第11話 え?これで破滅から回避ではないと?

「まあ、これで破滅の運命は回避されたということよね。万々歳、めでたしめでたし、かしら?」

 顔を上げて呟いたが、オズワルドが深刻な表情でいるのに気が付いた。

「まだ、何かあるというの?」

「ああ、あるさ。あのゲームはさ、恋愛成就で、終わらないだろう?」

「え?あ、!」

“思い出した!”

 男女ともに楽しめる、女の子は恋愛脳!という差別的な感覚から解放すると詠たっているゲームだった。勇者編もあった。それが、この後に続くというか連動していたのだ。そのことを思い出した。

「は~。」

 思わず溜息が出てしまった。

「まあ、お互い、もう、生き残るルートでは最悪に近い破滅をしてはいるけどな。」

「はあ?」

「本来なら、身分が高くて美人だが、わがままで傲慢で人を踏みにじる悪役令嬢と王子というだけで最低、最悪な、卑劣な悪役王子が結婚するんだから、どちらにしてもハッピーエンドではないだろう?」

 メリーは頬を膨らませて、

「ひどい言い方ね。そんな悪役令嬢にならないように努力したつもりよ。」

 オズワルドは微笑みながら、

「だから、本来はと言ったろう。アランも、セイにも好かれていたしね。俺としても、破滅だけど実際は破滅ではないと思っているよ。」

“こいつは~。”一応褒められたので、悪い気はしなかった。

「あんたこそ、セイもアラン様もいい人だと言っていたわよ。ゲームの、本来のあなたとは全く違うことは認めでもあげるわ。」

 あらためて、彼の顔をよくみた。アランのような女の心を蕩けさせる甘いマスク、声、物腰は持ち合わせていないが、決して悪いマスクではない。真面目そうな、武骨な勘定が強い。取り巻きとともに悪事を働いているという噂はないし、ひがみからアランを憎んでいる態度は見たことはなく、臣下のような態度でアランに接しつつ、兄として弟を守る態度で接していたように見えた。彼女が見た限りでは、学校内での行動も、王宮内での行動も文句をつけられるようなものではなかった。それでも、つい口に出してしまった。

「いざとなったら、ヒロインに、セイに、アラン様を差し出すつもりではいたけど、とても気に入っていたのよね。アラン様好みになれるようにも努力したし、セイとの接触もなかったから、もう結婚する気になっていたんだけどね。」

「まあ、同情するよ。さっきも言ったか。お互い未練たらたらだな。それはさておいてだ、あんたが、本来のキャラとは随分異なっているというのは、ずっと前から感じていたからね。アランだって、決して嫌ってなんかいなかった、いや、好きだったと思うよ。ただ、ヒロインにはやはり勝てなかったというところかな。」

「繰り返さないでよ!大きなお世話よ。」

 分かってはいるが、他人に言われると“不愉快だわ。”

「まあ、最悪の場合を考えて、力で身を守る、一人で生きられるように準備をしていたけどね。」

 それを聞いて、納得したという顔になったオズワルドは、

「だから、軍人コースに、何度も短期で参加したり、領地管理を学ぶと言って領地や事業者をまわっていたのか?」

“そんなに努力したのにな。”と同情するような表情を見せたオズワルドに腹がたったが、何とか堪えて、

「それで、私にはこれからどんな破滅の運命が待っているのよ?」

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