少女たち (4)
本来擬人たちに高度な判断力はないと言われている。人間を見れば、無差別に排除する。そこに何らかの判断が介在することはないと言われていた。
不審な行動を見せたオーガに、二人は顔を見合わせる。
「なんだぁ、ありゃ」
「わかんないね」
「施設とかを守ってるやつか? 前にもそういうのいたよな」
「だったら、あいつだけ逃げるのは変だと思うけど。とりあえず
「そりゃ確かにそうだ」
シノが水を向けると、ソニアは頷いて地面に拳をつく。ジワリと白い燐光が染みだして一気に周囲へと広がる。
彼女が使っているのは、
シノと同様に、彼女もまたシステムに接続し、そこにある情報を手繰り寄せようとしていることに変わりはない。
ただし、彼女の操っている技術はシノとは少し異なっている。シノの使っていた経路切断がシステムを流れる情報に干渉しようとする技術だとすれば、彼女の操る機器操作はシステムへ接続する対象そのものに干渉しようとする技術だ。
システムが正しく稼働していた頃、システムは多くの人間たちが接続していた。そして当然接続していたのは人間だけではない。街や家を維持するために使用される様々な機械、社会機構を維持するための端末、そして、
彼女が操る
拳を押し当てたソニアが左前方に頭を向ける。今、彼女の視界には、現実と重なるようにして、いくつもの光の柱が天へと立ち上っていくように見えている。一つ一つの柱には、木のうろのような穴がいくつも空いているのが分かる。
よく見れば先ほどソニアが操った壁面の機関銃には、光の柱の一つに彼女の腕から放たれたものと同じ色の燐光が突き刺さっている。
「あっちの方にまだ仲間がいるみたいだ。数は……うわ、結構いやがるな」
「仲間のところに戻ったってこと?」
「うーん、分かんねーけど」
二人が思案していると、彼女たちが乗っていた車の方から声がかかる。
「お嬢ちゃんたち、さすがだな!」
戦闘が終わったとみて、乗客の一人、先ほどソニアに話しかけていた中年の男が車を降りてきていた。
「やっぱりすごいんだな、異能使いってのは」
「それなんだけどさ、この近くにまだたくさん奴らが来てるっぽいんだよね」
「そ、そうなのか!?」
「ってわけで、アタシらはそっちもさっさと片づけてくるからさ、もう少しだけ待っててよ」
「お、おう。あいつらにも伝えてくるぜ」
ソニアの言葉にシノも小さく頷く。それを見た男性はすぐに踵を返して、車の方に向かう。それを見た二人は幹線道路の壁に空いた穴を潜り抜けて、草原へと降り立った。
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