第12話 アナタならたとえ火の中水の中
つ…ついに鼻血が出てしまった!サーシャ先生の露出した肩と胸に刺激され過ぎたようだ!
お…おわった……。
すると、右からスッと手が細い手が僕の鼻付近に伸びてきた。
ん…?
確か、右に座っていたのは……フロレンティナ?
「
フロレンティナが囁くようにして唱えた。
……?
僕は、訳が分からず、怪訝な顔をしてフロレンティナの方を向いた。
「ウフフ。止血してあげたわよ。せっかく男前なんだから、ね?」
僕は、鼻をさすってみた。すると、不思議なことに、出血が止まっている!
左隣に座るティアラを盗み見ると、何も気が付いていない様子だ!
た、助かった……。
「ありがとう、フロレンティナ。君は命の恩人だよ……」
僕は心の底からの感謝をフロレンティナに伝えた。
「フフ、大げさね。お役に立ててよかったわ、勇者様」
フロレンティナは僕に向かってウィンクしてみせた。
これが……ハーレム……。
これが……勇者だけが体感できると言われるハーレムなのか……。
左に座るティアラは、もちろんとても可愛いものの、隙あらば僕に着火しようとするヤバイ奴だ。
だが、教壇に立つサーシャ先生に加え、右に座る2度も僕の命を救ってくれたフロレンティナ、それに、前に座る美少女の面々。
これからもきっとこうしたドキドキ展開がたんまりとあるのだろう。ヤってヤられての乱れた生活が始まるのだろう。
僕は、これから始まる楽園での未来に胸を躍らせていた。
サーシャ先生は、教室全体を一瞥し、授業を始めた。
「今日の授業は、『炎・応用Ⅰ』からですね」
マズいな。サーシャ先生の露出した透き通るような肌をした肩と、見ているだけで弾力を感じさせるおっぱいに視線が釘付けになって、全く授業にできなそうだ……。
僕は、鼻血を出してしまう危険にもかかわらず、改めて教壇に立つサーシャ先生に見惚れていた。
「ですが、今日の授業を始める前に、みなさんに紹介したい方がいます。えっと……あぁ……そこね」
サーシャ先生は、最後尾の列に座る僕の方へ向かってハイヒールの音をカツカツと立てながら近づいてきた。
「彼が、今日からこの魔導A級に加わる新しい勇者様です」
サーシャ先生は、僕の肩に手を置いて、クラス全体に向けて言った。
クラスの美少女たちも、その言葉に釣られて、後ろを振り返って僕に視線を集めた。
当の僕は、サーシャ先生が僕の肩に置いた手の先にある、素肌が全開になっている
「ほら!何か言いなさいよ!」
黙ったままでいる僕の脇腹をティアラに小突かれて、僕はようやく美少女たちに注目されていることに気が付き、ハッとなった。
「え、えぇええっと、僕は、勇者です。これからお願います!」
先生の発する色気と美少女たちに見られている緊張で混乱しすぎたあまり、自分の名前すら言うのを忘れてしまった。
そんなテンパっている僕をクスリと笑う音が漏れ聞こえた。
「彼は、逸材の魔法騎士らしいからね、私も期待しているわよ」
サーシャ先生は僕に微笑んだ。
先生にまでウソの情報が回っているのか……。先生に期待されることは嬉しいけど、何か不都合が起きなければいいが……。
サーシャ先生は教壇に戻ると、話を戻した。
「それでは、改めて授業を始めましょう。今日は融合魔法です。
皆さんご存知かと思いますが、融合魔法とは、自らの体と
この融合魔法は、多くのMPを消費する一方で、通常の状態で生じさせた魔法よりも遥かに高い威力を出すことができます。
習得の難易度は高いですが、操ることができれば相手にとって脅威となることでしょう」
おぉ、いきなりヤバそうな魔法キタぞ……。
だけど、今回はどうやら座学っぽいな……。聞くだけでいいなら、僕が魔法が使いないことはバレなそうだ……。
僕は、安心してサーシャ先生の露わになった素肌を眺めることにした。
……だが。
「えー。それでは、みなさん、早速実践してみましょう。魔法に関しては、習うより慣れよ、ですからね」
……なんだと!
僕の楽観は早々に終わりを告げた。
「新しい勇者様も、大丈夫でしょう。最近の方々の中では、そうとうにヤるらしいですから」
……なわけあるか!だって、びびりエロもやしだぞ!?
内心、頭をブンブンと横に振るが、伝わるはずない。
「誰か、前で見本を見せてくれる方はいませんか?」
「はい!私がやります!」
見れば隣のティアラが手を挙げている。…そういえば彼女は炎魔法が得意そうだった。いつも僕を燃やすし。
「さすがね、ティアラ。それでは、この炎と融合してみてください」
サーシャ先生は、彼女の魔法で、目の前の空間に1mほどの火の玉を生じさせた。
前に出たティアラは、全く動じることなくその火に手を突っ込んだ。
「おぉ…」
間近で人が炎に手を入れるのを見るのは、なかなかにグロテスクだな……。
すると、僕の心配もよそに、彼女の腕はみるみるうちに燃え盛る炎へと変化した!
「ティアラ、そのまま何か魔法を使えるかしら?」
「もちろんです」
ティアラはその炎と化した腕を誰もいない空間へと向けて、言い放った。
「
「ゴォオオオオオ!」
すると、唸るような轟音とともに、彼女の手から猛然と炎のトルネードが前方へ向かって放たれた!
……いやそれ試しの門の前で僕が喰らったヤツゥううう!
僕は先ほど自分が味わった苦痛を思い出して背筋がブルッと震えた。
ようやく教室がムダにだだっ広い理由が分かった。こうして魔法の練習をするためだったのか。
「まぁ、こんな感じね。いいお手本だったわ。ありがとう、ティアラ」
サーシャ先生がティアラを褒めると、彼女はまんざらでもなさそうだ。
やはり彼女はこの中でも相当の実力者なのだろう。ちらほら拍手さえ起きている。
「それではみなさんもやってみましょう。ケガをするのでお互い十分に距離を取ってくださいね」
……!!!
みなさん…もだと!?
……僕は、ここでようやく実感した。
……ここ魔導A級は、楽園ではない。
今にも死へと向かって真っ逆さまに落ちて行く、壊れかけた桟橋の上に、僕はいるのだということを。
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