第30話 興奮過多
僕は戦場と化しそうな寝室から逃げ出してシャワーを浴びていると、タオル1枚を体に巻いたアストレアが入ってきた。
「勇者様?お背中を流してあげますわ」
「ア…アストレアか!?」
せ…背中を流す…だと!?
だが、僕は、その言葉の衝撃よりも、彼女の危なすぎる姿に衝撃を受けていた。
待て待て待て待て!
タオルしか巻いてないじゃないか…!
見れば彼女の豊かな胸が溢れんばかりにタオルからはみ出している!
下半身も、太ももの際どいところまでしか隠されていない!太ももの8割は露出していると言っていい!
そして、アップに結わいた彼女の紫色の髪から覗くうなじの辺りが言いようもない色気を放っている!
僕は、召喚されてから、いや人生が始まってから、こんなに女性の際どい姿を見たことがなかった。
僕は、顔を真っ赤にして、すぐに彼女に背を向けた。
き…危険すぎる……。
これ以上直視したら…確実に僕の中のナニカが暴発しそうだ…!
それに、僕のナニは当然のように、既に直立不動の姿勢を取っている。
もし正面を向いてタオル一枚の彼女と向き合ったら、性的刺激と恥ずかしさのダブルパンチで確実に昇天することになるだろう。
僕は、お湯を出し続けているシャワーのヘッドを凝視してすかさず言った。
「ちょっ…!だいじょうぶ!だいじょうぶだから!もう背中洗ったから!とにかくだいじょうぶだ!」
僕は、際どい恰好をしたアストレアに浴室から出て欲しい一心だった。
……だが。
僕の意識はモノクロ世界へともっていかれた!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
はっ…!
気付けば僕の意識はモノクロ世界へと移っていた。
…おいおいおい!?
まだ起きてから10分程度で、もう3度目のスキル【
…今日はどうなってしまうんだ!ペースが速すぎる!
「わたくしを…断った…?」
僕が動転していると、後ろから抑揚のない声が聞こえてきた!
こ…これはアストレア…!
僕は彼女に背を向けつつも、彼女の冷たい殺気を背中に感じていた。
しまった!彼女を拒否するとヤる気になってしまうんだった!
タオル一枚の彼女を見た衝撃で、僕の注意が甘くなっていた!
……!!!!!
突如、僕の首から2本の剣が現れた!
先ほどティアラと戦ったときにも見た、あの双剣だ!
「………!」
見れば、双剣が僕の喉を貫いている!
僕は、喉が貫かれてひとことも発することができなかった!
「
僕は、2本の剣で喉を貫かれ、力尽きて倒れることも許されず、立ったまま喉の痛みと出血を感じていた……。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
はっ…!
気付けば、僕の意識は元の世界へと戻ってきた。
僕は、喉に激しい痛みを感じながら、シャワーを浴びていた。
な…なんなんだ…!
この世界は…確実に…ハーレムと何かを取り違えている!
美少女が浴室に入ってきて背中を流すと。そこまではいい!
だが、なぜ断ったらヤられなくてはならないのだ!?
僕は勇者だぞ!?蟻かなんかと勘違いしていないか!?
もう3度目だ!こんな短時間で3回も死んだら、僕の精神が崩壊しそうだ!
ティアラもティアラで僕を燃やそうとし過ぎだし、アストレアもアストレアで僕を刺そうとし過ぎだ!
僕が、天を仰ぎ見て無情な世界を嘆いていると、再び、アストレアの声が聞こえた。
「勇者様?お背中を流してあげますわ」
くそっ…出ていってくれと言ったらヤられるなら、そのまま背中を流してもらうしかないじゃないか!
僕は、もう投げやりになっていた。僕の直立不動の恥ずかしい部分まで洗ってもらう覚悟はできていた。
僕は、近付いてくるアストレアにされるがままにされよう…と思ったとき!
「ゲホッ…ゲホ…アストレア!どこに行ったの!?急に煙幕を張るなんて…!」
寝室の方からティアラの叫び声がした。
「うふ、うまく巻いたようね」
アストレアは得意そうに独り言ちている。
…おいおいおいおい!?
魔法で煙幕を張って、その隙に来たのか!?
ということは…遅かれ早かれ…僕がアストレアに背中を流してもらう現場を押さえられてしまう!
寝室にアストレアがいないことが分かれば、すぐに僕のいる浴室を取り調べるだろう。
つまり…ここでアストレアを受け入れれば、僕はティアラに燃やされてしまう!
僕は、スキル【臆病者の白昼夢】を発動しなくとも、自分がヤられる未来が見えるようになってきたようだ。
「さぁ勇者様。私もイイことをして差し上げますわ」
そうこうしているうちに、アストレアは確実に僕の近くに寄ってきている!
アストレアの言うイイことは、ティアラとは違って、ちゃんとした意味でのイイことだが、なぜかいつも僕がヤられる未来とセットなんだ!
どうすれば…どうすればいいんだ!?
アストレアを断れば喉を貫かれ、そのまま受け入れればティアラに燃やされる!
なんで…この2人はどうしても僕をヤろうとするんだ!
こんなのハーレムな訳がない!僕をどっちがヤるか争っているだけだ!
僕は、毎度毎度ルーチンワークのように、ティアラかアストレアのどちらかにヤられる状況に置かれる自分を嘆いた。
どうすれば…どうすればこの状況を切り抜けられる!?
僕は、迫りくる淫らなアストレアを背後に感じながら、似たような興奮を最近、味わったことを思い出していた。
確か…あれは……。
サーシャ先生に抱きしめられたとき!
そうだ!肩だしドレスを着たサーシャ先生に抱きしめられたとき、僕の顔が彼女の半分露わになったおっぱいに押し付けられ、あまりの刺激に気絶してしまったのだ!
………。
……そうか!
僕は、そのときの経験から、この場を切り抜けるある方法を思いついた。
だが…これには…リスクもある……。
だが!だが!もう時間がない!
背後にはアストレア、寝室ではそろそろ浴室に入りそうな勢いのティアラの音が聞こえる。
イケ!ここは、もうイクしかない!
「おぉおおおおお!」
僕は、覚悟を決めて背後を振り返り、アストレアと正対した……。
「ぶっ……!」
アストレアは、やはり真っ白なバスタオル1枚だけを体に巻いていた!
1歩ほどしか離れていないため、彼女の姿がよく見える!
豊かな胸にムッチリとした太ももにタオルがぴったりと巻き付けられて、体の曲線がモロに出ている!
その露出の多さもさることながら、その白き曲線美も卑猥だ!
「うっ…うう……」
僕は、彼女の淫らすぎる姿を直視し、そして、気持ちが昂ったあまり、気を失い、前に倒れた…。
§§§
………。
ここは…天国だろうか……。
うっすらと目を開けると、白い天井が視界を覆っていた。
生きて…いるのか?
僕は、頭がクラクラして、ここが夢か現か、それとも天国なのか、よく分からなかった。
「う…ん……」
僕は、うめき声をあげながら、身じろぎをした。
ん……?
なんだ…?両の手が動かない……?
誰かに手を握られている気がする…?
僕は、ようやくはっきりと目を開き体を起こした……。
………!!!!!
見れば、ティアラとアストレアが僕を心配そうに覗き込んでいる!
「よかった…」
僕が起きると、2人同時に安堵の息を吐いた。
2人とも、僕が気絶したのを心配してくれていたようだ。僕の手まで握ってくれて…。
ん…?
ここで、微かな違和感があった。
両手…?
ベッドを挟んで右側にティアラ、左側にアストレアが座っている。
ということは…?
僕は、首を傾げると、ティアラはバッと乱暴に手を放して言った。
「こ、これは!アレよアレ!そう!魔力をアナタに移してたのよ!また魔力を使い切って気絶しちゃったのかと思って!」
そ…そうだったのか……。
そうだよな、アストレアはまだしも、ティアラが意味もなく僕の手を取る訳がないからな…。
「そうだったのか。ありがとう、ティアラ」
「い、いいって!それより何でまた倒れたのよ!?」
ティアラが誤魔化すように聞いた。
「あ、あぁ…のぼせたみたいだ。シャワーが熱すぎて」
我ながら厳しすぎる言い訳だ。まさかアストレアに興奮し過ぎたからとは言えまい。
だが、ティアラはティアラでなぜか気が動転しているためか、深くは追求してこなかった。
…そう…僕は…あの時、絶対絶命の窮地にいた。
ティアラとアストレア、どっちにヤられるかの2択を迫られていたのだ。
だが、僕は咄嗟に思い出したのだ。
僕は、興奮し過ぎると気絶するらしいということを。
転生前は、僕はこの性質には気付いてはいなかった。
というのも、こんなに美少女たちに囲まれることもなく、現実で興奮することはなかったからだ。
だが、転生後、サーシャ先生に抱きしめられたとき、僕は興奮の限度ってヤツを知った。
この興奮の限度を超えると、僕は気絶してしまうのだ。
この性質に気付いた僕は、とっさに淫らな姿のアストレアと向き合い、その刺激によって自らを意図的に気絶させたのだ。
これにより、アストレアを追い出すことも受け入れることもなく、あの場を切り抜けることができたのだ。
そう!これは!名付けて!
「
説明しよう!
性的興奮のあまり意図的に気絶することである!
僕は、この窮地を切り抜けた喜びの雄たけびを、心の中であげた。
これが!夜立郁人だ!勇者だ!
僕は!戦いの中で!成長している!
生死の境を何度も行き来し!しぶとく生き延び!レベルアップしている!
窮地を超えて!新たなる技を!開発しているのだ!
僕は…僕は…勇者だぁああああああああああああああ!!!!!
動揺しているティアラと、何を考えているのか分からない僕に見かねたのか、アストレアが口を開いた。
「うふふ、それより、起きられたなら行きましょう?学校に。もうお昼時よ」
僕は…そんなに気絶していたのか…。それだけ、アストレアのボディが魅力的だったということか…。
僕は、今は紫色のドレスを着ているアストレアを見やった。
おっと…いかんいかん、妄想したらまた気絶してしまう。
僕は気を取り直してベッドから立ちあがった。
………!?
僕は、ここで、自らの思考に漏れがあったことに気が付いた。
………。
……僕は、服を着ていた。
昨日と同じ、青の装束。
待てよ…。
僕は、重大過ぎるミスを犯した気がして、心臓の鼓動が早くなった。
僕は、裸で倒れたよな…?
それも、直立不動のナニとともに…。
僕がベッドで寝ていたということは…2人がここまで運んでくれたということ……。
まさか…見られた?
僕は、聞かずにはいられなかった。
「な、なぁ2人とも。もしかして見たのか?」
「あら、何を?」
2人とも僕を振り返るが、ピンときていない様子だ。
「だから何って…ナニだよ」
「ナニって何よ?」
「いやだからナニだって…」
「ナニって?」
「だからナニのことだって…」
「???」
ここまで僕がほのめかしてもまだ分からない様子だ。
「ホラ、よく分からないけれど、早く行くわよ?ただでさえ遅刻なんだから」
僕は、これ以上の追求は諦めた。
これから、さらに気を引き締めなければならないのだから。気持ちを切り替えなければいけない。
1日は始まったばかり。
まだ学校に登校すらしていないのだから……。
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