第4話 母親が怖いのが悪いか?

「なんでよ?もう、みんな同意したでしょう?この期に及んで、まだ、セイに未練があるの?」

 意地悪そうな顔を、わざとしながらメリーウェザーは、オズワルドを覗き込んだ。

「未練はあるが、そういうことではない。」

 少しうんざりしたという彼に、すかさず彼女は、

「じゃあ何よ?」

「さっきも言ったとおり、家やら色々しがらみがある。少なくとも、アート家、エバンズ家、そして俺の母上、そして王妃様の了解が必要だろう?」

 その言葉に、メリーウェザーら3人は頷かざるを得なかった。

「分かったわ。明日、直ぐに両親に言いますわ。」

「いや、それだとどこまで本当なのか信じてもらえないだろう。私達4人がそろった上で、説明して、お願いしなければならないだろう。」

「じゃあ、どの順番で?」

“こいつ、頭の回転は早いな。”

「外堀から埋めていくか、内堀から埋めていくか?」

 唸るオズワルドにセイが、

「内堀が王妃様達、一番の外堀がアート家ですか?どちらからが、礼儀にかなっているかということで悩んでいるのですか?」

と解説を入れた。

「私の両親は、多分、エバンズ様、王妃様方のことを考えて、同意も何も出来ないと思います。」

「セイの言うとおりですわ。一番上が同意してくれないと、何ごとも進みませんわ。」

 メリーウェザーは、大きく首を縦に振った。

「そうだな。」

 困った、という顔だった。

「なによ、自分の母親が怖いのかしら?」

 悪戯っぽく笑う彼女から、顔を背けて、彼はアランの方を見た。アランはというと、やはり困ったという表情だった。オズワルドは、また、メリーウェザーの方を向いて、

「怖いよ。それが悪いか?」

 開き直るように、間が空いたが言い返した。

「それで、どうするのよ?」

 胸を張って、詰め寄った。

「分かった。内堀からだ。アラン様。この足で、王妃様からお話しに行きましょう。」

 アランの方に向き直り、跪いて言った。

「貴妃からの方が良くはありませんか?」

「お恐れながら、今回のことはアラン様が発端のことですから。」

 申し訳ないというような感じのオズワルドに、王太子のアランは、意を決したように、

「兄上の言われるとおりですね。母上、王妃様から説得しましょう。」

「我が母の方から頭を下げ、王妃様のところに伺わせることにいたしますから。」

「そうしていただければ。ともに頑張りましょう。」

“何よ。二人とも、そんなに自分の母横が、怖いの?どういうこと?マザコン、二人とも?”王妃と貴妃には何度か会っている。どちらも、聡明そうな美人であり、気の強そうな感じはあるが、優しい言葉しか聞いたことはない。

「とりあえず、王宮に。作戦は私の馬車のなかで。」

 オズワルドが皆をせき立てると、アランとセイは手を握って、歩き始めた。その後をオズワルドとメリーウェザーが。馬車の場所を指示しながら、

「これで本当に良かったのか、婚約者を譲って?」

「あんたこそ、妻になるはずの女性を譲って、満足ですの?」

 すると、オズワルドが急に、諦め顔で、

「破滅するよりいいからな。」

と呟いたので、それに合わせてメリーも、ついそれに釣られて、

「こうしないと私が破滅してしまうからよ。」

と呟いた。

「え?」

 二人は驚いて、互いの顔を見た。

「今?」

「何か言いました?」

「いや、何も。」

「私も何も。」


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