第17話 今度は離しませんわよ…オズワルド…お

「この臭い、懐かしいよ~。」

 そう言って抱きついてきたメリーウェザーに、

「何言っているんだよ。別人の、他人で転生しているだぞ。臭いなんて、全く別物だろ。」

と出てきそうな言葉を、オズワルドは呑み込んだ。自分も同様な気持ちで、彼女の臭いを吸い込んでいたからであり、彼女の気持ちを傷つけたくないと思ったからからである。言葉の代わりに、強く抱き締め返した。

 そして、少し体を離して互いの顔を見つめ合い、そのうちどちらからともなく、唇を重ねた。互いの舌が入り込むのを許し、絡ませ合い、さらに唇を強く押しつけ合い、混ざり合った唾液を喉に流し込んだ。長い口づけが一旦終わってから、

「お兄ちゃんのファーストキスじゃないのが、悔しいよ~。」

と拗ねたように言った。

「お前だって、アランとしただろう?」

「あれは挨拶、軽く重ねただけだから、ノーカンだよ~。」

 ディープキスではないが、うっとりとして、唇を重ねていたアランとメリーウェザーを見かけたことがあるが、指摘するのはやめておいた。

「本格的なのは、今が始めてだから、許してくれ。」

「仕方ないわね~。寛~大な心で許してあげるよ、今回だけは。」

 分かってはいたが、メリーウェザーは駄々を捏ねたい気分だったのだ。また、長~いディープキスが、始まった。

 唇を離すと、メリーウェザーは腰砕けになって、崩れ落ちそうかけて、オズワルドが強く抱きかかえた。感じ過ぎたのだ。

「足に力が入らなくなりましたわ。」

 いつもの口調に戻った。彼の背中に腕を回しながら、

「歩けそうもありませんわ。ベッドまで行かないと、初夜が迎えられないというのに、どうしましょう?」

 冗談ぽく言いつつも、目はすっかり潤んでいた。オズワルドも、心臓の鼓動が今までにないくらい高まり、興奮を止められなくなっている自分を感じていた。

「では、ベッドまで、ご令嬢を抱きかかえて、お連れするか?」

 そう言うと、直ぐに彼女をお姫様抱っこしようとした。メリーウェザーも、抱かれやすいように体を動かす。小柄ではないというより、女性としては平均よりやや大きい方であるから、“う、お、重い…ぞ!”と思ったが、口には出さなかった。出すべきではない、理由は二つあったが。何とか、抱き上げてベッドまで歩き始めた。ベッドまでの数Mがとてつもなく長く感じられた。“お兄ちゃん!頑張って!”何とか、オズワルドはメリーウェザーをベッドの上に、優しく横たえることができた。

 オズワルドがメリーウェザーの顔を覗き込むと、小さく、顔を赤らめて頷いた。それを合図に、彼は彼女の夜服を脱がせにかかった。指が震える。“緊張しているな。”“お兄ちゃんたら、指が震えてる。”

「綺麗だよ。」

 窓から差し込む月の光の中で、一糸まとわぬ彼女の体を見ながら、興奮で声が震えた。

「恥ずかしい…。」

 彼女の声も震えた。彼も夜着を脱ぐ。“何もかも調和が取れている。胸は大きいけど、大き過ぎない。ウエストもくびれていて、お尻も安産型ではあるけど、キュートで大きすぎることはない。“お兄ちゃんが穴の空く程、私の体見つめている。恥ずかしいよ~!”

 そして、彼は彼女の体に覆いかぶさり、まず、胸を味わい始め、彼女は気持ち良さそうな声を上げた。

「お二人とも、まだお起きにならないでしょうね。」

「もうしばらく、そっとしておきましょう。明け方近くになっても、まだ、お励みになられていたようですから。」

「派手なお声でしたわね、メリーウェザー様は。あれでは…、オズワルド様が心配ですわ。」

「オズワルド様が…と思いますが。メリーウェザー様も、これから大変かと。美しい女は大変ですわ、相手がお若い…」

 それぞれが、実家から連れて来たというか、ついてきた侍女達は、主人の寝室の前で睨み合った。二人とも目が真っ赤であった。そのうち、二人は溜息をつき、

「まあ、仲の良いことはこの上なく、良いことですから。」

「そうですわ。お子様の御誕生も、早いかもしれませんわね、この分なら。」

 ニッコリと微笑みあって、鉾を納めた。これから、彼女らも一蓮托生なのだから、いがみ合っていても仕方がないと思ったからである。その時、

「あら?」

「また?」

 喘ぎ声が聞こえてきたので、慌ててドアのところで聴き耳をたてた、ともに息を殺して。

 その後も、ベットの上でイチャイチャしながら、二人は中々起き出せなかった。

「もう、どうして私に気がつかなかったのよ~。」

「人のこと言えないだろう。それに、全く別人になっているんだから。」

「う~ん。でも、今でははっきり分かるし、確信出来るの。どうしてかしら?」

「俺もだよ。何故か、分かるんだ。だから、もう離したくない!」

「私だって!」

 そのまま、また、唇が重ねられた。結局、二人が起き出したのは、昼近くになってからだった。

 二人が起き出した、ベットは、シーツが、くしゃくしゃとなり、盛大に血で汚れていた。

「痛くないか?」

「う~ん?やっぱり愛している相手だと、そんなこと感じないのかもしれない。」

 二人の目の周囲には、くっきりと隈が出来ていた。



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