1-3
放課後。相生がサッカー部に出勤すると俺はスマホでアルカディアを検索した。
「お。ゲーセンでやれんじゃん。ちょっくら行ってくるか」
どうやら駅前のゲーセンで稼働しているらしく、俺は学校を出ると長い下り坂をゆるゆると下り、駅前のゲーセンへと辿り着いた。
ゲーセンなんていつ振りだっけ? ガキの時はコインゲームとかやってたけど。
中に入ると四方八方からゲーム音がやってくる。
それは混ざり合い、一つになって歪なBGMを形成していた。
見渡してみるが格ゲーっぽい筐体は見つからない。
案内板を見ると一階はUFOキャッチャーや家族向けのゲーム。二階はメダルゲーム。そして三階に目当ての対戦ゲームコーナーが配置されていた。
階段を登っていくと階ごとに空気が違うことを肌で感じた。
一階は楽しげで明るい雰囲気。二階はのんびりとしている。
だが三階は下の二つとは大きく違った。
プレイヤーの目が真剣だった。
UFOキャッチャーで遊ぶ女子高生のワクワクした目やコインゲームをやるおばちゃんのだるそうな目と比べ、対戦ゲームに打ち込むプレイヤーは遙かに高い集中力で画面を凝視し、忙しく手を動かしている。
戦場。
大袈裟だけどそんな言葉が脳裏に浮んだ。プレイヤーのほとんどが男ってことも関係してるのかもしれない。
楽しげに話している人達もいるけど、やはりどこかぴりぴりしている。
アルカディアの筐体はすぐに見つかった。一番数が多く、ずらっと二列背中合わせで伸びている。半分以上が埋まっていて、プレイヤーが黙々とレバーをガチャガチャしていた。
とりあえず座ってみる。すると金を入れろと催促された。
一プレイ百円か。ハンバーガーが食えるな。三回やればいくらか足して牛丼が食える。
金に余裕があるわけじゃない俺にとって、百円は安くなかった。
でもこのままじゃ舞姫にリベンジできない。俺は財布を開けて銀色の硬貨を取り出すと、それを筐体に入れた。
「へえ。今の格ゲーってこうなってるんだ……」
画面を見て俺は少し驚いた。
アルカディアには二つのモードがあった。
一つはアーケードモード。つまりはCPU戦をしながら対戦相手を待つモード。
もう一つはトレーニングモード。要は練習ができるモードだ。
初心者の俺はトレーニングモードを選び、主人公っぽい男のキャラをチョイスした。
最強を目指し、強敵との戦いの為に旅をする男臭いキャラだ。
名前はアユム。スポーツ刈りに胴着姿。その上筋骨隆々で格好いい。
「えっと……。技は……これか」
俺は右手の下にある六つのボタンを確認した。一つずつ押してみると違う技が出てくる。
ボタンは横一列が三ボタンで、それが縦に二列。押した感じ、右に行くほど威力が高く、隙が大きい。上はPボタン。つまりはパンチ。下はKボタン。つまりキックだ。
一通り押してみたが、デモ映像で見た格好いい必殺技は出ない。
そうこうしている内に制限時間の十分はどんどんなくなっていく。
百円がもったないので隣の席でトレーニングモードをしている小太りの男に尋ねた。
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