第26話 出発…女勇者達、さらにあの人まで

「兄上。申し訳ありません。王太子である私が、行くべきなのに。兄上に危険なことを…。」

 出発の際、アラン王太子は、すまなそうな表情で見送った。

「王太子殿下。…、兄として言うが、お前が出るのは、国の大事の時だ。魔王軍討伐のために、各国が軍をだすことになるだろう。その時こそ、お前が父の代わりに軍を率いていくことになる。その時に備えておけ。このような、個人の勇気や武勇による小事は、私に任せておけばよい。」

「はい、兄上。」

 アランの表情には、本心から心配し、責任感を感じていることが感じられた。こういう彼に好意を持ったんだな、とメリーウェザーはあらためても思った。

「お義姉様。ご無事で、お帰り下さい。」

 セイも心から心配しているようだった。手を握って、涙ぐんでいた。

「当たり前ですわ。可愛い妹の幸せを確かめないで死ねませんわ。少しでも不幸にしていたら、アラン様をたこ殴りにしてさし上げないと。」

「お義姉様ったら。」

 そう言って、小さく笑ってセイは涙を拭った。

「メリー!無事に、帰って来てくれよ~。」

 めそめそ泣いているのは、メリーの兄だった。本当に毎日泣きかねないが、泣きながらも、領地経営、事業管理はしっかりやる男だから、心配はしてはいなかった。夫の前では、何時もの姿とは打って変わって、双子の妹達が涙で言葉ならないながらも、彼にしがみついていた。“ふん!ブラコン!”

 次期聖女補佐と賢者見習いも同行している。いないよりいた方が役にたつという程度である。この二人より、魔法正騎士3人、エバンズ家の騎士、オズワルドに昔から使えている戦士の方が頼りとなりそうだった。荷物運び数人、さらにどうしてもと同行を志願した2人の侍女3人、オズワルドの友人の男女の騎士2人。交渉役などを担当する官吏3名ほか総計約25名の一行だった。彼らは、魔界との最前線に位置するパイ連合国に向かった。そこで、勇者達のバーディーや勇者達を助ける部隊と合流することになっていた。

 パイ連合国の一国、フローレンス共和国に入った。評議会議員のオスカーが彼らを迎えた。若いが、やり手の商人という情報だった。精悍だが、上品さもかねそなえる人物だった。彼が、宿舎に案内してくれた。彼の別宅でかなり立派な建物だったが、侍女達はしきりに、不満を言い立てたが。着くと同時に、関係先への挨拶や情報入手、交渉で忙しくなった。そうこうしているうちに、勇者達が到着した。

 北方からの勇者はハイエルフのフレイア、金髪の美人だった。彼女を支えるメンバーは、ロキと彼の歳の離れた2人の弟と妹だった。

 西から、クロランド、赤毛の美人女騎士とシンドバッド兄弟とアラジンと彼の従者と言うオーガ姉妹戦士。

 南からの勇者、アテナ、茶髪の美人戦士。ソクラテス、プラトン、ディオゲネス、ディオティマ達が彼女のチームのメンバーだった。

 東方から、ヒョウセン、黒髪の美人だった。彼女を補佐するブという、これも美人だったが、数人の戦士を束ねていた。ソウという男が、交渉役などを一手にになっていた。かなりのやり手ではあったが、ブに苦労しているようだった。

 クロランドとアテナは、女騎士という出で立ちだが、フレイアとヒョウセンは、魔道士、魔法使い、魔法に特化した感じの勇者のように見えた。

 はるか東方の島国のヤマトからの一行は、メリー達と同様、勇者のいない一行、勇者達を支援する一行だったが、

「どうして、このメンバーなのよ?」

 思わずメリーウェザーが、小声で、オズワルドに抗議した。

「そう言えば、そんな設定追加の予告があった。」

 彼も頭を抱えた。

 ミナモトノヒカル、ミナモトノヨシツネ、ミナモトノトモエ、ミヤモトムサシ、タケチコタテ。ヤマト国は、日本のようで日本ではない感じだった。平安時代から幕末までが、渾然一体になっている。

「確かに光源氏の君が…。」

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