第16話 卑猥な覗き見

「……だいじょうぶ!?」

 見ればティアラとアストレアが見舞いに来てくれたようだ。


 2人とも少しだけ息を切らしている。


 まさか…心配してくれていたのか?


 イヤ…さすがにないか……。


 僕は、即座に首を横に振った。


 だって…隙あらば僕をとする奴らだもんな……。


「いや!?ぜんっぜん心配なんてしてなかったけど!?

 アストレアがどうしても気になるっていうから!?

 私があなたの案内役だから、イヤイヤ付いてきただけだし!?」

 ティアラが急に必死になって言った。


「私は、心配していたわよ、勇者様?」

 そう言ったのはアストレアだ。初日のときと同じように、僕の手をぎゅっと握った。


「ふふふ、2人とも優しいのよ?授業サボッてさっきまで隣であなたのことを看病していたんだから」


「なっ…!別に、いたくていたわけじゃないし!授業がつまらなかったから、サボリが見つかったときの言い訳だし!」

 ティアラは顔を赤くしてしどろもどろになっている。


「私は、早く目をお覚ましになられないかな~ってこうして手を握っていたわ」

 アストレアは変わらず飄々としている。


 な…なんだ?


 アストレアは実は最初からこんな感じだったような気もするが、ティアラの態度が変だな……?


 僕が微かな違和感を感じていると、アストレアは尊敬のまなざしを僕に向けて言った。

「自身の魔力をすべて一撃に込めるなんて、素晴らしいですわ」


 ……よかった、僕が気絶したのはサーシャ先生のおっぱいに興奮しすぎたからだが、魔力を使い切ったからだと都合よく誤解されているようだ……。


「まぁ!?アンタがあんなスゴイ魔法をいきなり使えるとは思ってなかったから!?ちょっとは見返したっていうか!?」

 フンというように無理にふんぞり返ってみせるティアラ。


 な…なんだ?


 ティアラの何かがおかしい…ような気がする…?


 フロレンティナの魔法が凄かったから、多少彼女の評価が上がったという感じか…?


 ………。


 僕がそう首をひねっていると。


 ピロリ♪ピロリ♪ピロリ♪


 マクドナルドでハンバーガーができたときの音…?


 これは確か……?


 すると、僕の前にステータス画面が現れた!


 そうだ、レベルアップの音だ……。


 このタイミングでレベルアップ…?


 なんかいつも目が覚めたときに出るけど…。

 魔物と戦わなくても、寝ていればレベルアップしたりするのか……?


 僕は、首を傾げつつ、目の前のステータスを見てみた………。


 —————————————

 夜立郁人 Lv3 【眠気】

 HP: 29/37 SP: 11/11

 職業: お尻よりおっぱい派

 スキル:

臆病者の白昼夢リスク・プリディクション】命が危険に晒されたとき、少しだけ未来を見ることができる

卑猥な覗き見ムッツリ・スケベ

 —————————————


 …!?!?!?


 …なんだ!?色々変わっている!


 相変わらずHPやSPは僅かな増加。僕は生まれた時から、ほとんど成長することはできないようだ。なんという赤ちゃん勇者だろうか。

 

 ……HPが減っているのはなんでだろう?まだ誰にも襲われていないはずだけど……。

 ……それに、【眠気】って……?

 確かに眠いような気もするけど……。


 そして職業!お尻よりおっぱい派ってなんだよ!?

 そんな仕事があるわけないだろう!?お尻よりおっぱいを愛好する仕事があるなら僕もやりたいわ!

 単に性癖を吐露しているだけじゃないか!?

 マジで誰だよこれ書いてるの!?しかも当たってるし!

 そうだよお尻よりおっぱい派だよ悪いか!


 僕は毎度悪意を感じさせる職業欄に激高する自分を何とか抑え、スキルへと目を移した。


 ……最後。これが最も大事だ。

 スキル【臆病者の白昼夢リスク・プリディクション】の記載は変更なしだが、スキル【卑猥な覗き見ムッツリ・スケベ】が足されている!

 これは大きな変化だぞ……!

 女神様も、スキルが追加されるとは言っていなかったが……成長に応じてスキルも変化するということか……?


卑猥な覗き見ムッツリ・スケベ】ってなんだろう……?

 また説明がないのか…不親切なステータスめ……!


 そして僕はムッツリ・スケベではない…!ハッキリ・スケベだ……!

 僕はよく分からないところに食いつきつつ、スキルについて考えた。


 ネーミングからすると、かなり役に立たなそうな気が……。


 卑猥……。


 覗き見……。


 …………。


 ………はっ!


 そこまで考えて、僕はある思考に行きついた。


 ま…まさか……【卑猥な覗き見ムッツリ・スケベ】とは……。


 のことではないだろか!?


 確かに僕は女神様に言った!

 衣服の下を覗く透視能力が欲しいと!


 これは…もしかすると……女神様より与えられしプレゼント!


 よく頑張って生きているねと、そう褒めて下さっているのだ!!!


 僕は、魔法が使えないことも、スペックが低すぎることもすべて忘れて、この素晴らしきスキルを与えてくれた女神様に感謝した。


 今まで生きてきてよかった……!


 ついに…美少女たちの卑猥な裸体を拝見できるなんて……!


 僕は想像するだけで鼻血が放出されそうだ。


 

 さっそく、この能力を使ってみるか?ちょうど前には3人もいる……。


 さぁ覗くぞ……。


 誰にしよう………?


 僕は、既に興奮からハァハァ言いながら、2人の美少女と1人の美女に目をやった。


「な、なによ?息遣い荒いわよ?」

 ティアラが僕に怪訝な表情を向けた。


 ティアラはなんとなく申し訳ない気がする……。


 何となく態度が変わっているような気がするのも気にかかるし…。


 ここは…アストレアだ!


 さぁ、その柔らかな肉体を僕に見せてみろ!


 僕はカッと目を見開き、眼球が飛び出るほど目に力を入れて、アストレアの紫色のドレスを見つめた……。



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