第32話 音🆚演奏…、かな?

「何をしている?援護するぞ。」

 アテナが聖剣を抜こうとした。

「馬鹿!お止めなさい!」

 フレイアが、怒鳴りつけた。アテナは、彼女を、このまま聖剣で斬り付けかねないという感じで睨みつけた。フレイアはというと、やれるもんならやってみなさいよ、と傲然と胸をはった。

「アテナ様。フレイア様の言われる通りです。」

「どういうことだ。」

 ディオニュソスの言葉に、アテナの怒りがさらに高まったようだった。

「今、二つの音色がぶつかり合い、均衡している中で、下手に力を振るうと、嵐のようになって、振るった方にかえって来るでしょう。」

「う!」

 アテナも、流石に分かったようだった。それを見て、どうよ、とふんぞり返るフレイアを睨んだが、黙って剣から手を離した。そこは、自制力も理性も持ち合わせている勇者だった。

「でも。」

 息継ぎで、音色が止まったら、相手はその必要のない竪琴もかき鳴らしている。ヒカルは、その瞬間、破れるのではないか、メリーウェザーが不安を感じていた。それは、ほとんどの者が同じだった。フレイアですら、そうだった。その瞬間、如何するかを考えているようだった。しかし、

「そうではないかもしれない。」

「?」

 オズワルドは漠然ではあったが、そうではないように思えた。ほとんど同時に、ヒカルとオルフェウスが笛から口を離した。アポロは、オルフェウスもだが、勝利を確信した表情だった。一方的な攻撃となる、一瞬だがそれで十分だった。

 しかし、倒れたのはアポロ達だった。再びヒカルが笛を吹き始めた。

「各々方、今が攻撃のチャンスですぞ!」

 ムサシが叫んだ。

 タケチの連発銃が火を噴いた。ヨシツネが、空中を駆け斬り込み、フレイアの魔法攻撃が始まった。それに呼応して、ムサシが,続いてクロランド,アテナが,次々続いた。

「こちらは、後ろを固めようか?」

 オズワルドが手を差し伸べた。メリーはその手を取った。彼は,握られた手を引っ張り、彼女が、起ち上がるのを助けた。

「私達が続いても、足手まといだしね。でも、ヒカル様が息つぎして、音色が途切れたのに、ヒカル様が勝ったの?」

 周囲を警戒しながら尋ねた。

「わからない。けれど。」

と言いつつ、説明を始めた。

「オルフェウス達の魔力はあくまで音、音としての音色。だけど,ヒカル様は演奏によって神々の力を得る、或いは神々の助力を得るわけ、ヒカル様の話だと。間奏、息つぎと一体化しているとして、も演奏の一部、音色がない部分もな。だから、ヒカル様の場合、音色が途切れても力を失わず、オルフェウスの音色が途切れた時、相手の力が半減、拮抗していた状況がヒカル様が絶対有利になって勝利した、かな。」

「お兄ちゃん、やっぱり賢い!」

 彼女は,兄=夫の首にすがりついた。

 呆れた顔のサンスベール以下の家臣達に気がついて、真っ赤になりながらも、咳払いをして、それから慌てて、体を離してから、

「勇者殿達の後方で、援護、支援、警戒を頼む。」

 オズワルドの言葉に

「はい、はい。分かりました。殿下。」

「は~い!」

 悪戯っぽく笑う、悪意は感じはしなかったので、2人は苦笑するしかなかった。

「特に、賢者様は臨機応変に結界を、聖女様は、一歩離れて、でも、直ぐに回復をかけられるように。」

「はい!」

 こちらは、真面目な顔で返事をした。各人が、動こうとした時、

「賢者様、危ない!」

 オズワルドが叫んで飛び出し、賢者見習いを突き飛ばして、火球を連発した。彼らの前に、小柄な金髪の少女の姿の魔族が立っていた。全く、火球はきいていなかった。

 鎌の形の光が2人の上に振り下ろされた。しかし、それは目標の途中で中和されて消えた。

「ひい~!」

 メリーウェザーだった。2人の間に立って、無効化魔法を発動したのだ。あまりの衝撃に気を失いかけた。

「ち!面倒な能力だな。」

 結界が目の前に展開された。賢者見習いだった。オズワルドが、その回復魔法の応用で、その結界を強め、メリーウェザーの無効化魔法をその結界に結びつけた。3人の体力が回復、向上が感じた。聖女見習いだった。サンスベール以下も、得物を構えて、魔族の少女に、対峙した。

“あ、こいつ、魔王の親衛隊、8人衆の一人、それから~、あ、あいつ?”“思い出せた、たしか、たしか…、そこからが出てこない~。”


 

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