2-7
しばらくすると外が暗くなっていた。森口先輩が腕時計をちらりと見ると優しく告げた。
「今日はこれくらいにしてミーティングしましょうか」
「そうだね」
瀬那先輩がヘッドセットを外した。俺は手を止めて尋ねる。
「ミーティング?」
「と言ってもお話するだけなんだけどね。ほら、私達ってやってるゲームがバラバラじゃない? 部活中は一人一人画面を見てるだけでしょ。それじゃあ家でやってるのと変わらないからってことで色々報告するの。これの練習付き合って下さいとか」
「へえ」
「案外練習相手がいないのよ。オンラインでならいるけどやっぱり融通が利かないでしょ。で、大会とかが近いと対策を手伝ってあげたりするの。まあ、基本的に殊能君の取り合いなんだけど。彼、なんでもできるから」
俺が視線を向けると瀬那先輩はニコリと笑った。
「好きだからね、ゲーム。格ゲーも一通りできるよ」
「ていうかあたしより上手いですしね……」
「年季が入ってるだけだよ。すぐに追い抜かれるって」
「だといいですけど……」
桜嵐は複雑そうに苦笑した。どうやらこの部室での最強は瀬那先輩らしい。
「あ、じゃあ俺が舞姫とやる前に頼んでいいっすか?」
「うん。いいけど。まずは基本ができないとね。格ゲーって覚えること多いし。でもどうしよっか。これから大会が増えてくる時期なんだよね。特に十一月、十二月はすごいよ」
桜嵐が頷く。
「世界大会ばかりですもんねぇ。まあほとんどがプロの大会ですけど」
「やっぱり鑑賞会する? 時間がある人だけでも」
森口先輩が瀬那先輩に尋ねる。
「う~ん。僕は見るよりやる方が好きだからなぁ」
「あら、私は見るのも好きだわ。桜嵐ちゃんは?」
「あたしも最近は見る方が好きかも。楽だし」
俺は首を傾げた。
「ゲームなんて見てなにが楽しいんだ? やってこそじゃね?」
桜嵐はわざとらしく肩をすくめる。
「……いいわよね。初心者は気楽で。ある意味一番楽しい時だもんね」
「なんだよそれ?」
「そのうち分かるわよ」
やれやれといった様子の桜嵐に俺は意味が分からず眉をひそめた。
それからいくつか話をしてから俺達は帰路についた。
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