第37話 絶頂的快楽
モミモミモミモミ…。
僕は、ビキニ姿のフロレンティナの背に跨ってマッサージをしながら、どうしたものかと思案していた。
早いところこのマッサージを終えなければ、バイト先に遅刻してしまう。
ペイジ曰く、遅刻したらヤバイらしい。僕はこの世界のヤバさをいやというほど思い知っているので、急いでバイトには行かなければならない。
どうしよう…。
………。
ぐっ……ここは…アレをやるしかないのか…!?
今までは…フロレンティナのいうマッサージが何を指しているのか分からなかったから、遠慮していたが…。
もう時間がないならば…ヤるしかないだろう!
「んんん…!」
瞬間、フロレンティナが喘ぐような声を漏らした!
僕は、さらに集中してコトを進めた!
「あっ…あぁ…!」
それに呼応するように、フロレンティナも細かく身じろぎをしながら、喘ぎ声を大きくした!
さらに僕は力を指先へと込めてゆく!
「んっ…あっ……」
フロレンティナは、今にも絶頂へと達するような喘ぎ声を留めることができない!
そう…これは……。
説明しよう!
人体のツボを的確に把握し、適切な力で指圧マッサージを行うことにより、人を絶頂へと導く技である!
これは!高校時代のことだった!
ある日、いそいそとレンタルビデオショップの奥のピンク色のカーテンで仕切られた禁断の空間へと忍び込んだとき、僕は発見してしまったのだ!
マッサージモノのビデオを!
僕は、それを発見してからというものの、幾度もそのシチュエーションへの夢を見た!
僕は、女性をマッサージしたくて仕方がなくなったのだ!
だから、僕は考えた!
どうしたら女性をマッサージできる機会を得られるのかと!
そして、僕はその願いを叶えるべく、近所の指圧療法士さんのもとへと三顧の礼よろしく頼み込んで弟子入りし、ついに師匠の経営する指圧マッサージ店でのアルバイトを認められるほどにまで成長したのだ!
これは確か1年前のことだったから、僕は、指圧マッサージをかれこれ1年間、数百人を相手にやってきたことになる。
僕は部活動をしていなかったが、その実、マッサージ修行に出ていたのだ。
僕の高校時代の青春は、美女をマッサージするという夢のために捧げられていたのだ!
実際、美女がいつきてもいいように、常に指圧マッサージの修行を怠らなかった!
大体、テストの点が悪いときは、マッサージの研究をし過ぎて、試験勉強をしなかったときだった!
実際に美女がくることはなかったのだが(おそらく師匠が担当していたのだろう)、僕は、近所のオバチャンたちから指名を受けるほどの指圧マッサージの腕を誇っていたのだ!
僕の!エロスへの情熱は並ではない!僕はどんなシチュエーションであろうが応用可能なエロテクニックを習得してきているのだ!
「んっ…ぅん…」
フロレンティナはさらに増す快楽に完全に身を任せている様子だ。
それもそうだろう!僕の!1年間の!青春が!この指に宿っているのだから!
この技【
そう!能ある鷹は爪を隠すと言うが、まさに僕のこと!
僕は!こういう状況にだって!対応できるほどの能力がある!
僕は、さらに集中し、背中にあるツボというツボを押した。適切な場所に、適切な力で、適切なテンポで押してゆく。
そして、人はその快楽に身を任せるにつれ……。
モミモミモミモミ…。
「スゥ…スゥ……」
気が付けば、顔は見えないものの、フロレンティナの安らかな寝息が聞こえてきた。
そう!いつの間にか眠りに落ちてしまうのだ!
人を眠りに落としてしまうほどの快楽!まさに絶頂的快楽と呼ぶにふさわしいだろう!
そして、僕は心の中で叫んだ。
どうだ!これが!勇者、夜立郁人だ!僕のエロスへ懸けた青春は!僕の血肉へとなっている!
モミモミモミモミ…。
僕は、最後の仕上げに、刺激の強すぎないツボを押したあと、ゆっくりとベッドから離れ、そっと部屋を後にした……。
フロレンティナの家から出ると、門のすぐ傍でペイジが腕時計をしきりに気にしながら待っていた。
「おぉ郁人!よく抜けて来られたな!?」
「あぁ。僕は勇者だからな。あんなものにたじろぐ僕ではない」
「ステータス」
僕はステータスを確認してみた…。
—————————————
夜立郁人 Lv3
HP: 32/37 SP: 9/11
職業: お尻よりおっぱい派
スキル:
【
【
—————————————
やはり…HPもSPも回復している…。
僕はフロレンティナのマッサージをしたことで、昨日と同様に、回復さえしていたようだ。
ふっ…僕にとっては、通常の勇者にとっての窮地は休憩みたいなものなのさ……。
「おぉさすが俺の見込んだ男だ…」
ペイジはそんな僕を見て感嘆の声をあげた。
僕はこの世界で初めて勇者として認められている気がして鼻が高かった。
「質問なんだが、僕はあとどれほど彼女の奴隷のままなんだ?僕は彼女に3度ほど命を救われているんだが」
僕は、彼女に感じた恩を返しきるまでは彼女の首輪を嵌められたままなのだ。
「うーん、そうだな…。正直、いつも解放される前に死んじゃうから、はっきりといつ解放されるのかまでは分からないな…」
そうか…そうだよな…僕だってあと何日生きられたものか分からないしな…。
「だが、郁人。仮に生き延びたとしても、お前は多分この先ずっと解放されることはないと思うぞ?」
この先ずっと…だと!?
「なぜだ!?僕は彼女の言うことを何度も聞いているじゃないか!?」
「それがな、郁人はフロレンティナ様の辱めを悦んで受けてしまっているから、それはむしろ恩を感じていることになっているんじゃないか?」
な…なんだとぅ!?
でも…確かにそうだな、嫌なことでもなんでもないからな…。
「それはそうと急いでバイトに行くぞ。俺は店まで案内してやる」
「おぉそうだった。何から何までありがとうペイジ」
「いいってことよ」
「そういえば、僕のバイト先はどういう店なんだ?時給がいいって言っていたが、ヤバイ仕事じゃないだろうな?」
「その辺は抜かりないぜ。安心しな。お前が今日から働くのは、カフェだ」
カ…カフェ…?
僕は、その優しい響きに拍子抜けした思いだった。
カフェで働くだけでいいのか…?
何かヤバイ仕事をさせられるのかと思っていたから、思ったよりも普通の仕事だな……。
僕は思いのほか普通の仕事を得たことに、何かがしっくりこない思いだった。
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