第6話 惜しいけど背に腹はかえられない
「メリーウェザー様は、お優しいから。」
溜息をつきながら、明るい茶髪のドミニクが、弟のクラバットを睨みつけた。
「どうして、気がつかなかったの?アラン様の身近にいたんでしょ?」
「そんなこと言われても…。」
その時、助け船が入った。
「まあ、彼を責めないでほしいね。私も二人が愛を育んでいたのに、気がつかなかったのだから。」
オズワルドが口を挟んだ。
「オズワルド様がしっかりと、セイを掴んでいたら、こんなことにならなかったんじゃありませんか?責任がないかのように言わないでほしいですわ。」
メリーウェザーが、たまりかねたように突っかかってきた。その彼女の方に向き直り、
「同じ言葉を返したいがね、私としては。」
メリーは、プイと横を向いた。“分かっているわよ。”卒業後もアランには気を配り、その行動を出来るだけ気を配っていた、つもりだった。それが、とまだ文句を言いたくなる自分を抑えられなかった。
「オズワルド様は、鈍感なところがありますからね。」
オズワルド側の友人の紅一点の女騎士のカタリナが、からかうように言った。
「そうですよ、カタリナに対するのと同じように扱ったからじゃないですか?」
「なんだとサンスルリ!」
「まあ、君らが争うな。まあ、未練がないわけではないし、残念だが、私も恋する二人を邪魔する野暮にはなりたくないからな。」
そして、小さな声で、“背に腹はかえられない。”と呟いた。しかし、メリーウェザーの耳にだけには届いた。
「?」
「それで、全て、説得出来た訳なんですね。」
その場の雰囲気を変えようと、オズワルドの一番の友人のグランパが声をあげた。
「後に回した、アート家、エバンズ家は、比較的簡単に説得出来たよ。」
「まあ、王妃様も貴妃様も納得されてしまっていては、なにおか言わんやですわね。母上はかなり怒ったけど。」
アート男爵は、驚いたし、彼はオズワルドの人となりを評価してのことだったから、彼は利害だけのために娘を売るほど冷血漢ではなかったから、娘の不祥事と言えることを最良の方法で解決してもらったわけだから、あまり文句を言える立場ではなかった。メリーウェザーの母親は、かなり怒った。アラン王子に向かって、
「娘を、メリーウェザーをなんだと思っているのですか!しかも、アート男爵家の娘なんかと!」
と声を荒げて迫ったくらいだ。夫のエバンズ公爵が止めなかったら、何を言い出したか分からなかった。娘が可愛いからのことで、落ち着いてからは、セイへの態度も優しくなった。成り上がりながらも、裕福でやり手のアート家が自分の傘下に入ること、娘は一応はまともな王子の正室に入ることでもあり、養女とはいえ、将来の国王の外戚になるわけであるから、さらに王妃と貴妃から頼まれては受け入れざるを得なかった。
難関は、アランの母親である王妃とオズワルドの母親である貴妃の説得だった。
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