第4章 2人の毅
目の前に
「あれ、
向かって左側にいた毅がそう
「なんでもう1人いるの?」
右側の毅はそう言っている。
「
「僕だって最初からいたし!」
こうなってしまっては、どうにもならない。毅から目を
そういえば、入場の説明で、確か魔法の迷宮とかなんとか言ってたような気がする。単なる
私は急いでスマホを取り出した。地図は左ポケット、スマホは右だ。
スリープを
このまま2人の毅をここで見比べていても、どうにもならない気がした。私は
ちらちらと両側を見るけれども、2人とも同じような表情、同じ
「ねえ、しりとりしない? 左から順に」
私は
「最初は毅の『し』」
私が指定すると、左側の毅が反応する。
「シマウマ」
ちょっとらしくない。
「マラカス」
私が言うと、右の毅に移る。
「す……スイッチ」
だれでも思いつきそうだ。
「ち……地球」
これは毅でも言う。私の番だ。
「う……馬」
「ま……」
真っすぐか右から、真っすぐ進む道を選び、そのまま歩く。まだ
「魔法」
どっちもあり得る。それに、ここは魔法の迷宮だそうだし。
「う……ウイグル」
「何だっけ?」
「中国に
よくわからない。でも私が「る」だ。少ないから難しい。
「ルイボス茶」
「ち……」
何の疑問もなく「ち」で受け取る。右側の毅に、少しリアルな印象を持つ。
「チート」
前に聞いた気がする。確か、何かを
「トランク」
わからない。何とも言えない。
「く……」
私が単語を探していると、右側の毅が何かを思いついたようだ。
「あ、そうか!」
いきなり声を上げる。どうしたんだろう。
道がくねくねし始めた。そろそろどこかに出るのかもしれない。急がないと。
「クレパス」
「スクリーンショット」
画面を
「と……時計」
「い……イルカ」
「
「何、それ?」
思わず
「パソコンのマザボに
こんな単語を引っ張ってくるところが、毅らしい。
「ドイツ」
左のだれかは答えたけれど、私はその手をさっと放した。もう、これ以上は続けても意味がない。
「あなたは、だれ?」
ちょうど目の前に四角い建物が現れたとき、私は問いかけた。
「あはは、バレちゃったあ!」
ポンッと音がしたかと思うと、入口のイラストに
「はじめまして。ようこそ、魔法の迷宮へ。私はザザ。よろしくね」
小学校1年生くらいの見た目の子だ。とても元気がよく、大きな目は明るく
「よろしく」
「あの絵の人だ!」
でもはじめましてってことは。
「これはただの
「そうだよ?」
なんだか気が抜けそうだ。
「あれえ、
そう言うと、ザザはホウキを動かして、手
「というわけで、まったねー!」
そのままどこかへ飛んで行ってしまう。その様子を、私はただ目で追っていた。
「お姉ちゃん?」
毅に
それにしても、なんだか怖い。壁は
「入ろう」
「うん」
他に道はない。広場の代わりに、私たちが歩いている道は、この
毅は平気なんだろうか。私と違って、怖いアトラクションを楽しむタイプだから、大丈夫なのかもしれない。それとも、自分がゲームの中にいるとでも思っているんだろうか。なんだか
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