第18話 卒業のとき

 僕は、マリー先生に卒業させてもらう覚悟を決めた。こんなに妖艶な女性が初めてだなんて、刺激が強すぎるが、また夢のようでもある。


「マリー先生。僕も、ちょうど体の調子が悪いと思っていたんです。

 ティアラ、アストレア。ありがとう。僕は、とりあえず大丈夫だから」

 僕は、そう言った……と思った瞬間、僕の意識は、モノクロ世界へと


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 ……はっ!

 気が付けば僕は、モノクロ世界の保健室のベッドの横に立っていた。


 これは!スキル【臆病者の白昼夢リスク・プリディクション】が発動したのか!


 ということは、ここは少し先の未来!そして、命が危険にさらされている!?


 僕は、幾度もこの世界で死んできた経験から、また誰かに襲われるのではないかと素早く辺りを見渡した。


 !?


 すると、目の前のベッドに、が寝ているではないか!?


 な…なんだ!?なぜ僕がいる!?


 よく見れば立っている方の自分自身は、半透明だ。


 どうやら僕はした第3者視点で自分を見ているようだ………。


 もしかして、僕自身が眠ってしまって意識がないからか……?


「あら、かわいい寝顔ねぇ」

 振り返ると、マリー先生が、眠っている方の僕の顔を見て恍惚の表情を浮かべていた。


「さっきは…あの子たちにイイところを邪魔されちゃったからね……もう私、我慢の限界なのよ……」


 先生は、ハァハァと激しい息遣いをしながら、さらに寝ている方の僕に近付いた!


 そして……。


 そして…マリー先生は、僕の下半身に


 !?!?!?!?


 なっ………!


 また……って警戒していたけど、ついに、のか!?


 これが…僕の卒業の瞬間……!?


 僕は、眠っている間にマリー先生に、初めてをもっていかれることになるのか……!?


「……ハァ…ハァ……たまらないわ…こんなに可愛い男の子が目の間で眠っていたら……」


なっちゃう……!」


 マリー先生は、眠っている僕に興奮して、両手を自身の頬に当てて、うっとりとしている!


 両の足が大きく開かれているために、ミニのパンツスカートが大きく擦り上げられて、先生の肉感のある魅惑的な太ももの付け根まで露わになっている!


 ぉおおおおおエロいぃいいいいい!


 やはり!この先生は!18禁を超えている!もはやエロすぎて僕には刺激が強すぎる!とても見てはいられない!


 だが!これは!筆おろし!男の最初はこんなモノでいいだろう!


 僕も、ただ隣で立ってみているだけだが、先生同様、エクスタシーに上り詰めようとしていた!



 そして、先生は、僕の下半身に跨ったまま、僕の顔に手を伸ばした……!


 うぉっ…始まる…ついに始まるのか……!

 羨ましいぞ眠っている僕!


 僕は、今にも自分がヤられそうになっている場面に立ち会って、イケないものを覗き見しているような、眠っている僕の目線に立って快感を共有しようとしているような、そんな不可思議な感情に襲われていた。


 ……すると。


「ハァ…若い子特有のキレイな首筋……。変声期を終えて出っ張った喉ぼとけ……。鎖骨から伸びる弾力のある斜角筋……。そして顎下に控えめに佇む胸骨甲状筋……」


「ダメ…もうダメよ……おかしくなっちゃう……!」


 マリー先生は、僕の首を両手で愛撫するようにさすっていた。


 んん?やけに首回りばかり触るな……。

 これは…首フェチ…ってやつなのか……?


 僕は、先生とは性的志向に相違が出てきて、やや冷静さを取り戻し始めた。


「ハァ…ダメ……もうそう……!」


 なっ…!


 次の瞬間、マリー先生は両手で


「がっ…あっ……」


 眠っている僕は、徐々に苦しくなっていく呼吸から、苦悶の表情を浮かべ始めた!


「アァ!まだダメ…まだダメよ……まだダメ……!」


 先生は、その言葉とは裏腹に、さらに自身の両の手に力を込めた!


 なっ…!


 なぜ先生は僕の首を絞めるんだ……!?


 それに……なぜ…僕は起きないんだ!?さすがにこんなに強く首を絞められたら、異変に気付くだろう!


「うふふふ、さっきこの子が起きちゃってから、部屋に薄く睡眠霧スリーピー・ミストを充満させておいたからね……よく効いているわ……まったく起きないもの……」


 !?!?

 そんなことってあるのか!?

 保健室の先生に眠らされてなんてことが!?


「私は回復魔導士ヒーラー……男一人眠らせるなんて簡単よ……」


「うっ……うぅ………」


 眠っている僕は、まるで悪夢にうなされているようにうめき声をあげるが、先生の手に邪魔されて、うまく息を吸うことができていない!


 そんな苦しそうに悶える僕を見て、さらに先生はようだ!


 これは…この先生の姿は……。


 まるで……だ。


 何かの本で読んだことがある!サキュバスは!眠っている男を襲い、性行為を通じて生気を吸い取ってしまうのだと!


「あぁ…たまんない…この感じ!眠った男の首を絞めるこの感じが…私を絶頂へと導くの!」

 マリー先生は、さらに手に力を込めた……!

 

 眠っている僕は…苦しそうな表情を続けていたが、やがて、力尽きたようにガクリと体から力が抜けた……。

 そして、マリー先生は、僕が力尽きるのと同時に、恍惚の表情で天井を見上げて全身をガクガクと震わせた……。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 ……はっ!

 僕の意識は、ようやく元の世界へとようだ。


「………ガハッ!ガハッ!ガハッ!」


 僕は、長い間息を止めて潜っていた水中から出てきたあとのように、新鮮な空気を求めて激しく呼吸をした。


 首には寝違えたときのようなズキズキとする痛みが残っている。


 保健室の先生が僕をなんて思ってもみなかった!

 あるとしても、僕の貞操が奪われるだけだと思っていた!


 だが、それは違っていた!


 ティアラとアストレアを僕から引き離したかったのは、僕の首を絞めるためだったのか!


 ………まさか!


 僕は、保健室で目を覚ましたときの、息苦しい感じを思い出した。


 ……僕は、気絶から目を覚ます直前、息ができずに苦しかった!下半身には誰かが跨っているような重みを感じていた!

 僕は、てっきり悪夢を見ていたと思っていたがそれは違った!


 あれは!マリー先生が、眠っている僕の首を絞めていたのだ!


 そして…僕が幸運にも目を覚ますと、先生は次の準備へと取り掛かった!

 再び僕を眠らせ、僕を準備を!


 先生は回復特化型の魔導士だ!

 睡眠効果を持つ気体を作りだすことも造作なくできるのだろう!


 そして、僕は長時間その空気を吸ってしまったために、ぐっすりと眠ってしまったのだ!


 ……だからか!


 あのとき見たステータスは確かこうだったはずだ!

 

 —————————————

 夜立郁人 Lv3 【眠気】

 HP: 29/37 SP: 11/11

 職業: お尻よりおっぱい派

 スキル:

臆病者の白昼夢リスク・プリディクション】命が危険に晒されたとき、少しだけ未来を見ることができる。

卑猥な覗き見ムッツリ・スケベ

 —————————————


 ……そう!HPが減っていた!

 これは、先生が眠っている僕の首を絞めていたときに受けたダメージ!

 だから、起床直後で体力満タンなはずなのに体力が減っていたのだ!


 そして極めつけは【眠気】の記載だ!

 あのとき、既に僕は先生から攻撃を受けていたのだ!

 睡眠剤の混ざった空気を吸わされていたために、眠気を感じさせられていたのだ!


 この世界……マジで油断ならないな……。

 少しでも気を許してハーレムだと浮ついたら、即死だ……!


 僕にグイグイとそのエロ過ぎるボディを押し付けてきたのも、僕の首をもっと近くでためだったのだろう。


 僕は、スキル【卑猥な覗き見】を使い、再びマリー先生のステータスを覗き見た……!


 —————————————

 マリー先生

【好きなヤりかた】絞殺

【発情スイッチ】熟睡

 —————————————


 やはり…マリー先生の好きなヤりかたは絞殺……。それに、発情スイッチは、熟睡……。

 

 つまり、さきほどのマリー先生の発言内容から考えても、僕は、先生の前で眠ったら、絞殺されてしまうということだ!


 僕は、マリー先生との出会いから感じていた違和感の正体を、ついに明らかにした。


「2人はもう行ってもいいわよ。勇者様も元気になったことだし。ね?」

 マリー先生が僕の座るベッドの隣で、ティアラとアストレアを教室に返そうと同じ発言を繰り返した。


 僕は!ここにいてはならない!これ以上ここにいたら眠らされてヤられてしまう!


 つまり…僕がここでいうべきは……!


「……すいません、マリー先生。2人もせっかく来てくれたことだし、僕も教室に戻ることにします」

 僕がそう言ってベッドから立ちあがると、マリー先生はあからさまにガッカリした顔をした。


「2人とも、本当にありがとう。さぁ、教室に戻ろうか」

 聞けば、ティアラとアストレアは、僕が気絶していた間、ずっと看病してくれていたという。

 そして、それは…意図せずしてマリー先生が僕をのを防ぎ、僕の命を守ってくれていたのだ……。

 今だって、2人が迎えに来てくれなければ、睡眠霧を吸って眠りに落ちてしまっていたことだろう。


 僕は、幾度も僕の命を奪おうとしてきた2人に命を救われたことに、心から感謝していた。


 僕は、ティアラとアストレアと一緒に、保健室を後にした……。


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