第3話 始まり
1年4組31番 出席番号順に座る。
可もなく不可もない席だな。
いや、どちらかというと不可だ。
何回も言うが、私は田舎から出てきたもんで、この高校へ通うには、まず1時間に1本しかない無人電車に乗り、すかすかの車内で20分ほど揺られ、駅につけば自転車に乗り、学校には誰よりも早く着く。
なんせ、1時間に1本しかないので、その電車に乗るしかないのだ。学校に来る時間なんて自分では選べない。
このクラスに知り合いなどいない。
お昼は誰と食べようか、誰とも群れない一匹狼なんかにはなりたくないし、冴えないグループに入って高校生活を陰で過ごすのも嫌だし、かと言ってヤンキーの仲間入りはしたくない。
これは、最初に声をかける人を間違えたら終わりだな。なんてことを考えているうちに、最初のホームルームは何一つ頭に入らずに終わった。
それから、何の授業があったかは忘れてしまったが、クラスを盛り上げるムードメーカーが後ろでワイワイやってて、クラスのまとまりもあって、まあ悪くないクラスかなと思い始めていた。
前からプリントが回ってきた。
滞りなく後ろへ回す。相変わらず後ろは騒がしい。
「プリント足りないところはないかー。」
先生がみんなに声をかける。
それに応えるように「ありませーん。余ましたー。」と後ろから声が聞こえて振り返る。
彼は、1番後ろの席で余ったプリントをーーー
後ろに投げ捨てた。
(え?)
何やってんだあいつ。どういう神経してんだ。前に回せ前に。もしくは持っていけ。
私は田舎者なもんで(何回目)ゴミを捨てるなんてことはあり得ないし、なんなら道端のゴミも拾ってしまうような人間だったわけで、ましてや余ったプリントを後ろに投げ捨てるなんて、こんな人が世の中にいるのかと思うと少しいや、かなりカルチャーショックだった。
いや、よく見たらこの人、、、
さっきの人だ。同じクラスだったんだ。
彼の名前は、枠谷蒼太。
出席番号41番。
なんでこんなやつに運命感じてしまったんだ。見た目だけかよ。絶対好きにならないね。
高校生活が始まった。
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