2-6
先輩二人はそれぞれのゲームで戦っている。
ちらっと覗いてみたが森口先輩の画面はほとんど動きがなく、たまにカードがぺらっと出るだけ。モンスターが現われたりはしているが、考える時間が多くを占めてる。
瀬那先輩の方が走って敵を見つけて銃を撃つ。これをひたすら、それもハイペースで繰り返しているだけだった。ヘッドセットをつけているが、ニコニコしているだけであまり話さない。それでもほとんど死なずに撃ち勝ってるんだから相当上手いんだろう。
なにをやってるかは分かるが、それがどういった意志で行われているかはさっぱりだ。
桜嵐は俺の隣でアルカディアを起動させ、ランクマッチと呼ばれるネット対戦を繰り返していた。
ランクマッチは文字通りランクを競うモードで勝てばポイントが貯まり、負ければ失う。
アルカディアは十級から一級の級位とその上に初段から十段までの段位がある。
桜嵐曰く段位に上がれば中級者、五段から上は上級者らしい。
プロともなると八段あたりに位置するそうだ。
桜嵐は今二段と三段をうろうろしているらしい。上級者まであと一歩ってとこだ。
「そう言えば舞姫って何段なんだ?」
俺の問いに桜嵐は眉をぴくりと動かし、画面を見たまま口を動かす。
「知らないわよ。でもまあ、四段以上はあるんじゃない?」
どうやらこいつに舞姫はNGワードらしい。言ったら機嫌が悪くなる。
俺は桜嵐の言われた通りに練習を続けた。三回に二回は技が出るようになった。一つ出せるとコツを覚えてそれを他にも活かせる。要はリズムとタイミングが大事らしい。
聞かれたくないらしいが、桜嵐の口振りは舞姫と戦った過去があることを物語っていた。
「負けたのか?」
今度は俺が画面を見たまま言う。桜嵐は苛立ちを隠さず俺を一瞥した。
「うっさいわね。三先だし、キャラは不利だし、寝不足で調子悪かったし。とにかくあんなのは負けの内に入らないわ」
どうやら本当に負けたらしい。桜嵐は悔しそうに歯がみする。
「なのにあの女ぁ……。あなたの腕は全て分かったからこれ以上やる必要はないわ、ですってぇ……! 有利キャラで押しつけてるだけなのになんであんなに偉そうなのよ!」
桜嵐の恨み辛みを聞いてると分からない単語も多いが、ただ一つだけ分かったことがあった。
「じゃあ、舞姫は強いんだな?」
桜嵐はむっとして口を尖らした。
「……まあ、そうよ。でないとあたしが負けるわけないでしょ」
「そっか……。うん。それが分かればいいや」
それさえ分かったなら、俺はどんなにつまらないことも楽しくやってられる。
その後黙々と技を出す俺を時折桜嵐がちらちらと見ていた。
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