第18話 今後のことを考えよう。

 ほとんど昼食と同じ朝食を、広い食堂でとっている二人に、執事が明日からの予定を説明した。国王、王妃、貴妃、エバンズ家への挨拶から始まって、しばらくは目白押しだった、予定が。

「というところです。今日のところは、ゆっくり休息なさるようお願い致します。」

 中年の執事が言い終わると、侍女達が、クスクスと声を殺して笑っていた。それをちらっと執事が睨むと、彼女達はあらぬ方向に顔をそむけた。

「分かったよ。その後、数日は領地を視察したい。手配をしてくれ。もちろん、妻と一緒だ。」 

 紅茶のおかわりを命じながら、執事に命じた。“当面の話を午後にしないとな。”

 二人は、最後の紅茶を飲み終わると、二人の部屋に行くと言った。

「これからのことを、二人っきりで相談する。呼ぶまで来るな。」

 そう言った彼の耳元で、メリー付きの侍女が、耳元で、

「あまり、頑張られないように、お嬢…、いえ奥様。」

 メリーウェザーの耳元では、オズワルドが連れて来た侍女が耳元で、

「昼間は、慎みをお忘すれないように。」

と。

「もう、彼女達、何を考えているのかしら?」

 部屋に、入るやいなや、彼女は不平そうに言った。

「まあ、そんなことは大したことではないから、座って今後のことを考えよう。」

 デ~ンとソファに座ったメリーは、隣に、と示すように視線を送った。苦笑しながら、オズワルドが座ると、体を預けてきた。

「それで、まず、当面のことは?」

「アランとセイの結婚式が滞りなく終わって、二人が正式に王太子夫妻になることだ。」

 二人の結婚式は2カ月後である。国を挙げての準備が進んでいるところである。“もう、終わったことではありませんの?”と思い、訝しげに“兄”の顔を見ながら考えてみた。“ああ、ヒロインの結婚式に、嫉妬に狂ったメリーウェザーは陰謀を策動するというのもあったわ。ヒロインと王太子の結婚決定直後に完全に破滅、メリーウェザーが、していなかった場合よね。あ、オズワルドも策謀に加わっているわね。”

「私が死罪になっていないから、セイの結婚式に策謀をというコースがあるかもというわけですのね?でも、現実の私はそんなことをする積もりは全くないし。あなた」

 “きゃー、恥ずかしい。”と真っ赤になって、小さい咳払いをしてから

「あなたも策謀なんてするつもりはないでしょう?」

「ああ、妻にゾッコンでそれどころじゃないしね。」

“きゃー、そんな、本当のことを~。”とまた真っ赤になってしまった。

「誰か、他の人間が、と言うわけ?」

 どうでもいい、と思ったが、それに巻き込まれる、逃げおおせたヒロインから、まとめて復讐されるかもしれない。

「嫉妬に狂ったメリーウェザーが二人の結婚式に乱入、その場で斬殺、あるいは取り押さえられて、後で処刑というのがあったわね。あと、毒殺しようというのもあったわね。誹謗中傷して結婚式を潰そうともしたわね。結局、幽閉だったり処刑だったり。」

 どれも散々な結果である。

「いや、結婚式が上手く潰れるというのもあったよ。失意のセイは、勇者になったり、勇者とともに戦う聖女になったり。どれもこれも、現状では、ありそうもないな。」

「じゃあ、勇者が出てくるまでは、心配ごとはないんじゃない?」

「そうなんだが。ヒロインへのいじめは、メリーウェザーがしなくてもあったろう。」

 成り上がりの家柄で、美人で、性格がよく、成績優秀なヒロインへの当然あり得ることだが、何度もあった。それを途中で助けるのがメリーウェザーであったとしても、ゲームのシナリオ通り展開されている。彼女に、アランとの密会を見つかるのも、オズワルドとの縁談が進むのも、同様だった。

「私達は関係しなくても、陰謀は、あり得るというわけね。でも、誰が?」

 怪しい連中を、考えてみた。

「怪しい連中なんか、わんさといるからな、考えると。」

 オズワルドは、彼女の考えを読んだかのように、結論を言った。

「とにかく、まずは陰謀に巻き込まれないことと、次は陰謀を潰す側にまわることだ。」

「だから、王都を離れるために、領地の視察に出ると言ったわけね。私は、二人っきりに…だと思ったんですけどね。」

 わざとすねたような表情を見せた。

「まあ、両方なんだけどな。」

 今度は、オズワルドは、顔を赤くして弁明した。



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