるようにして傷は塞がり、攻撃を続けるが、能力を発動した継実に触れる事など叶わない。何処に当たろうとも、荷電粒子ビームは跳ね返されて射手を粉砕する。

 ビームでは効率が悪いと考えたのか。何本かの触手は光を放たず、継実へと接近してきた。恐らく殴るつもりか。例え高熱で溶かされるとしても、勢い良くぶつかれば質量相応の物理的ダメージは与えられる。運動エネルギーは質量と速度で決まり、硬さはあまり関係ないのだから。


「捕まえたァッ!」


 しかし継実はこれを避けず、それどころか触手の一本を掴み取る。自分の身長よりも太い触手だが、継実の握力からは逃れられない。のたうつように暴れる触手は、継実の手が放つ高熱によって途中から千切れた。

 千切れた触手はまだ継実を襲おうと伸び縮みしていたが、継実はこれを思いっきり蹴飛ばす。千切れた触手は溶けながら飛び、岩礁地帯と隣接する森へと落ちる。これで機能停止はしないだろうが、戻ってくるには時間が掛かるだろう。

 拳は当たらず、壁は障害にならず、触手は相手にならず。最早邪魔するものはなしと、継実はひたすら直進し続ける。腕からは無数の壁が生えてきたが、どれも気に留める必要すらない。触手のビームだって避ける必要すらない。巨大な拳が振り下ろされれば壁など気にせず回避し、不要ならばそのまま走り抜ける。顔からビームを受けようが、肩が壁に触れようが、そんなものは関係ない。

 巨人の頭まであと五百メートル、四百メートル、三百メートル……頭部に集まるエネルギーは急激に高まっていくが、予測されるフルパワーには程遠い。継実が辿り着く方が圧倒的に先だ。

 何が来ようと止められない――――


「このまま一気に詰ごふっ!?」


 その筈だった継実の身体が、止まった。

 走る継実を立ち止まらせたのは、一枚の壁。

 見た目は今まで熱で溶かしていた壁と、なんら変わりない。けれども高熱の継実が触れてみても、その壁は溶けるどころか柔らかくなる事すらないのだ。

 何かがおかしいと、継実は壁を形成している粒子に意識を向ける。

 答えはすぐに明らかとなった。壁を形成している粒子の電熱性が、異様に高いのだ。外から伝わった熱が即座に伝播し、全体に広がっていく。少しでも熱を遮断しようという設計思想は見えず、むしろ積極的に拡散させるような作り……

 それこそが、エリュクスが考えた『高熱対策』だった。

 恐らく物質の性質上、エリュクスが繰り出してきた液体金属はどうやっても一万度の高温には耐えられないのだろう。故に耐えるのではなく、事にした。一万度という高熱も、所詮は継実という小さな身体が放つ温度でしかない。大きな体積を温めるには、その分多くのエネルギーを投じる必要がある。つまり何百億トンもの質量で与えられた薄めてしまえば、どんな高熱を受けても一度と上がらずに済むのだ。更にたくさん伸ばした腕や触手で表面積を広げれば、気温よりも高くなった分はすぐに放熱出来る。

 背中に触手を生やした四腕の巨人という不気味な姿は、こちらへの威圧のためだけではない。最初から高熱を受け流すため、計算して作った姿だったのだ。今の今までは性能が未熟で上手く拡散出来なかったのか、或いはある程度引き寄せるためにわざと攻撃を受けていたのか……いずれにせよまんまと罠に嵌まったのは違いない。


「(ヤバい! ここは一時退却……ッ!?)」


 一旦逃げようとする継実だったが、動こうとした足の自由が利かない。

 見れば、継実が走っていた腕から盛り上がった、液体金属が足に纏わり付いていた。相手の罠に気を取られた隙にやられたらしい。脚部も一万度に達しているのだが、高い熱伝導により接触面が溶解する事はない。液体金属は純粋な硬さと粘り気を維持し、継実とのパワー差を質量で補う。

 それでも僅かに継実の力の方が上。だから渾身の力を絞り出せば、この金属を引き千切る事は簡単なのだが……エリュクスがみすみすそれを許してくれる筈もなく。

 巨人の三本の腕と、背中から生える何十という数の触手が、一斉に継実の方を向いた。


「(あ。これは、逃げられない)」


 自分の状況を淡々と認識する継実。

 されど機械のように正確な状況認識能力が、自分の身に襲い掛かる危機を避けるための方法を知らせてくれる事もなく。

 巨人の腕と拳は、一片の慈悲もなく振るわれた。

 継実はすぐに反撃へと出る。細長い触手が迫れば殴り付けて吹き飛ばす。白銀の弾丸が纏わり付けば身体を震わせて振り払う。豪腕が襲い掛かれば粒子ビームで押し返す。細腕から荷電粒子ビームが放たれたなら、それを操作して別の触手にぶち当てる。今まで何度も見せてきた技を惜しげもなく使った。巨人の身体は継実の一撃一撃で削れ、周辺のみならずかなり遠くまで飛び散っていく。

 局所的に見れば継実の方が優勢である。けれども巨人の物量は圧倒的。少しずつ、少しずつ、継実は押されていった。そしてそれは継実達の動体視力だからこそそう見えるだけで、現実の時間ではほんの一瞬の出来事に過ぎない。

 継実が秒間数万発の攻撃を捌ききれたのは、僅か数百ミリの間だけ。

 継実の姿が巨人の拳と触手が溶けて固まったものに飲まれるまで、ほんの一秒の時間も掛からなかった。

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