第7章 渡れ、渡れ!
どうやら問題なく抜けたようだ、とわかったのは、周りの
今度は子どもの
ピンクの壁の迷路は、今までとは少し違っていた。迷路になっていたのは、最初の2、3の分かれ道までだった。
目の前の景色が一気に開けた。後ろに並んだピンクの壁は、左右に大きく広がり、
船頭はいない。ボートは真っすぐにしか進まないのか、何かモーターらしきものがついているが、オールも見当たらなかった。
「水上迷路なんだよ」
私は
私たちが立っている岸には、ボートは1つしかない。左右にはいくらか歩けそうだけれど、横の壁はだいぶ遠く、岸がないところに立っているように見えた。泳いじゃダメかな。私は少しだけ水に
「まず、
ボートはひとりでに動き出した。湖らしい静かな波だ。
入口で聞いたとおり、全部魔法なんだ。魔法だと思ったから
最初の島に着くまで、十数秒だった。島には何もなく、ただ少し草が生えているだけだった。島の形は
乗り換えられるボートは2艘あって、どちらのボートも、最初のボートと別の向きだ。私はその
「いい?」
「うん」
私たちは、手近なボートに乗り換えた。
私たちが別のボートに乗ると、最初のボートはどういうわけか、自動的に元の方向へ
「ん、これって戻れないってこと?」
「同じ道では戻れないみたいだね」
思ったより難しそうだ。どういうルートで動いたか覚えていないと、同じミスを
2つ目の島はまた違った形だった。
ボートを乗り換えて次へ進む。今度のボートは最初の方角から見ると、
「どうする?」
「戻るのに乗ってみよう」
私が
「迷路の中なら、ときには逆向きに進まないと、目的地に着かないかも」
「まあ、確かに……」
本当に合っているんだろうか。あまり時間をかけすぎて、お母さんたちに心配をかけたくない。それに、お
着いた場所は、入ってきた場所とは違って、小さな島の1つだった。向かって右へ向かうボートを選んで乗る。
「右に行くの?」
「そうすれば、正面から見て、左になるから」
「うーん、かえって戻らないかなぁ」
「そう?」
わからない。毅はゲーム
「
「まあね」
確かに、これだけ
ボート内でナップザックの右
「もう少し左に行くんだよ」
「でも、進まないじゃない」
「迷路だから、真っすぐは行かれないよ」
自信満々の様子で主張するので、仕方なく言うとおりにした。左斜め正面に進むルートを取る。本当にいいのかな。
今度こそ、ペットボトルを取り出してお茶を飲む。場違いな
お茶を飲んだのはいいけれど、今度は片づける暇がないまま、岸に着く。次のボートで進路はまた左になる。
「行かれるなら
「できれば
どうにか次の島に着くまでに、ペットボトルをナップザックに放り
「今度こそ、真っすぐ正面!」
半ば
「これ以上後ろに行くのは、かえって違うかも。まだそんなに前に進んでないから」
今度は意外なほど長く進んだ。多分20秒以上乗った。そして、着いたらまた左へ進むルートを取る。左の壁がはっきり見えるほど左に進んだ。だけど、次は左後方か正面か、どちらかしかない。
「左!」
毅がまだ左に行くと主張する。後ろに向かうとわかっているのに。
「また戻るの?」
「たぶん
不安なんだけど。毅が勝手に乗ってしまうので、私も追いかけるしかない。
「方向わかってる?」
「お姉ちゃんが教えてくれるから、大丈夫」
「そういう問題かなぁ」
確かに、私は毎回、どちらに向かっているか伝えている。だけど、これだけごちゃごちゃだと、私でも
「どうしたの?」
「わからなくなるといけないから。進みたい正面のほうを向いて座ってるの」
「ああ」
壁にぶつかる岸だった。毅ははっきりと右に進路を取ると言ったし、もちろん、私も右のほうへ向かうのはわかってた。だけど、右斜め前に進むルートもあるのに。
「そしたら、さっきの場所に戻りそうだから」
「そう?」
「ほら、いいから、右!」
よくわからない。何か毅なりの
右に進むボートに乗ると、何か紙が落ちているのを見つけた。
「何、これ?」
「何?」
身体の向きを動かさないように注意しながら、私はそれを毅が見える位置に広げる。そこには馬と魔女がいて、星空がきれいなイラストがあった。
「なんだろう?」
とりあえず、確保しておこう。
「でも、よかった」
毅が呟く。
「何?」
「正しい道に来てる。じゃなかったら、こんな紙、ないはずだよ」
毅が
「ペガサスになりたい」
紙にはただ、それだけ書いてあった。たぶんさっきのが馬の絵だったから、その馬がペガサスになりたいっていう意味だと思う。
「どうやって?」
「さあ……」
私たちは首をひねった。
もう1枚、ヒントが出てくると思ったけれど、何もないまま、目的の場所に着いてしまう。ピンクの壁が
「うーん、この問題を解かないと、進めないみたい……」
私は何か動かないかと、魔法使いの
「
動かないので、毅が言うように、腕のつけ根から動かそうとしてみたけれど、これも意味がなかった。
「違う」
「変身の魔法ってわけじゃないのか」
「わからない」
扉の上から下まで手を伸ばして、私はありとあらゆる場所を動かそうとしてみる。
「やめなよ、間違ってたらどうするの?」
「違って戻されたら、戻されたで、別にいいじゃない」
そう言いながらも、本当は最後まで終わらせるほうがよかった。せっかく入ったアトラクションで、失敗して終わりなんて、おもしろくない。
右のほうの星に手をかけた。すると、星が動く。それは斜め下に落ちるように動き、流れ星の絵を描いた。
「あ!」
馬はペガサスになっていた。扉がゆっくりと
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