第4話 過去 前編

 アタシの初めてはお父さんでした。

 なんて、こんな言い方をすると、アタシの初体験の相手がお父さんだったみたいに聞こえるかな? もちろん違います。でも、ある意味では合っているかもしれません。

 初めて。そう、アタシが初めて――たのはお父さんでした。

 あの日のことを、今でもよく覚えています。とても残酷で、醜悪だったけれど、何よりも幸福だったあの日のことを。

 見えた色、聞いた音、嗅いだ匂い、触れた感触、感じた思い。あの日の全てを、いつだって鮮明に思い出すことが出来る。


 その日は、少女にとってなんら変わらない日常だった。学校に行って、友達と喋って、授業を受けて、少し遊んで家に帰る。そんな何気ない日常になるはずだった。

「ただいま!」

 いつもであれば、家に帰っても誰もいない。だがその日は違っていた。母親の仕事が休みであるため、家にいることを知っていたのだ。家に着くなり急いで靴を脱ぎ、駆け足でリビングへと向かった。少女はすぐにでも、母親に見せたいものがあったから。

 リビングに入ると、キッチンのところに母親がいた。テレビを点けながら夕飯の支度をしていたためか、まだ少女には気付いていないようだった。

「お母さん、ただいま!」

 きっと、笑顔で出迎えてくれる。そう思ったのだが、母親は少女を見るなり青ざめて、引き攣った顔をした。そして、怯えるようにゆっくりと近付いて少女に尋ねた。

「……あなたが持っている、……それは何?」

 嬉しかった。本当は、おかえりと先に言って欲しかったが、別に構わなかった。すぐにでも見せたいと思っていたものに、母親が興味を抱いてくれたのだから。

 だが不思議だった。何故なら少女が手に持っていたものは、いちいち人に説明する必要のないものであったからだ。それでも、母親に聞かれたことを少女はすぐに答えた。

「何って、猫だよ⁉ 帰り道で見つけて懐いてきたんだ。可愛いでしょ!」

 少女が手に持っていたのは、生後二か月ほどの黒い子猫だった。親猫とはぐれたのか、心細そうに鳴いているところをたまたま見つけた。親猫を探したが見つからず、離れようとしてくれなかったため、連れて帰ることにしたのだ。

 前にも捨て犬を拾って来たことがあったのだが、戻して来いと言われてしまい、飼うことが出来なかった。その時は言われた通りにしたが、今回はちゃんと説得するつもりでいた。それに、こんなにも可愛いのだから、きっと飼うことを許してくれるはずと、少女はそう思っていた。

 だから、もっとよく見てもらおうと、手に持っていた子猫を母親に近付けた。すると、母親は小さく悲鳴を上げ、少女の手を思い切り叩いた。その衝撃で子猫は放り出され、床に落ちてしまった。けれども、子猫は暴れたり逃げ出したりする様子もなく、ただじっと転がったままだった。

「ひどいよお母さん! この子が可哀想だよ」

「……ひどいって、その猫はもう……」

 怯えた母親を横目に、少女は子猫のもとへ駆け寄り優しく抱きかかえた。念のため、どこも変わりないかを確認したが、問題はなかった。

 明後日の方向に曲がった首も。口から出たままの小さな舌も。冷たく固まった身体も。何も変わりはなかった。

 それじゃあまるで、死んでいるみたいじゃないかって? そういえば、まだ言っていなかった。この子猫が、もうとっくに死んでいることを。当然だが、落とした時に死んだわけではない。家に連れて来る前から死んでいた。いや違う。この子猫を殺したのは……。

「……そ、それは、あなたが……殺したの?」

「うん、そうだよ。この子ね、アタシにすごく懐いてきたの。だから飼ってあげようと思ったんだけど、お母さん、動物は飼っちゃダメだって言ってたから。エサ代がかかるし、鳴き声とかが迷惑になるからだって……」

 そう、子猫を殺したのは他でもない少女自身であった。そのことを微塵も隠そうとせずに、少女は淡々と言葉を続けた。

「だから殺したの! だってこうすれば、エサも食べないし、鳴いたりもしない。誰にも迷惑かけないよ? ねえ、だからお願い。この子飼ってもいいでしょ? アタシ、大切にするから!」

 何度も何度も、食い入るようにお願いした。しかし、母親は少女の言葉を無視して、床にへたり込んでしまった。そして、笑っているとも泣いているともいえない顔で呻き出した。何を言っても答えてくれず、非言語的な音が響くばかりだった。だから少女は待つことにした。母親が自分の話を聞いてくれることを。

 しばらくの間、耳障りに喚く声が続いたが、事切れるようにピタリと止んだ。ようやく話を聞いてくれるのかと思い、少女は母親を見た。だが、母親の瞳は何も見てはいなかった。

 ……今、目の前にいるのはアタシだけだよ。アタシだけが見えているはずだよ。なのにどうして、どうしてそんなに遠くばかりを見つめるの?

 そんな思いをよそに、母親は少女に言い付けた。

「……きなさい。捨てて来なさい。……早く……捨てて来なさい」

「でもお母さ……」

「捨てて来いって言ってるでしょっ‼」

 遠くを見つめたまま、怒号だけをぶつけてくる。それはいつものことだった。驚きはしなかったが、やはり悲しかった。子猫を飼えなかったことも、母親に怒られたことも、母親が自分を見てくれなかったことも。

 母親の瞳に少女は映っていなかった。母親の心に少女はいなかった。気付いていたが、気付かないふりをした。そうしないと少女は、今ある全てをきっと壊してしまうと思ったから。

 子猫を抱いたまま少女は外に出た。あてもなくひたすらに歩き続けていると、自然と公園に辿り着いた。そういえば、子猫を見つけたのはこの公園だった。だから自然とここに来たのかもしれない。

 少女は公園が好きだった。草や土の匂いを嗅ぎながら思い切り遊び、小さな虫や時々見かける小動物と戯れた。けれど、公園にいる時の少女はいつも一人だった。世界から切り離されたように、静けさだけがそこにあった。

 少女はこの静けさが嫌いではなかったが、今だけはそうあって欲しくなかった。だからなのか、普段はあまり乗らないブランコに少女は乗ることにした。ブランコなら勢いよく漕げば音も出るし、気分が晴れるかもしれないと思ったからだ。

 子猫を膝の上に置き、落ちないようにそっと漕ぎ始める。最初の内は気が紛れるように感じた。けれど、公園内に響くキコキコというか細い音がやたらと切なくて、虚しくなって、漕ぐのを止めた。力を失ったブランコは徐々に動きを緩め、代わりに静寂を連れてきた。

 止まったブランコに腰掛けたまま、何気なく空を見上げる。やたらと青く感じる空は、広くて、高くて、遠かった。そして何より冷たかった。そんな冷たさを誤魔化すように、ひたすら少女は子猫を撫で続けた。温もりの消えた小さな命の抜け殻を、いつまでも撫で続けた。

 気が付くと、あんなにも青かった空は赤黒く染まっていた。かなり時間が経っていたらしく、辺りも薄暗くなってきている。早く帰らないと。そう思ったが、少女にはまだやることがあった。

 少女は公園内を見渡し、目的のものを見つけそこへ向かう。向かった先にあったのは、金網で出来たゴミ箱だった。そしてそこに空き缶でも放るように子猫を投げ入れた。ゴミ箱の中で横たわる子猫を見つめながら、

「バイバイ」

 と、少女は別れの言葉を口にした。

 名残惜しさも、後ろめたさも感じられない。満面の笑みを浮かべながら、少女はそのまま公園を後にした。

 家に帰ると母親の姿はなかった。だが玄関に靴があったため、家にはいるようだった。恐らく寝室だろうと思い、扉をノックする。返事はなかったが、鍵がかかっていることから、中にいることが分かった。それだけ確認して、少女はキッチンへと向かった。

 キッチンには調理途中の食材や器具が、そのままの状態で放置されていた。夕食の支度が終わる前に、母親が部屋に籠ってしまったのだろう。どうやら、今日の夕食はないようだ。ないのであれば仕方が無いと、少女は棚に入っていたインスタント食品で空腹を満すことにした。

 使った容器や調理途中だった夕食の片付けが終わると、完全に手持無沙汰となってしまった。テレビを点けたりもしたが、たいして面白いとも思えなかった。だから少女はお風呂に入り、早々に眠ることにした。

 時計を見るとまだ九時前であった。こんなに早く眠れるだろうか。などと思ったが、少女は自分でも驚くほど簡単に眠りに落ちた。


少女は夢を見た。

 そこには何もなく、誰もいない。そんな世界の中で何かが少女を呼んだ。弱々しくて、今にも事切れてしまいそうな微かな声で少女を呼んだ。

 辺りを見渡すと、公園にあるような金網のゴミ箱がポツンと置いてあった。声はどうやらそこから聞こえてくるようだ。すぐに少女は駆け寄ってゴミ箱の中を見た。

 中にいたのは子猫だった。それは間違いなく少女が捨てた子猫だった。少女が殺した子猫だった。死んだはずのこの子が自分を呼んだのだろうか。そんなはずないと思い、少女が再び声の主を探そうとした時、ゴミ箱の中で横たわっていた子猫が動き出した。

 横たわっていた身体はゆっくりと起き上がり、曲がった首は不快な音を立てながらこちらに向いた。閉じていたはずの両目は力強く開かれ、少女を見据えた。

 ……どうして、ボクを捨てたの?

 先ほど聞いた消えそうな声とは明らかに違う。頭に直接響くような、はっきりとした声だった。しかし、その声が子猫のものだとすぐに分かった。何故ならここには、少女と子猫しかいなかったから。

「近くにゴミ箱があったから」

 悪びれる様子もなく、開き直ったように少女は答えた。知っていたからだ。これは夢だと、自分の夢に嘘をつく必要などないとそう思ったから。

 ……そんな理由なのかい?

「うん、そうだよ。お母さんが捨てて来いって言ったから。そうしないとまた怒られるから。ひょっとして、埋めて欲しかったの? だったらゴメンね。あの時のキミは、今みたいにお話しをしてくれなかったから。言ってくれれば、ちゃんと埋めたよ?」

 母親は、埋めて来いでも戻して来いでもなく、捨てて来いと言ったのだ。何もおかしなことなどしていない。少女はただ、母親の言う通りのことをしただけなのだ。

 ……そうか、キミにとってはそんな違いでしかないんだね。うん、分かったよ。なら別のことを聞くね。

 ……どうして、ボクを殺したの?

「前にね、捨て犬を拾って帰ったことがあったんだ。その時お母さんが、家では動物を飼っちゃいけないって言ったから。だったら、生きてなければ、死んでいればいいのかなって思ったの。だからキミを殺したんだ。結局、飼ってあげられなかったけどね」

 ……それは、本当の理由じゃないね。

「ホントだよ。アタシ、嘘なんてついてないよ」

 ……分かってる。キミは嘘なんてついてないよ。ただキミは気付いていないだけ。キミ自身について。

「どういうこと? アタシは何に気付いていないの?」

 ……キミは、お母さんの言う通りのことをしているだけ。でも、本当はそうじゃない。だってキミのお母さんは、一度だってボクたちを〝殺せ〟なんて言っていないんだから。

「……ボクたち?」

 ……周りを見てごらん?

 その言葉通りに周囲に目をやると、何もなかったはずの空間を、多くの生き物たちが埋め尽くしていた。猫やウサギなどの小動物、昆虫、カエルにトカゲ、あの日飼うことが出来なかった犬もいた。

 ……彼らも、キミに殺された。誰に命令されたわけでもなく、キミ自身が殺したんだ。そう、キミはただ、自分のしたいことをしているだけさ。だからキミは彼らを、ボクを殺した。だってキミは、命なんて何とも思っていないのだから。

「そんなことない。命は大切だよ。だからアタシは」

 ……ボクたちを殺した。

 全ての生き物たちが、叫ぶように鳴き始めた。無形の不協和音が、嵐となって吹き荒れた。しかし、次第にそれは波長を合わせるように形を成していき、意味のある言葉へと変わっていった。

 ……そう、大切だと分かっていながらも、キミは命を奪うんだ。それがキミのしたいことだから。それがキミのすべきことだから。思うがままやればいい。でも決して、キミが許されることはない。キミが認められることはない。

「……うるさい」

 ……倫理や道徳、社会の全てがキミの邪魔をする。誰もそれを受け入れられないから。受け入れてはいけないことだから。

「うるさい!」

 ……だからキミは排除される。

 ……だからキミは淘汰される。

 ……だからキミは拒絶される。

「うるさいっ‼ 黙れぇ‼」

 嵐は止み、生き物たちは姿を消した。再び何もなくなった空間に、少女と子猫だけが残った。今にも倒れそうな身体を必死に支えながら子猫は尋ねた。

 ……また、一人になったね。どうしてだか分かるかい?

「……うるさい。そんなの知らないよ」

 溜息をつくようにゆっくりと眼を閉じた子猫は、その答えを告げた。

 ……それはね、キミがバケモノだからだよ。

 その言葉を最後に、子猫はまた力無く横たわった。


 少女は目を覚ました。

 自分が夢を見ていたことは覚えていたが、どんな夢だったのかは朧気で思い出せなかった。外はまだ暗く、時計を見ると深夜一時を過ぎたくらいだった。早く寝過ぎたせいか、半端な時間に目覚めてしまった。

 もう一度眠る前に、トイレに行こうと廊下へ出る。すると、リビングに明かりが点いており、話声が聞こえてきた。どうやら、父親と母親が何か話をしているようだった。その声は真剣と言うにはあまりにも熱がなく、とても険悪なもののように感じた。

 少女は、普段あまり言葉を交わすことのない両親が、どんなことを話しているのか興味が湧いた。だからこっそりと、扉の隙間から様子を窺うことにした。

 二人は向かい合う位置でテーブルに座っていたが、お互いの顔は見ていなかった。父親は横向きに座りながら、げんなりとした顔でお酒を飲んでいた。一方母親は、やつれた顔で俯きながら何かを話している。

「……ねえ、やっぱりあの子、おかしいと思うの」

「何が?」

「……何がって、あの子のやっていることに決まっているでしょ⁉ 毎日のように、外で生き物を殺してる。それに今日なんて、自分で殺した猫を家に持ってきたのよ? ……しかもそれを、飼っていいかって……飼っていいかって聞いてきたのよ? どうかしてる……普通じゃない」

 話の内容は、少女自身についてだった。しかし当の本人は、話の内容を飲み込めずにいた。おかしい。普通じゃない。そう言われても何がおかしいのか、どこが普通でないのかが理解出来ずにいたからだ。

「アイツがおかしいのなんて、今に始まったことじゃない。それに、家のことやアイツのことは、お前に任せるって言っただろ?」

「私一人でどうにか出来るわけないでしょ⁉ もう無理よ……私には……。あなたもちゃんと考えて……協力してよ。それが出来ないなら、……もうどこかの施設に預けましょうよ?」

「お前、本気で言ってるのか⁉ ふざけるなよ! そんなことしてみろ、周りからどんな目で見られるか分かったもんじゃない。世間体ってもんがあるだろ? 自分で産んだ子どもなんだから、どうにかしろよ」

「……あなただって、あなただって父親なのよ? 親としての責任を果たしてよ……」

 母親は両手で顔を覆い、嗚咽を漏らした。その姿を見てもなお、父親の憮然とした態度は変わらず、更に追い討ちをかけた。

「責任なら果たしてる。俺はこうして毎日働いて、お前やアイツのために稼いで来てやってるんだ。それだけで十分だろ? 今日だって疲れているのに、お前の話にわざわざ付き合ってやってる。感謝して欲しいぐらいだ!」

 その言葉を聞いた母親は、ついにむせび泣くことすら出来なくなっていた。濁りきったビー玉みたいな瞳が、縋りつくものを探すように宙を泳いだ。そんなことなど気付きもせずに、父親はお酒を飲み続けた。

「……おい。酒が無くなった。もう一本持って来てくれ」

 その言葉には、きっと魔法が掛かっていたんだろう。操られるようなぎこちない足取りで、母親はどこかへと向かった。宙を泳いでいたはずの瞳は疲れ切って光を失ったのか、まるで溺死しているようだった。

 少女の位置からは見えなかったが、母親はキッチンに向かったようだった。がさがさと棚を漁る物音だけが、リビングへと響いた。大した音ではないはずなのに、やたらと大きくてやかましく聞こえた。しかし、やがてその音も止んだ。

「お前、いつまで待たせるんだ! 早くし――⁉」

 キッチンへと視線を向けた父親は言葉を無くした。無理もない。視線の先にいたのは、およそ表情などとは言えない顔をした母親が、包丁を逆手に持って立っていたのだから。

 状況を理解した父親は慌てて立ち上がり、気圧されるように後退った。

「……お、お前、お前何のつもりだ……? わ、悪かった。俺が悪かった。お前の話をちゃんと聞いてやる。……だ、だから、それを置け。なあ、頼む……」

 憮然とした態度を改め和解を求めるその姿は、怯えながら命乞いをしているように見えた。しかし、その申し出は届いていないようだった。半開きになった口からは、何の返事も聞こえて来ない。もしかしたら、母親はもう言葉を忘れてしまったのかもしれない。

 母親は、溺死した瞳でただ一点を見つめ続け、動こうとはしなかった。多分、母親は気付いていたのだろう。些細なきっかけで、自分が壊れてしまうことに。

 互いに硬直が続いた末、先に動いたのは父親の方だった。自分の申し出を無視されたことが気に食わなかったのか。それとも単に、この沈黙に嫌気が差したのかは分からない。どちらにせよ、怯えた態度は鳴りを潜め、父親は居直った。

「い、いい加減にしろっ! 悪かったって言っただろ⁉ さっさとそれを置け‼」

 引き金は引かれた。怒り任せの撃鉄が叩いた言葉は、弾丸となって銃口から放たれた。そしてその弾丸は、母親を壊した。

 突如として、母親は奇声とすら言えないただの不快な音を発しながら、包丁を振り回し始めた。闇雲に振り回される刃に再び気圧され、父親は退くことしか出来ずにいた。

 そして、気付けばもう壁際に追い込まれ、互いの距離はジリジリと縮まっていった。間合いに入ったことを悟ったのか、母親は包丁を振り回すことを止めた。そして狙いを定めるように振りかぶり、思い切り包丁を突き立てた。だが、父親は間一髪のところでそれをかわし、再び距離を取った。

 壁に深く突き刺さった包丁を一心不乱に引き抜こうとしているその姿は、もはや人と呼ぶにはあまりにも理性を欠き過ぎていた。そんな母親に慄きつつも、父親は警戒を怠らなかった。

 やたらと熱さを感じる頬を、嫌な汗が伝っていく。いくら拭っても汗は止まることなく流れ続けた。流石におかしいと感じたのか、頬を拭った手に目をやると、たちまち青ざめた顔をした。自分の表情とは反対に、その手は赤く染まっていた。そう、汗だと思い拭い続けていたのは、頬から流れる自身の鮮血だったのだ。

 恐らく、先ほど包丁をかわそうとした時に傷を負ったのだろう。だが父親は、そんなことなどどうでもいいと言わんばかりに目の色を変えていた。この時父親は、自分の置かれている状況を、ようやく本当の意味で理解したのだ。

 自分は今、殺されかけているんだ。だとするのなら、殺されないためには、死なないためにはどうすればいいのか。父親は血眼になってその方法を探した。そして、血に濡れた手を震わせながら、テーブルの上にあった酒瓶に手を伸ばした。酒瓶を手に取ると、浅く荒い呼吸をしながら、ゆらりゆらりと母親に歩み寄った。

 そんなことなど気にも留めず、母親は壁に刺さった包丁を、未だに引き抜こうとしていた。そして、ようやく抜くことが出来た包丁を手に、母親は後ろを振り向いた。すると、母親の頭を強い衝撃が襲った。その衝撃のせいか、やっとの思いで引き抜いた包丁を、母親は床へと落としてしまった。

 何が起きたのか分からない。と呆けた顔をする母親を、もう一度強い衝撃が襲った。その結果、母親は少しよろめいた後、膝から崩れ仰向けになって倒れてしまった。

 そしてとどめを刺すかのように、父親は馬乗りになって母親の頭を酒瓶で殴打した。一回、二回、三回。何度も何度も、単純作業を繰り返すように殴り続けた。鈍い音が少女のもとまで響いて来た。もう何度目か分からない重低音と同時に、甲高い音を立てながら酒瓶が割れた。それが終わりを告げる合図だったのか、父親は殴るのを止めた。

 しばらくの間、動かなくなった母親を見下ろした後、父親は静かに立ち上がり何かを呟き始めた。

「……のせいじゃない。……俺のせいじゃない。お前が、お前が悪いんだ……。俺じゃない。悪いのは……俺じゃない」

 それは、自分自身を言い聞かせるありふれた言い訳であった。父親にとってそれがどれだけ必要な行為なのか分からないが、少女にとってはどうでもいいことだった。そんなつまらない独白に興味はなく、最後まで聞くつもりもなかった。

 だから少女は、躊躇うことなく扉を開け、リビングへと入っていった。少女の存在に気付いた父親は一瞬身体を震わせ、怯えるようにゆっくりと振り向いた。

「……お、お前、見てたの……か?」

 父親の顔を見て、少女は少しだけ驚いた。何故なら父親は、母親と同じ瞳をしていたから。泳ぐことを止め、自ら溺れることを選んだ溺死した瞳。少女はただ、その瞳を見つめながら素直に答える。

「うん、ずっと見てたよ。ねえお父さん。お母さんは、死んじゃったの?」

 少女の問いに対し、父親は大きく笑い声を上げた。その声は、嘲るようにも、蔑むようにも聞こえたが、どちらにせよひどく乾いたものだった。そんな笑い声さえも次第に小さくなっていき、ついには聞こえなくなってしまった。そして、枯れ果てた笑みを浮かべながら、父親は答えてくれた。

「自分の目で確かめて見ろよ……」

 そう言って、父親が顎で指した元へと少女は歩を進めた。酒瓶の破片が散らばった床に横たわる母親は、見違えるほどにひどい有様であった。血まみれの顔は、所々が腫れていたり凹んでいたりした。それはまるで、乱雑に絵の具を塗りたくった粗末な粘土細工。出来損ないの芸術作品そのものだった。

 それでも少女は、自分の母親だとはっきり認識できた。どんな姿になろうとも、それが少女にとって母親であることには変わりなかったからだ。

 少女は、母親の手をそっと自分の頬に当てた。まだ微かに温かさが残っていた。それを必死に感じ取ろうと、更に強く頬に手を押し当てる。感じた、感じ取ることが出来た。母親の温もりが――消えてしまったことを。

「お母さん、死んじゃったよ」

 その事実が、ただただ悲しかった。今まで感じたことのない痛みが、少女の小さな胸を貫いた。父親も、こんな痛みを感じているのだろうか。自分と同じ思いをしているのだろうか。

「ねえ、お父さん」

 違う。きっと違うはずだ。何故なら母親を殺したのは、他ならぬ父親自身なのだから。自分と同じ痛みであるはずがない。自分と同じ思いであるはずがない。

「お母さんを殺した時、どんな思いだったの?」

 母親の死を、少女は悲しいと思った。ならば殺した側の父親は、それ以上の思いを抱いたはずだ。

「どんな気持ちだったの? 特別なものを感じたの?」

 かつて愛した人間を己が手で殺めた。それが特別でないはずがない。特別でなくてはならないのだ。

「それはお父さんにとって、どんなものだったの? 大切なものだったの? 失くしたくないものだったの?」

 それはきっと、何ものにも代えがたいものだ。世界中を探し回っても、同じものなどありはしない。だから、決して手放したくなかったはずだ。けれどもそれを失った。だとするのなら、

「お母さんを殺した時、お父さんの中には」

 ――何が残ったの? そう言い切る前に、父親は少女の首を絞めた。そのまま握り潰せるぐらいに、両の手には力が込められていた。

「お前だ、お前だ! お前だっ! 全部お前だ。俺でも、あいつでもない。全部……全部全部全部っ! お前が悪いんじゃねえかああっ‼」

 怒り、憎しみ、恨み、嘆き、それら全てを孕んだ咆哮が少女に向けられた。

少女は苦痛に顔を歪ませる。それは首を絞められる圧迫感でも、呼吸が出来ないことでもない。こんなにも近くにいる筈なのに、父親の瞳には何も映っていなかったから。あの時の母親と同じように、父親も少女を見てはいなかったから。

 そのことが何よりも、寒くて、痛くて、苦しかった。

 ……ねえ、お父さん。アタシの質問に答えてよ。壊れた機械みたいに同じことばかり言わないでよ。アタシのことを見てよ。アタシはここにいるんだよ。

 そう言いたかった。言葉にしたかった。だけど無理だった。たとえ言えたとしても、きっと届かず伝わらない。そう思った途端、視界がぼやけて音が遠くなっていった。

 ああ、自分は死ぬんだ。すぐ隣で横たわる母親と同じように、父親に殺されるんだ。それでもよかった。恐怖を感じていないわけではなかったが、不思議と心が穏やかだった。

 ただ心残りがあった。まだまだしたいことが沢山あったのに。そう思いはしたけれど、自分がしたいことは何なのだろう。何がしたかったんだろうか。そういえば昔から、したいことなんてなかったような気がする。それなら今、自分がしたいことは何だろう。

 アタシのしたいこと。


 ……たい。

 ……したい。

 ……ころしたい。

 ……アタシは、殺したい。


 そうだ。アタシは殺したいんだ。どうして今まで気が付かなかったんだろう。アタシが殺したいのは、今、アタシを殺そうとしているお父さん。

 殺したい。殺したいよ。あの子猫のように殺したいよ。あの子を殺したのは、懐いてきたからでも、可愛かったからでも、飼いたかったからでもない。アタシはただ、縋りついてきた小さな命の灯を、吹き消してしまいたかっただけなんだ。だから殺した。ドアノブを回すように首をへし折った。

 お父さん……お父さんお父さんお父さんお父さんお父さんお父さんお父さんお父さんお父さんお父さんお父さんお父さんお父さんお父さんお父さんお父さんお父さんお父さんお父さんお父さんさんお父さんお父さんお父さんお父さん……殺したいよ。

 ヒトを殺すのはどんな感じなんだろう? 今まで小さな命はたくさん奪ってきたけど、大きな命はまだだったな。命に大小なんてないけど、やっぱりヒトを殺すことは特別だと思う。

 その初めてがお父さんだなんて背徳的かな。でもアタシは、少しロマンチックだなって思うよ。きっとお父さんにとって、お母さんを殺したことは特別だったんだろうな。いいなぁ、アタシもお母さんの特別が欲しかったな。

 あっ、そうか! どうして悲しいのかがやっと分かった。お母さんが死んだから悲しいんじゃない。お母さんを殺せなかったから悲しいんだ。

 分かった。やっと分かったよ。お父さんのおかげだよ。お礼を言わないと。目一杯の感謝を込めて。声は出せないけど、最高の笑顔で思いを伝えよう。


 お父さん。アタシの初めてになってくれて、ありがとう。


 リビングの照明が明滅している。それが気になって仕方が無かった。そういえば、何日か前から消えかけていた気がする。点いては消えて、消えてはまた点いてを繰り返す。その度に、リビングは景色を変えていった。一つの色彩が、部屋を鮮やかに染めていった。壁に、床に、天井に、その色は飛散していった。

 一体この色はどこから来ているのだろう。探すまでもなく、疑問の答えは目の前にあった。目の前で苦しそうに悶えるヒトの首からとめどなく溢れる赤色は、何よりも美しい色をしていた。

 それにしても、何故このヒトは、こんなにも苦しそうにしているのだろうか。よく見ると、その人の首には包丁が深く刺さっていた。そうか、だから苦しんでいたのか。

 苦しみに比例しているのか、リビングは増々赤く彩られていく。それに呼応するかのように、明暗の間隔も短くなっていく。まるで部屋そのものが、生きて脈打っているように見えた。ならばもし、明かりが消えたらどうなるのだろう。この部屋は死んでしまうのだろうか。

 もしそうなら、消えないで欲しいな。暗いのは好きじゃないから。

 間隔は更に短くなる。思いを見透かした上で、誰かがイジワルをしているようだ。今ならまだ怒らないよ。だから明かりを消さないで。やめて、やめてやめてやめて。お願いだから消さないで。今はまだ消えないで。だってこのままじゃ、このままじゃ。

 思いは届かず、いや、届いたからこそ明かりは消えた。今までがそうだったように、今までそうしてきたように、吹き消されるように灯りは消えた。


 お父さんは死んだ。アタシが殺した。

「ねえ、お父さん。アタシ、何も思わなかったよ。お父さんを殺したのに、何も感じなかったよ?」

 お父さんは、何も言ってくれません。

「何もないよ。お父さんを殺したのに、私の中には何も残らなかったよ。お父さんもそうだったの?」

 お父さんは、何も言ってくれません。

「お母さん。お父さんがアタシを無視するの。どうして? ねえ、お母さん?」

 お母さんも、何も言ってくれません。

「ああ……そうか、アタシは」

 お母さんは、お父さんに殺されました。

 お父さんは、アタシが殺しました。

 二人は死にました。

 アタシは暗闇の中で、独りぼっちになった。

よりにもよって、こんな暗闇の中で気付いてしまった。これではもう、誰もアタシを見てくれない。誰もアタシを探してくれない。そう思うと、寂しさのあまり凍えてしまいそうになった。

 初めから、アタシは独りだったんだ。だって、お父さんとお母さんが死んだ時、アタシの中には何もなかった。それと同じように、アタシは誰の中にもいなかった。自分自身の中にさえアタシはいなかったんだ。

 だったら、今ここにいるアタシは一体誰なんだ?

 アタシという存在はどこにいるんだ?

 自分が何者なのかも分からず、誰も見てくれないというのなら、いなくたっていいじゃないか。いっそのこと消えてしまいたかった。このままじっとしていれば、暗闇に溶け込んで消えてしまえると本気で思った。でも無理だった。

 痛い。痛い。痛いよ。

 身体じゃない。触れることの出来ないどこかが痛いんだ。その痛みが、消え入りそうなアタシを明確にしてしまうから。

 眩暈がして、足元がふらついた。倒れそうになりとっさに何かを掴んだが、結局倒れてしまった。どうやら、アタシが掴まったのはカーテンだったようだ。重みに耐え切れず、レールから外れたのだろう。

 カーテンが外れたおかげで、意図せずしてリビングに光が差し込まれた。だが、心の暗闇までは晴れてはくれなかった。気休めにしかなりはしない。それでも今は、少しでも明るいこところにいたかった。

 外を見ると、街中の至る所に明かりが灯されていた。数え切れないほどの光が、アタシの心を照らそうとしてくれている。そう思うと、痛みや寒さが和らいでいくような気がした。

 世界は光で満ちているんだ。これならきっと、誰かがアタシを探してくれる。誰かがアタシを見てくれる。アタシは、独りなんかじゃないんだ。悲観的になる必要なんてない。そう自分を言い聞かせようとした時、アタシは気付いてしまったんだ。

 ――違う。目の前にある光たちは、アタシのためにあるんじゃない。一つ一つが、誰かの孤独で出来ているんだ。

 だってそうでしょ? 自分を探してくれる、見てくれる人がいるのなら、光なんて必要ない。明るい所にいたいなんて誰も思ったりしない。

 そんなものに照らされたアタシを、誰が探してくれるというんだ。誰が見てくれるというんだ。知りたくなかった。暗闇を掻き消そうと死に物狂いで輝きを放っていたのは、こんなにも多くの孤独だったんだ。

 その光に当てられたためか、強烈な吐き気に襲われた。必死に我慢したが、堪え切れずに嘔吐した。

 変わらないじゃないか。アタシが求めたものは、縋りつこうとしたものは、床に飛び散った吐瀉物と同じだ。無様で、醜くて、汚らしいものでしかない。その事実に押さえつけられるように、アタシは顔を俯け続けた。

 どのくらいそうしていたか分からないが、もうこのままでもいい。そう思い始めた時、ふと誰かがアタシに語り掛けてくる声が聞こえてきた。

 ――お嬢さん、君はどうして俯いているんだい?

「……誰? どこにいるの?」

 その声は、男性なのか女性なのかも分からなかったが、とても優しい声だった。リビングを見渡したが、そこには誰もいなかった。

 ――ここだよ。空を見上げてごらん。ワタシはここにいるよ。

「……空?」

 見上げた夜空は、星一つ見えない黒い海そのものだった。だがそこには、暗闇を照らす確かな輝きが存在していた。

「お月、さま……?」

 ――そうだよ。お嬢さん、俯いたりしないで笑ってごらん? その方がずっと素敵だから。

「……出来ないよ。だってアタシ、独りぼっちになっちゃったから。寒くて、痛くて、苦しいの……。だから今は笑えない」

 ――そうか、君は独りぼっちなんだね。なら、ワタシと同じだ。

「お月さまも、独りぼっちなの?」

 ――ああ。この暗い夜空の中で、ずっと一人さ。

 あんなにも暗くて広い所に一人というのは、きっと寂しいだろう。だが、たとえ夜空にひとりでも、誰かが探してくれる。誰かが見てくれる。一人であっても、独りではない。そんなものを孤独とは呼ばないんだ。

「そうなんだ。でも皆、お月さまのことは探してくれる。ちゃんと見てくれる。アタシとは違うよ」

 ――そんなことないさ。ちゃんと君を探してくれる人がいる。見てくれる人がいる。

「嘘だっ! そんなはずない。だって、だってアタシは……」

 ――嘘じゃないさ。ほら、後ろを見てごらん?

「後ろ……?」

 振り返ったところで何もない。そのはずだった。しかしそこには、両親が立っていた。死んだはずの母親が、殺したはずの父親が、確かにそこに立っていた。

「……な、何で? どうして?」

 ――言った通りだろ? 君を見てくれる人はちゃんといるんだ。

「……でも」

 ――大丈夫。怖がる必要なんてない。さあ、早く両親のもとへ行っておやり。君のことを、待っているんだから。

 本当なのだろうか。誰の中にもいない。自分の中にさえいない。そんなアタシを、待ってくれている人が本当にいるのだろうか。そう疑いつつ、アタシは恐る恐る両親に近付いた。

「……お、お父……さん? ……お母、さん?」

 震えた声でアタシがそう呼びかけると、おいでと言わんばかりに両手を広げてくれた。その胸に、アタシは一目散に飛び込んだ。嬉しかった。本当に嬉しかった。溢れ出る涙でさえ心地良かった。

 迎え入れてくれた。アタシは孤独なんかじゃなかったんだ。そのことを気付かせてくれたお月さまに、喜びを、感謝の思いを伝えなくては。

「ありがとう! ありがとう、お月さま。お月さまの言う通り、アタシにもちゃんといたよ」

 ――ああ、本当に良かった。

「アタシ、お月さまにお礼がしたい! ……でも、何をしたらいいのか分からないの。何をしたら、お月さまは喜んでくれるの?」

 ――それならワタシは、君の素敵な笑顔が見たい。それだけで十分さ。

「分かったよ! だけど、今はまだ上手に笑えそうにないんだ。だから、お月さまみたいに笑えるようになるまで、待っててくれる?」

 ――もちろんだとも。ずっとずっと、待っているよ。

「ありがとう」

 素敵に笑うお月さまを、お父さんやお母さんと一緒に見ようと思った。ゆっくりと見ていたかったから、外が見えるところまでソファーを持ってきた。重たかったけど、頑張ったよ。そこに三人仲良く座った。

 お父さんとお母さんは、互いの肩を抱いて寄り添った。その間にアタシは入り込んで、二人のもう片方の手をそっと抱き寄せた。

「お父さん。お母さん。アタシね、叶えたい夢があるんだ」

 ……何だ? お父さんに言ってごらん。

 ……あら、お母さんも聞きたいわ。

「あのねアタシ、夜空に浮かぶ月に、三日月みたいになりたいの。あんな風に、素敵な笑顔をしてみたいの!」

 今考えたばかりの夢を口にするのは、少し恥ずかしかった。それでも二人は優しく笑ってくれた。たったそれだけのことで、アタシは何にでもなれるような気がした。

「叶うかな? アタシの夢」

 ……ああ、きっと叶うさ。

 お父さんの力強い温もりが、アタシを支えてくれた。

「なれるかな? アタシ、三日月みたいに」

 ……ええ、きっとなれるわ。

 お母さんの柔らかな温もりが、アタシを包んでくれた。

「ありがとう……お父さん。ありがとう……お母さん」

 なんて、なんて幸せなんだろう。これ以上はきっとない。これ以上は欲しくない。だからアタシは、この幸福を抱きしめた。強く、強く、消えないように。

 そしてアタシは、眠りについた。三日月に照らされて、確かな温もりを抱きながら、深く深く眠りについた。




 あの日のことを、今でも鮮明に思い出せる。

 色も、音も、匂いも、感触も。

 あの日の全てを、アタシは決して忘れない。

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