第24話 勇者様を、ですか?
オズワルドとメリーウェザーが倒した魔族が、斬り込み隊長的な存在で、その死が魔軍の士気に大きく影響したらしい。聖魔法騎士達をはじめと将兵の奮戦と将軍達の指揮が、魔軍の猛攻を撃退できた主な要因ではあるが、2人の功績も大きいという声もかなりあった。返り血を浴びながら、しばらく緊張が解けて、座りこんだまましばらく立ち上がれなかったというおまけまでついたが。
王太子アランが率いる本隊が到着するまで、砦は守り抜けた。その後、本隊は撤退する魔軍を追撃した。王太子アランの初陣としては、危険もなく、見せ場のあるものとなった。王都に帰還して、叱責のようなお褒めの言葉を、国王からもらった2人は、ホッとしたが、それで終わらなかった。
本格的な魔王軍の侵攻が始まったという知らせが、諸国を震撼させたのは、それから間もなくだった。
「それで、勇者様が見つかって、認定されたのは、分かりました。だからと言って。」
自分達が、どうして、勇者様のご一行に加わらなければならないのか、と不満な顔をするオズワルドだった。彼は、あの戦いから数日後、妻とともに父国王によびだされた。国王、王妃、母貴妃、宰相達、将軍達、司祭長が待っていたのだ。
「しかも、妻のメリーウェザーまで呼び出されて。」
“お兄ちゃんが、みんなの前で妻だって~!”
「それがだな。」
父国王が、難しい顔をした。そして、おもむろに話始めた。
要するに、わが国には勇者がいないということだった。それなら、勇者とともに、誰かが戦ってくれないと、国の面子が立たないということだった。
とは言え、軍の精鋭を出したくない。聖女はいるが、歳を取り過ぎていて、勇者と共に戦うなど困難だ。後任の若い聖女もいるし、能力は十分あるのだが、体が弱く、こちらも戦いどころか、旅もおぼつかない。賢者も、歳を取り過ぎ、こちらは後継者がまだ未熟なのである。
「それで私が?聖女の代わりですか?次席聖女見習いとか、賢者の弟子とかはいないのですか?」
”たしかいたはずだ。“再洗礼の儀式の時、結婚のついでにメリーウェザーとともに教会でうけたのだが、確か、そんな連中がいたはずである。再洗礼とは、生まれて直ぐに行う洗礼は自分の意志ではないので、自覚が出た年齢で再度洗礼を行うことである。これには論争があり、再洗礼に反対する異端が存在する。キリストが神の意志を伝える、神に選ばれた人間ではなく、父なる神と子と聖霊が三位一体であると主張する、分かりづらい教えで、支持を受けてない。再洗礼派とローマカトリック等の立場が逆転して、ここでは、再洗礼派が正統派なのである。”あのゲームが欧米に出た時、すごい論議になったのよね、この部分。“
「おる、それぞれ2人。今回、お前達と一緒に行かせる。ただし、能力や聖具との相性がお前達以下でな、しかも、体力は十分だが、年少過ぎてな…。」
「まだ、子供だから引率者が必要ということですか。」
うんざりした顔のオズワルドに向かって、父国王は、
「それだけではないのだ。」
と続けた。
勇者が複数、いや、4人もいるのである。その取りまとめのためには、それ相応の者が必要なのである、というのだ。
勇者が4人、誰もが引きそうもない、というのも分かる。
「東方のヤマトでは、王弟が加わるという。」
“ここでも体面か。”とも思ったが、政治的、外交的には当然なことだと思い直した。
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