第22話 何とか収まった。

「今日は、大活躍でしたね。国王陛下や王妃様も、褒めていましたよ。よくまあ、見つけることができたと。」

 貴妃エカテリーナの言葉に、オズワルドとメリーウェザーは神妙になって、固まっていた。アラン王子とセイの結婚式は表面上、滞りなく終わり、貴妃は息子夫婦と娘達、そして、メリーウェザーの兄を別邸の一つに招き、身内の夕食を取っていた。

 不満顔のオズワルドの双子の妹達と残念そうなメリーウェザーの兄が両脇にいるのにお構いなく、二人は寄り添い合うように食事をとっていた。どちらも、兄と、妹とそばにいたかったのだが。メリーの両親は、養子とはいえ王太子妃となったセイのもとに今夜はいなければならなかったので、兄のランブトンが代理で来たのである。もちろん、喜んでだが。大きな期待、小さな喜び。

「本当に、嫌がらせから暗殺まで盛りだくさんでしたね。」

「全部、一人でとは。」

 ソーニャとナーニャの姉妹がボソッと言った。兄上から、武勇談を心ゆくまで聞きたかったのに、という顔だった。

「しかし、魔道士を雇うというのは、かなりの人物では?かなり高額になるますし。」

 裏表の商売では、若いながらもやり手のランブトンが疑問を口にした。

「そちらの方は、宰相達や王妃様方が、手の者に命じて調べ上げていることでしょう。」

 エカテリーナは、だから自分は知らないという顔をしていたが、そうではないことは、オズワルドが一番知っていた。今頃は、彼も知らない母の配下が調べまわっているはずだ。ぶるっと震えた。妹達も知らないわけではないはずだが、全く動じていないのを見て、恐ろしいと思った。“ゲームでは、恐ろしい悪女だったからな、3人とも。”

「それなりの財力や地位のある者達が犯人ということですね。」

 メリーウェザーが、オズワルドを独り占めしているのを誇示するように、彼と唇が触るくらい顔を近づけて言った。義理の妹達の痛いくらいの視線も、兄のがっかりした表情も、何のそのといったところだった。魔法を使える人間は多くない。多少とも、実用に使えるレベルがある者は、魔法学校に入学させられる。それでも、一日にごく限られた回数しかできない、人を傷つける、回復させるほどの魔法を使えるというのはほんの一部である。まして、今日の魔道士は、さらにその一部の者しか持たないほどの実力だと思われた。かなり高額な報酬とルートを持っていなければ雇えない連中である。心の中で唸った。“まあ、俺が詮索しても仕方がないし、出る幕でもないだろう。しかし、ゲームでの、俺やメリーウェザーの役割を演じた、糸を引いた奴は誰だったのか?”とどうしても考えてしまう。今後のこともあるから。

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