第27話 どう私達は絡んでくるのですの?

「ヤマト国は、設定だけができて、ゲーム化段階には至らなかったはずだけど。」

 彼らとの挨拶、そして、今後の計画、戦術などを話終わって、自分達の部屋のベッドの中でオズワルドは頭を抱えた。

「何で、光源氏が武者姿で出てくるのよ?宮本武蔵が、随分教養人っぽいのよ?幕末は坂本龍馬じゃないの?」

 体を密着させたメリーウェザーが矢継ぎ早に疑問を口にした。オズワルドは、ゆっくりと思い出すように説明した。強い光源氏がでてくるアニメが過去にあって、それが検討段階で好評だったからであり、源氏物語で光源氏が神をも動かすような記述もあることから、こういう設定になったらしい。途中で、源氏物語研究の第一任者を任ずる女性作家からクレームが入ったが、AIで平等な判断をと自分が云いだした方式で、僅か数年間で、全く異なる源氏物語論を幾つもの出して自己破綻していると指摘されて、怒り狂って退場している。宮本武蔵は、万能の教養人と云うのが、歴史的事実である。坂本龍馬は、俳優の著作が基本設定となりかけたが、反論が出て論争となり、こちらもAI判定となったらしい。薩長同盟は坂本龍馬というのは、司馬文学の創作であり、中岡慎太郎を中心に多くの人間の工作の中の最後の最後の段階に彼がで入ってきただけで、薩長を提携させることは、武市半平太が努力し、両方に多くの知友を作ったこと、坂本龍馬の事績の多くが創作であること、”子供ができないのは神の意志。夫婦は人倫の基本。“と言って愛人を持たなかった武市半平太と、愛人に他の愛人の悪口を吹き込んで宥めた坂本龍馬の人間性の差が問題になったらしい。論争がかなりあったが、坂本龍馬派が多数ではあったものの、根拠が小説、はては自分の書いた小説だったりして、それは歴史研究者すら大半がそうだったが、完敗したのである。ただし、この選択は極めて不評であり、これが原因でお蔵入り状態になっていると噂されていた。

「なんかドロドロしてるわね。でも、なんか、みんな常識人らしくてよかったんじゃない?少なくとも、女勇者達よりはましだわ。」

”必ずしも、彼女らだけのせいではないのだけど。“メリーウェザーの嫉妬が怖かったので、それは言わなかった。

「用心することは?どういうことで、私達が、悪役になったっけ?」

 人物設定できて、お蔵入り状態のヤマト国の人間は絡んでこないだろう、とオズワルドは自信なさそうに断定した。

「女勇者に横恋慕して、相手にされなかったことを逆恨みして、魔王を倒した後、暗殺したな。」

「横恋慕?浮気よ、許さないわよ、誰?フレイアでしょう?それともアテナ?あんな寸胴、男体型のどこがいいのよ?」

 本気になって怒っていた。

「ゲームの中のオズワルドであって、美人の妹と結ばれたオズワルドではないから。」

 慌てて、弁解をした。表情を緩めてくれたので、安心した。確かに、アテナは美人ではあるが、ミロのビーナスのように、男性的ともいえる体型である。それに対して、フレイアは、正に魅惑的なナイスバディという対照的な体型だった。

「あとは、活躍に嫉妬して、或いは自分の功績にしようとして、暗殺を謀る、中傷して陥れるだった、かな。」

「あ、それ、私もやってたパターンがあった。横恋慕もあったか。そんなに多くはなかったけど。勇者編は、私の出番が少なくなったもんね。逆に、オズワルドの出番が多くなったもんね。」

「その通りだよ。」

 少し、苦虫をかみつぶしたような顔になった。

「とはいえ、」

 そのようなパターンになることはないだろう、とオズワルドが言った。

「そうよね。私達はそんなことをする必要はないもんね。だから、心配はない?」

 そう言いながら、やはり心配そうな顔を向けた。巻き込まれるパターンか、裏で糸を引く連中が出るパターンかも、とオズワルドは言った。

「とにかく、様子を見ながらだな。でも、絶対にお前を、破滅なんかさせないから。」

「うん。二人で乗り切って、幸せになろうね!」

 2人は抱き締めあった。勇者達は、全て何かやりそうな気がしてならなかった。彼女らの背景とする出身国の関係もある。彼女らの活躍で、地域の覇権、そこまではいかなくても、国威が関係してくる。彼女ら自身の立場、地位、名誉も関係してくる。野心もあるかもしれない。彼女らのおつきの者達は、そのことを気にしているかもしれないし、それ以上に彼女らに対する監視役なのかもしれない。そういうことを全て消去したとしても、あの4人は、互いに協力するつもりは全くないのだ。いや、クロランドだけは協力する意志は感じられた。かといって、そのことで彼女に協力を頼むと、あとの3人の反発が一層ひどくなりそうだった。



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