第3章 わくわく大迷宮
昼食を終えてトイレを
「この迷宮、気になるんだけど、行ってみない?」
「2人だけで行って来たら?」
お母さんは、あまり乗り気ではなさそうだ。
お父さんのほうをちらと見ると、お父さんはうなずいた。
「どうせ時間がかかるだろうから、毅も行くようだし、2人で行ったらいいだろう。お父さんはお母さんと
「でも、
「あの赤いバスが迷宮まで行きそうだよ」
毅が前を指さす。
バスが近づいてきていた。私は急いで毅の手を取り、バスに乗り込む。バスというほど速くは走らない。遊園地の中だから、スピードはゆっくりだ。2階に連れて行こうと思ったのに、毅は入口の近くに座ってしまう。
「しりとり、どこまで行ったっけ?」
「忘れた」
だけど、毅は忘れたというよりも、またゲーム機に視線を落としていたので、
こうやってすぐ、ゲームに気を取られるから、迷子になるんだ、と思ったけれど、そうでなくても、毅は
でも、実際に私たちが持ったのは、簡単スマホだ。毅は
バスはファンタジーのお城みたいな建物に近づいて、そのまま通り過ぎる。
バスは私の
途中で数回、人が乗ってきた。でも、
バスが目的地に着いた。私たちはバスを降りる。目の前に、入口のアーケードと同じようなアーチが
私たちが入口でチケットを見せると、一緒に入った人たちと、小さい部屋に入って、
「この迷宮は、魔法の迷宮です。中で何が起きても、魔法とご理解ください。
「
私は左側にあった棚に近づいた。いろんな飲みもののボトルが並んでいる。お金を入れずに勝手に持って行くようになっている。たぶん、迷路が長いんだ。
毅が横からすっと手を
順番が来て、私たちは中へ入った。
同じ道を通れば気づきそうなくらい、落書きの種類はばらばらだった。毅の手を
「ありゃ」
少し
「おいしい、これ」
少しだけ飲んで、あとはナップザックにしまう。毅のペットボトルも、リュックに入れてあげた。
どうにかそのあたりを通り抜け、
どういうわけか、そこは一面、
その広場から先へ行く道は3つあった。左か、右か、真ん中か。広場の中央に、何か書いた、白い看板が立っている。こんな場所じゃなかったら、何とか牧場とか書いてありそうな看板だけど、近づいてみると、注意書きみたいになっていた。
『道は1つだけ。間違ったら、最初からやり直し』
「やり直しなんて、
毅が顔をしかめる。もちろん、間違えなければそのまま進めるはずだ。こんなふうに書いてある以上、きっとどこかにヒントがある。でも、見えているのは目の前の看板と、芝生の広場ばかりだった。
「何もなさそうには見えるけど……」
「でも、何かあるよ、きっと」
私は毅を
「私はこっちから、毅は入口からね」
「それも面倒だなぁ」
文句を言いながらも、毅は一応、芝生の上を歩き始めた。ただ、歩き始めて5分もすると、ここには何もなさそうだと感じていた。どう見ても、芝生はそんなに深くなくて、何かを
「うーん、違うかも」
3つの出口の付近で立ち止まって、それぞれの周辺を探してみる。道の先をのぞいてみたけれど、なんだか
数字に意味があるのかもしれない。芝生になければ、ヒントは看板にありそうだが、看板の表を改めて見ても、特にそれ以外に書いてない。
「
毅に言われて裏に回ると、そこには簡単な計算問題が書いてあった。『1×2=〇』
「なんだ、2じゃない」
私たちは、真ん中の道へ入って行く。間違っても、最初からになるだけだ。
道を進み始めると、霧はあっという間に消えてしまった。周りには、青い壁に黄色い落書きが並んでいる。
「ゾーンによって色が違うのかな?」
毅が首をかしげる。
「かもね」
だけど、ちょっと
毅は何も気にしない様子でどんどん私の手を引いて行く。迷路の中なので、別に私がリードする必要もなかった。
犬と
毅が首をかしげたので、私は毅の手を引いて、右に進む。毅は
「あ!」
急に声を上げた毅にびっくりして振り返ると、パソコンの落書きを指さしていた。まったく、少しは忘れたらいいのに。
「ほら、行くよ?」
「あ、うん」
分かれ道の少ない、真っすぐの道に入る。なんだか少し
なんだか空気が変わった気がした。ほんのひと吹き、強い風が吹く。
「ん、あれ?」
なんとなく今、
「虫かな?」
ちょっと左に目をやると、毅が驚いた顔をして立っていた。何かをじっと見つめている。私は、その視線を追ってみた。その視線の先には、奇妙なことに、毅がもう1人、同じように驚いた表情をして立っていた。
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