第34話 魔王軍のことを整理するとだな

 一度撤収して、州都マリに戻り、休息と物資丁達と今後の作戦、打ち合わせを行うこととなった。ただ、敵情偵察ということで、ヨシツネ、トモエ、シンドバッド兄弟達が魔界に潜入していた。

「私達も。」

とあまりに張り切る聖女候補と賢者候補を、オズワルド達は止められなかった。オズワルドには、形式的なところは多いとはいえ、次々来援する各国軍との対応をする役割があるから、自分が行くわけにはいかなかった。

“二人を陰謀で殺すというのも在ったような…、死なないでくれよ!”

 魔王軍には、当然魔王は一人である、現在時点は。現在は、というのは過去複数存在価値したこともあり、戦国乱世状態で多数分立、抗争状態にあったことも知られている。それ以外でも、南北、東西で、三国時代、5カ国時代ていうこともあったという。統一魔王時代が人間達にとって脅威であるとは限らず、分裂時代に魔族の人間・亜人の世界への侵攻が烈しくなったときもある。先代魔王の時代も統一魔王だったが、あまり脅威に感じられることはなかったが、現魔王の時代に入って、その脅威が、つまり侵攻が烈しくなった。

 魔王の下に副魔王、それに匹敵する大魔将軍が計8人いる。両者の違いは、半独立的に自己の勢力圏を持つ貴族か、魔王直属の大将かということである。

 その下に小魔王、魔将軍が28人いるとされている。その差は、副魔王と大魔将軍との違いと同じだ。

 ただ、副魔王も小魔王もひとくくりで定義出来ないところがある。半独立している、魔王から見てライバルになりかねない者からほとんど魔王に直属しているのに近い者までいる。大魔将軍と将軍も微妙な所がある。実力でも、勢力でも、副魔王、小魔王の間でもかなりの差がある。副魔王の最下位は、かなり小魔王の最上位との差はそれ程大きくなく、小魔王の最上位と最下位はかなりの差があるという。大魔将軍と魔将軍も同じような感じだ。 

 さらに王族もいるが、小魔王や副魔王、魔将軍、大魔将軍となっている場合も多い。

 そして、魔王の親衛隊、8人衆とされている。実力だけなら、副魔王、大将軍以上と言われている。さらに、一連の格式に入らない実力者達もいる。そう言ったところでは人間の世界と似ている。

 ただ、魔王の力は、彼らとは段違いである、そういう存在が魔王となるという点が人間界と異なる。実力主義とも言えるが、そういうには違和感がある。

 先日の戦いで、副魔王と大将軍が一人づつ、親衛隊が三人倒れた、いや倒した。その前の戦いでも副魔王一人を倒しているようだった。

 どうもこの三人は、副魔王、大魔将軍の中での上位三人らしかった。オウジョをはじめとした三人の親衛隊は、筆頭のオウジョ以下2位、3位の地位らしかった。彼ら配下の小魔王、将軍、親衛隊員は、それに比例して多いはずだ。小魔王は副魔王の臣下ではなく、魔王の命令で傘下に入っている、敢えて言えば、格下の同盟者に近い立場であったろう。

 だから、魔王は部下の半分を喪ったと言えた。

 これをどのように考えるべきか。今が、積極的な攻勢に出るチャンスであろう。今すぐ集められる将兵を率いて魔界に侵攻、集結しつつある各国軍は、集結後、勇者達の軍を追いかけて行くというのが妥当なところであろう。

 各国の足並みの乱れ、調整の遅れもひどいが、勇者間の対立もなかなか収まらなかった。

 勇者アテナが建前論に固執し、勇者フレイアがそれを茶化し、からかい、馬鹿にするので2人の間が悪化する。柔軟性があるが、生真面目な騎士であるクロランドと脳筋の勇者ヒョウセンと兄のロフはさほどではないが、ヒョウセンのところのブショウがかれこれと駆け引きや戦い後の布石やらで対立を煽る形となってしまっている。結局、オズワルドがまとめて、ヒカルが賛同しつつ、若干修正してロキやソウ達と最終的な打ち合わせをして決めていた。メリーは、時々発言を求められ、直感で妥当なところをつくので、アテナも大抵は同意した。

「オウジョってさ、孔明の奧さんをモデルにしたキャラ?」

 二人っきりになって、メリーウェザーはオズワルドに尋ねた。

「ああ、そうだよ。」

「でもちゃんとした名前があったんじゃないの?」

「あれは後世の創作。オウ先生の娘としてしか伝わっていないんだ。」 

「孔明の嫁取は真似するなと評判になったというのも?」

「それは史実。実は美人だったとかいうのも、後世の創作。英雄の妻は美人でないとロマンがないだろうからな。黄先生の娘の売り込み文句と人々の評判以外は資料はないし、孔明の息子の年齢を考えるとかなりの高齢出産となるなど分からないことばかりだよ。」

「ふ~ん。でも、このパタ~ンだと、魔王は諸葛孔明ということになるの?反対だと思うんだけど。」

「だから、まだはっきりしてないけど、このパタ~ンは結局、少なくとも私達が生きている間にはでなかったんだろう。それはそうとして、諸葛孔明と劉備玄徳は何をした?結果としては統一のじゃまをして戦乱を長引かせただけだろう?高邁な理想も理念も大義もなかった。孔明は自分の才を認めてくれた玄徳に純粋な忠義を尽くしたというだけ、玄徳は梟雄の一人、何か義を守ったということもない。AIに委せたら、そう判断が出たということらしい。」

「じゃあ、関羽や張飛もでてくるんだ。」

「ぞっとしないな。まさか、そのまま全てが出てくるとは思わないけど。」

“そうなった場合の破滅パターンはというと、何だったけ?”

 

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