第19話 ヒロインの結婚式
「セイ…、いえ、王太子妃様。お幸せに。」
「ありがとうございます。でも、何時までも、私にとってはメリーウェザーお姉様です。」
そう言いながら、目から涙を溢れさせ、メリーウェザーの手を掴むセイは、やはりヒロインだと、メリーは、あらためて納得感した。セイと王太子アランの結婚式は、メリーウェザー達の結婚式の四カ月後、盛大に行われた。歴代で見れば、どちらかというと質素ではあったが、そこは次代の国王になる人物の結婚式である、盛大でなければならない。
ニコニコしながら、メリーウェザーとオズワルドは参列していたが、何かが起こらないようにとハラハラしていた。
「あの様な卑しい血筋の女が王家に入るなどとは、ご不満では、ありませんか?」
「エバンズ嬢こそ、相応しかったのに!」
わざわざ領地に視察に出ていた2人を追いかけるようにやって来て、訪問し、そんなことを言い立てる貴族の夫人達が相次いだのでメールはうんざりした。オズワルドの方には、もっときな臭い話を持ってくる男達が相次いでいた。卑しい女を妻にしたアランは次期国王として相応しくない、アランとセイの子供は国王にふさわしくはない、相応しいのはオズワルドだ、オズワルドの子供だといっても来たのだ。
二人は、
「セイは私の自慢の妹です。」
「アラン様に忠義をつくすことが我が勤め、それ以外は考えていません。母からも、常にそう言われております。」
と二人は決まり文句のように繰り返しても、聞き流していた。オズワルドの母エカテリーナ貴妃には逐一連絡していたし、エリザベス王妃の密偵となっている、彼の使用人か家臣から彼女の元に情報が言っているはずだった。それも、オズワルドは見越していたが。
「ゆっくり領内を見てられないわ。」
メリーウェザーとオズワルドの領地を交互に赴いていた。以前からメリーウェザーはエバンズ家から結婚前の分与として小さな領地を与えられていた。魔法学院卒業後の1年間は半分以上過ごしていた。オズワルドも、卒業後王家から小さな領地を分与され、彼も卒業後は軍務の傍ら、頻繁にそこで過ごしていた。二人の生活費は、結婚後は王室からでるのであるが、領地からの収入は別会計、へそくり、特別な小遣い源といったところか。大抵、管理人を定めて、それに任せっきりにして、収入だけをという場合が多いが、メリーウェザーもオズワルドも自らが見ていた。
メリーウェザーは経営に熱心な父親の影響だといわれているが、変わっているということの説明だが、失脚した時のための、という目的もあった。評判は悪くはなかったが。さらに、エバンズ家からは、二人の共有地として、小さな領地が、与えられたので、そこへの顔見せというかも行っていた。本当はもっと大きな領地になるはずだったが、結婚相手がアラン王太子ではなく、養女であり、アート家からもださせるとは言っても、エバンズ家の娘がアラン王太子と共有の領地を持参しないというわけにはいかず、二つ与えなければならない、王太子との差をつけなければならないということで小さくなってしまった。二人とも、浪費家ではなかったし、見栄は全くなかったので、問題ではなかった。そのせいもあり、領主としての評判は、上々だった、現場に、かつ負担をかけず赴くということもあって。領内の、上は有力者、教会、下は生活困窮者からの訴え、要望、これからしなければならない施策などて忙しかった、不在時管理もまかす家令達の補佐があったものの。イチャイチャベタベタしながらだったが。さらに、オズワルドの軍務に、メリーウェザーが同行することもあった。軍務と言っても、本格的な戦争という状況はなく、示威的な、訓練も兼ねたものであり、王子であるから、あまり問題視もされなかった。かえって、軍装で、お付きは侍女一人の他は、護衛の男女の騎士二人で、兵士への差しいれは持ってきたが、自分達は荷車一杯のご馳走ではなく、基本的には軍務の糧食で過ごしていたので、まあまあ好評だった。オズワルドにくっついていたい、メリーウェザーと離れたくないということももあったが、二人を利用しようとする連中から離れるためでもあった。それは、ある程度成功した。そうこうするうちに、アラン王太子とセイの結婚式を迎えたわけである。
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