14.手紙

敬愛する我が息子よ。

最大限の敬意を払い私はこの手でこの手紙を書いた。


この数年間、ろくに居場所も伝えず連絡もないとは、さぞかし良き人生を送っているのだろう。

ようやくお前の消息をつかんだと思えば、なんとIRGの二等環境調整官をやっているというではないか。

わが一族の栄光をかなぐり捨ててまで、何故狩人に身を落としたいのか私には理解の及ばぬところだ。


だが、お前の妹が非常に優秀なおかげで特段こちらは困っておらぬ。

コロニアルの決して長くはない寿命を使い、存分に己の職務を全うするがいい。


だが、我々もまた同様にコロニアルであり、潤沢な時間が残されているとは言えない。

特に妻の体調が思わしくない事は伝えねばならない。

お前の母親が病弱だった事は長年見てきたであろうから、よく知っているだろう。

もし、伝えたい事があるならば速やかにこちらに姿を現すことだ。


無い、というのであればそれでも良い。

お前がどう生きようと、湖は動かず、鉱山は石を吐き出し続ける。

ラーフェンラックの領土が尽きるわけではないのだ。



いくら無頼のまねごとをしても、いくら武官の服に身を包もうとも、お前はこの地を忘れることはできない。


忘れるな。



次に会う時、私も妻も地下墓地に安置された抜け殻かもしれぬ。

だが、顔を合わさずとも、どうしても一つ聞いておかねばならない事がある。



お前はラーフェンラック鉱山の最奥地まで足を踏み入れたことがあるか?

中に在ったものを見たか?

どのような形でもよいから答えよ。わざわざ封書を使わなくてもいい。

余計な答えも要らぬ。


それだけが私がお前に期待することだ。




「ケイド二等調整官」の父。

ラーフェンラック領主

ベリリウス

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