第17話 キケンな性癖

 レベルアップに伴い、新たなスキル【卑猥な覗き見ムッツリ・スケベ】を手に入れた僕は、さっそく美少女たちの衣服の下を覗くべく、まずはアストレアを見やった……!


 僕は、眼球の大きさが2倍になるほど瞼を思いっきり開いた!


 ……すると。


 ……おぉ?


 見える…見えてきた…気がする!


 何か違う色がアストレアから見えた。


 なんだこれは……下着か……!?


 うぉおおおだとしたら肌はもうすぐじゃぁあああ!


 僕は眼球が3cmは出るほど、さらに目を凝らした……!


 —————————————

 アストレア

【好きなヤりかた】刺殺

【発情スイッチ】拒否

 —————————————


 ………。


 半透明のステータス画面が浮き出てきた……。


 ………。


 イヤおかしいだろぉおおおおおおお!


 卑猥な覗き見って言ったら、透視能力だろうがぁああああああ!

 僕にも!夢を!見させてくれよ!エッチな夢をよぉおおおお!


 別に人のステータスなんか覗き見れなくていいんだよ!


 僕は、もう何度目かも分からない卑猥な期待をバッサリと裏切られた。もはや、嘆くことしかできなかった。


 ゼェ…ゼェ……。


 ひどすぎる……。


 待てよ………これ…どういう意味だ……?


 僕は、心から嘆いたのち、ようやく覗き見たステータスを見やった……。


 【好きなヤりかた】刺殺


 た…確かにアストレアは僕を短剣でメッタ刺しにするのが好きだな……。


 【発情スイッチ】拒否


 んんん?どういう意味だ…?


 発情スイッチという言葉はエロい意味でふつうは使うが、この世界では違う意味だろう。


 そう…きっと……。


 殺意を掻き立てる…動機……とか…?


 た…確かに…僕がアストレアにヤられそうになったのは、彼女に案内役を頼むのをしたときだった……。


 ………。


 イヤ怖いよぉおおおお!


 なんでだよぉおおおお!


【卑猥な覗き見】なのに、全然卑猥なものが見れない!

 言葉だけは卑猥だけど、意味が全然違う!


 世界観がおかしすぎる!どうして勇者なのに美味しい展開がないんだ!


 どうして美少女たちの性癖がこんなにもキケンなんだぁああああ!


 僕は、ことごとく期待を裏切るこの世界で生きるのがつらくなってきた。



「……どうしたの?顔色、悪いわよ?」

 ティアラが嘆き苦しむ僕の顔を覗き込んで心配そうな表情を浮かべた。


「いや全然!ぜんっぜん平気だよ!」

 まぁ新しいスキルに悲しまされていただけだからな……。


 そうだ、ティアラのステータスも見てみるか……。


 僕は、ティアラのステータスを凝視した……。


 —————————————

 ティアラ

【好きなヤりかた】焼殺

【発情スイッチ】侮辱

 —————————————


 ………。


 やっぱり、卑猥でもなんでもなかった。


 ……まぁ、でも、少しでも長く生き延びるためには役には立ちそうだな。


 僕は、もう期待するのをやめて、ポジティブにとらえることにした。


【好きなヤりかた】焼殺


 ……うん、でしょうね。彼女、人を燃やすのが好きな放火魔だからね。納得だわ。


【発情スイッチ】侮辱


 ……そうだったのか。ティアラは、自分が侮辱されたと感じた時に、殺意を抱くのか。


 僕は、転生されてからのティアラとの関わりを回想した。


 えっと、返事しなかったらヤられて、職業が魔法騎士以外だったらヤられて、スカートに潜ったらヤられて、案内役に選ばなかったらヤられたでしょ。

 あとは、試しの門を開けられなかったらヤられて、炎と融合できなかったらヤられたのか。


 ……僕、めちゃめちゃヤられそうになってんじゃん……!


 …こうして思い返してみると、確かに、優秀な勇者を選んで育てるというティアラの役割から考えれば、僕がティアラを侮辱してヤられてきたパターンだったのか……。


 なるほど……。


 意外と、スキル【卑猥な覗き見】使えるかもしれないぞ。


 前もって発情スイッチが分かっていれば、殺意を刺激せずに、うまく立ち回ることができるかもしれない。


 そして、最終的には、ハーレムに到達できるかもしれない……!


 そう!これは!急がば回れ的な!風が吹けば桶屋が儲かる的な!


 頑張れ郁人!生きていれば周り周ってムフフ展開になるはずだ!ハーレムまで生き延びるんだ!


 僕は、エロスに懸ける情熱で、なんとか自分を奮い立たせた。


 ついでだ。マリー先生の性癖も覗いてみるか……。

 

 僕は、マリー先生の幻惑するような体を直視しないように、ステータスを覗き見た……。


 —————————————

 マリー先生

【好きなヤりかた】??

【発情スイッチ】??

 —————————————


 ……。


 使えねぇ……。


 前もって知ることができるから役に立つかもしれないのに、これでは意味がない。


 ていうかマリー先生にもキケンな性癖があるんだな……。


 もはやこの世界に存在する美しい女性たちは全員僕の命を掻っ攫う可能性があると考えた方がいいのかもしれない……。


「……ねぇ?体、大丈夫ならクラスに戻らない?もう授業終わっちゃうよ」

 ティアラが、しばらくの間美少女たちの性癖を覗くことに集中していた僕に声をかけた。


 授業が終わる……?


 外を見やれば、夕焼けのオレンジ色の光が刺していた。


 そうか、気絶していたから、もうこんな時間なのか……。


 僕は、別にどこも悪くない体を、さも魔力を出し切って疲れているかのように装いながら、ベッドから立とうとした……。


 ……だが。


「あら、まだ診察してないじゃない?どこか悪いかもしれないから、調べてあげるわ」

 マリー先生が、僕を引き留めた。


 診察…?別にどこもケガしていないはずだけどな……?


 疑問に思う僕をよそに、マリー先生は話を続けた。


「そういうことだから、2人はもう行ってもいいわよ。勇者様も元気になったことだし。ね?」


 ん…?……なんか強引だな…?…まるで…2人を…僕から遠ざけたいみたいだ………。


 マリー先生の挙動に少しだけ違和感があるな……。なんだ……?


 僕がそう訝しんでいると、マリー先生は、僕の耳元で2人に聞こえないようにこっそりと囁いた。

「2人がいなくなったら、体中の検査、シ・テ・ア・ゲ・ル」


 ………アアアアアアアアアアア!!!


 僕は、気持ちの昂ぶりから心の中で悲鳴を上げた!

 立った今感じていた疑問なんてすべて一瞬にしてどこかへ吹き飛んだ!


 か…体中の検査だって……!?


 そ…そんなシチュエーションがあっていいのか!?


 一体どこを検査するつもりなんだマリー先生!体中ってことは、あんなところやこんなところまで検査するのか!?


 まさか…2人きりになりたいのは、そういう理由からか!?体中の検査をするために、2人を追い出したいのか!?そうなのか!?


 ………。


 そろそろ…いいんじゃないか郁人。


 お前も、大人になるときがきたってことさ。


 性欲に支配された僕の心が、僕に語り掛けていた。


 もう、童貞を捨てるときだよ。


 最初はマリー先生みたいなエロいお姉さんに筆おろししてもらうのも、本筋ってものだろう?


 酸いも甘いも知ったマリー先生におろしてもらおうよ?


 ………。


 僕は…僕は…僕は………!


 今、になります……!


 僕は、いくらかの逡巡を経て、言った。


「マリー先生。僕も、ちょうど体の調子が悪いと思っていたんです。

 ティアラ、アストレア。ありがとう。僕は、とりあえず大丈夫だから」



 ついに僕にも卒業のときが来たと、哀愁にも似た気持ちを感じていた。

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