第3話 勇者の僕はエロもやし
「じゃあ早速だけど、ステータスって唱えてもらえるかしら?」
「ステータスゥウウウウウ!!!!」
僕は先ほど般若の形相のティアラに燃やされた映像が頭から離れず、人類最速の反応速度に挑戦するかのように瞬時に唱えた。
するとポップアップ画面のようにして半透明の画面が現れた!
……?
「画面が現れたはずよ。そこにはあなた自身の体力、魔力、攻撃力、防御力、素早さなどの能力に加え、レベルや職業などのステータスが記載されているわ」
ステータス………。なるほど…。ドラクエ的なシステムね……。
僕は現れたステータスを見てみた……。
—————————————
HP: 24/32 SP: 7/9
職業: エロもやし
スキル:
—————————————
……ん?
なんか…情報が少ない?
というか…ティアラの説明と少し違くない?
攻撃力とか守備力とか書いてないし。
それに職業!「エロもやし」ってなんだよ!
そんな職業あるか!?
エロもやしで魔物と戦えるわけあるか!?エロもやしに何ができるって言うんだ!?
ふつう剣士とか魔法使いとかそういうヤツだろ!
それに…最後のスキルだ。
臆病者の白昼夢って…なんだ?
まったくもって不可解、というよりも、悪意すら感じさせるステータスとにらめっこしている僕にティアラは言った。
「どうかしら?勇者にふさわしいステータスだったかしら?他の人からは見ることができないから、教えてちょうだい」
「はい!そうですね!やっぱり勇者だなってステータスでした、はい!」
完全にティアラにビビリまくっている僕は必死に答えた。
……いや勇者にふさわしいステータスって何よ!?
HPもSPもバリ低い。
職業は「エロもやし」。
スキルの「臆病者の白昼夢」も、ネーミングからすると何だかさえない能力に見える。
そもそも攻撃力等々の情報すらない。
こ…こんなんで魔物と戦えるのか?
というかこれで勇者と言えるのか?
「それで…あなたの職業は何だったのかしら?」
ティアラは動揺を何とか隠そうと冷や汗をかきまくっている僕をじっと見つめて聞いた。
……!!!
やっぱり聞くか職業!そうだよな、職業大事だよな…!
エロもやしだったけど……。
エロもやしって答えていいのかこれ?
もしかしたらこの世界ではめちゃくちゃレア職業だったりするのか?
いやでもエロもやしだぞ……?
「カサカサカサカサ」
悶々としていると、何かが擦れる音が聞こえてきた。
それは近く。僕の近くから聞こえてくるようだ。
顔を上げて音のする方を見てみると、ティアラが高速で貧乏ゆすりをしている!
ヤバい!何か返事をしないと!
ティアラの我慢が限界に到達しようとしている!
……何と答えればいいのかが分からない!ええいままよ!この際「エロもやし」と言ってやる!
すると僕の意識はモノクロ世界へともっていかれた!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「なっ……!」
…まただ。突然、現実感のないモノクロ世界へと移動した……。
……なんだ…この現象は……?
「……おい」
再びドスの効いた低い声が聞こえてきた。
こ…これは……!
声のする方を見やれば、ティアラがまたしても般若の形相で僕を睨みつけていた!
あまりの恐ろしさに僕は腰をぬかしてしまった!
後ずさろうとするも恐怖から足をうまく動かせない!
そして這いつくばる僕に向かってティアラは言い放った!
「エロもやしって何だよエロもやしって……下らねぇ職業引きやがって……こっちは
そう言うや否やティアラは手のひらを上向きに掲げた!
「
瞬間、ティアラの手の上、いやティアラの頭上に巨大な火の鳥が現れた!
その目は虫ケラのように横たわる僕に焦点を合わせているようだ!
そして嘴を大きく開けると、炎の渦を僕に向かって吐きかけた!
その全身を貫く炎の渦は激しい勢いで僕を焼き尽くした!
僕はのたうち回るが、不死鳥は力を緩めることなく僕に向かって火を吐き続けている!
「ぎゃぁあああああああ」
僕は悲鳴にもならない悲鳴を上げた……。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
……はっ!
僕の意識は元の世界に戻ってきた。
全身が焼けるように熱い。本当に不死鳥の炎を喰らったかのように全身に痛みが走っている。
こ…これは……。
………。
僕はあと少しで今自分の身に何が起きているのか掴めそうな気がして、必死で頭を働かせていた。
これは…これは…もしかして………。
「それで…あなたの職業は何だったのかしら?」
ティアラは僕に再び問うた。
また同じセリフだ……。
そうだ…そうに違いない……。
あとはステータスを確認できれば……。
僕は全身に走る痛みに耐えつつ、既に開いているステータスに再び目をやった。
—————————————
夜立郁人 Lv1 【火傷】
HP: 15/32 SP: 5/9
職業: エロもやし
スキル:
—————————————
……これで確実だ。
恐らく先ほどのモノクロ世界での経験は……。
……僕のスキルによるものだ。
僕のスキル名は
日本語の部分だけ読んだら訳が分からないが、ルビの部分が分かりやすい。
リスク・プリディクション。すなわち危険予知。
SPも先ほどよりさらに減っている。2回のスキルの発動で5にまで減ってしまったのだろう。
体力も減っているのは、モノクロ世界でのダメージの一部が現実世界へと引きずっているためだ。
僕は命の危機に際して少し先の未来を見ていたのだ。
さらにティアラが同じセリフを繰り返したことから、少しだけ時間が巻き戻った現実世界に戻るようだ。
スキル
これが僕が女神様から与えられたスキルだったのか………。
どうりでティアラもスキルに関しては言及しない訳だ。この世界の住人にはなじみがないモノなのだろう。
「カサカサカサカサ」
再びティアラの激しい貧乏ゆすりの音が耳に入ってきた。
僕は目を瞑って意識を集中した。
先ほどのモノクロ世界でのやり取りを反芻した。
ティアラが火の鳥を出現させる前に…言ったこと。
あれは…きっと………。
僕はあと少しで答えに到達しようとしていた。
つまりだ…つまり……ここで僕が答えるべきことは……。
「……
僕が恐る恐る答えると、ティアラは眉をピクリとだけ動かした。
「……そう。よかったわね」
ティアラはつまらなそうにそのままそっぽを向いている。どうやら僕をヤる気もまだなさそうだ。
……よかった!本当によかった!
僕は全身から汗が噴き出しているのを感じた。
スキル【
その中でティアラはこう言っていた。
『こっちは
これから分かることは、彼女たちは職業が魔法騎士の勇者が現れるまでリセマラ、すなわち何度も勇者を殺していたということになる。
僕の職業がエロもやしであろうとなかろうと
きっと世界に同時に存在できる勇者は1人だけなのだろう。
この世界……恐ろしすぎる………。
3分も生き延びれば、上々。
確かにそうだ。
勇者を呼び出しておいてリセマラしようとする世界で生き延びられる訳がない。
この瞬間を生き延びることに必死で玲菜のことはすっかり頭から抜け落ちてしまっている。
召喚されてから2分ほど経っただろうか。
僕はこの辛すぎる世界であと何秒生きられるのだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます