第20話 結婚式には次から次と

 アラン王太子とセイの結婚式には、次々に、乱入者が現れた。 

 まずは、セイの出自の低さを言い立てる、自称学者が式場に忍び込み座り込んで、持論を声高に言い出した。どこから入り込んだのか判らなかったが、オズワルドがいち早く見つけていて、衛兵達を連れて排除し、逮捕した。その後、セイに嫌がらせをしようと忍んでいた貴族の令嬢達をメリーウェザーが見つけて、衛兵達を監視につけて追い出した。高位の貴族の令嬢なので手荒なことはできないし、逮捕なぞはできない。しかし、戦装姿のメリーウェザーとドミニカ達に威圧され、身分が彼女らの方が上であるため、しょんぼりして帰ってくれた。

「本当に、馬鹿なことを。でも、よくお分かりになりましたわね。さすが、メリー様!」

とドミニカ達が言ってくれたが、笑いながら、“ゲームでは、私が取り巻きを連れてやろうとしたことなんだけどね。”と心の中で舌を出した。

「あんた、この世界への転移者?」

 小さくメリーウェザーが叫び、オズワルドが息を呑んだのはその後だった。

 結婚式のドレスを着た若い女が、あまり使われていない通路から会場に入ろうとしていた。

「確か、ヒロインが障害を乗り込えて捨て身で、または、メリーウェザーが性懲りもなく、王太子の結婚式に乱入するというのもあったのよね。勿論、ヒロインは逆転ハッピーエンド、メリーウェザーは捕まって処刑だったけどね。誰も実行するのがいないけど、そうそう、ここからよね。」

と通路に通じる扉を開くと、そこに結婚式のドレスを着た、金髪の美人が立っていたのだ。

「私こそ、アラン様と結婚式をあげるんです!」

と叫ぶではないか。彼女も驚いたのであろう。慌ててオズワルドが取り押さえ、それをメリーが手伝う。

「ゲーム?転移者?何ですの、それ?」

 暴れながらも、何のことか分からないという様子だった。

 オズワルドとメリーウェザーは、女をじっと見つめた。

「見覚えあるか?」

 メリーは首を横に振り、

「あなた、魔法学院の生徒?ではないわね?」

「それが如何したのよ!」

 オズワルドが叫んびを聞きつけ、衛兵達がようやくやってきた。

「どうも、魔法で操られた女の、ようだ。乱暴にしないように、警備長にも言っておいてくれ。」

 衛兵達は、一礼して、暴れ、叫ぶ女を引っ立てていた。

「転移者ではないようだけと、本当に、魔法に?」

「そんな感じだな。俺には、何となく分かるんだ。だが。」 

 オズワルドが、

「メリーウェザーに協力者が、いなかったか?最低男のオズワルドが同じようなことしていなかったか?」

 二人は、頭の中の知識をほじくり返した。

「あ!」

 同時に叫んで駆け出した。駆けながら、“あれ!犠牲になるとしても、アランとセイだし、私達がやったんでないから、成功しても、しなくても、…失敗して実行犯が、捕まっても、私達が罪に問われることはないから…、頑張る必要がある?…、ええい、付き合いよ~、ここまで来たら!”

「おい!衛兵!一緒に来い!一大事だ!」

 オズワルドは、すれちがった衛兵二人を呼び止めて同行するように命じた。王子の命令である、彼らは黙って従ってついてくる。階段を駆け上がった。階段は急に細くなった。

「もう直ぐだ!」

 天井裏にある、下の大広間を見渡せる小窓のある部屋。そこには

何人かの見張りがいるはずのとこらである。

「鍵が、かかっております。」

「オズワルド殿下のおなりだ!ドアを開けろ!」

 衛兵が怒鳴るが、反応はない。

「蹴破るわよ!」

「お?おう!」

 メリーウェザーとオズワルドが、渾身の力で同時にドアを蹴った。なんと、ドアが蹴破られた。衛兵二人は呆然とした。それに構わず、二人は部屋に飛び込んだ。薄暗い部屋の中には、立っている男が一人、足下に倒れている二人が見えた。

「ち。邪魔者が入ったか。」

 男は、呟くと詠唱を唱え、杖をメリーウェザーに向けた。光の玉がメリーを直撃した。

 

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