第9章 恐怖の生きもの
目を
もらった時計は午前6時45分を指している。そろそろ起きる
毅も決して
7時半になって、朝食が運ばれてくる。
昨夜は20時過ぎに軽い夕食が運ばれてきて、私たちはそれを食べて、お
なんとも
ザザが魔法使いじゃなかったら、この部屋に監視カメラがないか、調べて回るところだ。お父さんはいつも、IT機器を信用しすぎるな、と私たちに言い聞かせてくる。技術者だから、かえってそういうのが気になるんだとか。
昨夜はバラバラに探したせいで、合流が遅くなった。私は毅と話して、お互いが見える位置でザザを探そうと決めた。庭も建物も、基本的に左右
入口からお
だから、細かいところを見るほど時間はかからない。庭全体を見るのに、私たちは30分と決めた。1階が30分、2階が20分、
私たちは真っ先に庭に出る。昨夜は近づけなかった
昨日はそこまで行かなかったけれど、裏には馬小屋があった。中に入ってザザを見なかったか問いかけてみる。でも、馬たちは何も聞かなかった様子で草を
「ザザの居場所を知らない?」
すると、その馬は顔を上げる。
「ザザは宮殿の2階で、
「ありがとう」
私は急いで毅のところへ
「馬の言うことなんて、信じていいのかな?」
「じゃあ、どうすればいいの?」
私はとにかく、毅を2階に引っ張る。
「壁の絵に張りつくなんて、
「わかんないよ。葉っぱに化けてたくらいだから」
階段を
「ザザ、どこにいるの?」
声をかけながら、1枚ずつ絵を外そうと試してみる。だけど、絵は私にはちょっと重たいみたいだ。外せても、元に戻せないかもしれない。特に、大きくて少し上のほうにかかっているのは、少し
ネズミが1
「そこの絵はダメだよ、ザザの絵だから」
私が手をかけようとしていたのを、慌てて止めてくる。だけど、ザザの絵と言われるくらいなら、ここにザザがいるかもしれない。私は逆に気になって、その絵をよく調べてみる。
古い町
「何だろう」
私がその船に
「あれ、見つかっちゃったみたい。うまく化けられてなかったかなぁ」
「ちょっと飛び出してたよ?」
「うーん、そっか。じゃあ、もう1回ね。今、9時59分だから、10時半から、3時間だよ。昨日も言ったけど、失敗したら、帰れないからね」
それだけ言い残して、ザザはまた消えてしまう。
時間より早く探そうとしても、ダメなんだと思う。だけど、どの生きものにヒントをもらえばいいのか、先に探しに行ってもいいかもしれない。
毅が近づいてきた。
「まだ?」
「あ、ごめん。今、見つけたところ。10時半から3時間だって」
「またあ?」
「うん、また」
「もう、終わりでいいよ!」
気持ちはわかる。私もそう思う。
「だけど、ザザがやるって言うから」
毅は
「ただの迷路だと思ってたのに」
「そうだね」
私たちはいったん部屋に戻って、それぞれ好きな飲みものを飲んだ。冷蔵庫の中にいろいろ入っていたので、フルーツミックスのジュースをもらう。身体の中に
最後までうまく見つけられるといいんだけど。私は部屋の時計を見上げた。10時18分。次の作戦を
ここまで2回、たまたまうまく動物を見つけられたけど、2回とも違う動物に教えてもらったから、あの外の馬小屋に行ったほうがいいのか、よくわからない。
帰れなくなるって、本当に帰れなくなるんだろうか。たぶん
「外のほうが、動物は多そうだよね」
毅がそう言ったので、外から見ることにした。
「じゃあ、さっきと同じように、手分けして見ようか」
私たちは外へ向かった。一応、先に馬小屋を見たかったので、私たちは裏から始めることにした。
でも、どういうわけか、馬小屋に馬が一頭もいない。
「ダメだ、いない」
私は毅にそう伝えると、自分が受け持った庭の半分を、走って探し回る。花はとてもきれいだけど、生きものはまったくいなかった。虫の1匹もいない。走って、走って、息切れして立ち止まる。
「どうして?」
外では何も見つけられず、私たちは建物の中に戻る。1階から順に、左右に分かれて見るけれど、どうしても何も見つけられない。虫1
「お姉ちゃん!」
毅が大声で
「きゃあっ!」
思わず後ずさりしてしまう。黄色っぽい、緑色っぽい、不気味な蛇は、先の割れた
「キミ、ザザじゃないよね?」
毅が蛇に話しかける。
「やめて、やめて」
毅を引っ張って、私は
「毒があったらどうするの?」
「まずは、
毅はそう言うと、もう一度蛇に質問し始める。
「ねえ、ザザの居場所を知らない?」
でも、蛇は答えずに中に入ってくる。
「ねえ、ちょっと。少し
私はもう一度、毅を引っ張る。毅は少しだけ下がったけれど、完全に引こうとはしない。
蛇はゆっくりと入ってきて、その全長を見せた。たぶん2メートルくらい。細いし、巻きついてくるタイプじゃない。だけど、毒があるかもしれない。
蛇は
「ねえ、なんか違うよ、これ。他の子たちは、あっさり教えてくれたもん」
「そうなの?」
毅はそう言いながらも、細い蛇がすぐ真横を通り過ぎても、気にしない様子だ。蛇はそのままゆっくりと進み、私たちをエレベーターの前まで連れて行く。そして、壁を這ってエレベーターのボタンを
「まさか、その蛇と
「案内してくれるよ、きっと」
「
まだたくさん入っている。
私は
ようやく着くと、私は急いで毅を押して、自分も外に出た。でも、蛇も出てくる。私はもう一度エレベーターに毅を引っ張り込もうとした。
「待って」
毅が私を引っ張る。蛇はゆっくりと這い、机の上に這い上ると、ペンの1本をぺろりと
「それだって」
「え……」
毅に言われても、蛇が舐めたペンに
「わかった」
毅が手を
「えっ!」
慌てて止めようとしたけれど、毅はペンに触ってしまった。
ポンと音がして、ザザが
「ありゃりゃ。まあ、いいか。ええと、今は13時過ぎだから、次は2人が
「ええっ?」
思わず
「とりあえず、昼食にしよう」
毅に言われて部屋に戻る。まだ時間はある。また動物たちに相談できないだろうか。
「どうしよう。今度こそ、本当に帰れないんじゃないかなぁ」
部屋に戻ると、毅は不安そうに言った。この子、本当はずっと怖がってたんじゃないだろうか。だったら、私がしっかりしないといけないのに。
「また動物を探そうよ」
「うん」
もっと、元気づけないと。
「2時間くれたってことは、隠れる時間も考えてくれてるんだもん」
「……そうだね」
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