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 その後も、俺たちは城を探索し続けたが、城主のラファディとやらは見つからなかった。忍者屋敷みたいにどこかに隠し扉でもあるんだろうか? 俺たちは別にかくれんぼしに来たわけじゃないのになあ。早く出てこいラスボスやーい。


 と、そんなふうに城の廊下を歩いているときだった、少しはなれたところから、若い女の悲鳴が聞こえてきた。なんだろう。魔造人間ホムンクルスのメイドだろうか? とりあえず声のしたほう、城の階段付近に行ってみた。


 すると、そこにいたのはシャラだった。それが、アイスドレイク風のモンスターの群れに囲まれていたのだった。


「お前、帰ったんじゃないのかよ」

「か、帰ろうとしたけど、帰れなかったのよ! それより早く私を助けなさいよ!」


 シャラは涙目で叫びながら、氷結魔法をアイスドレイクに放つが、その攻撃は全くきいてないようだった。まあ、相手は見た感じ氷のモンスターだしな。相性最悪か。


「別に俺たちが助けなくても、こいつらに時間を止める魔法使えばいいだろ?」

「あれはその……今は使えないの!」

「ああMP足りないのか」


 まあ、消費MPがクソ高そうな魔法ではある。


「しゃーねーな。今日のところは助けてやるから、とっとと家に帰れよ?」


 どかばきぼこっ。とりあえず素手でそいつらを全滅させた。


「うえーん、怖かったよう……」


 それを見て安心したのか、今度はシャラは泣きながら抱きついてきた。俺に……じゃなくて、変態女に。二回も回復魔法で蘇生されたし、なついてるんだろうか。


「シャラさん、ここは危険よ。どうして上に戻らなかったの?」

「わ、私だって、ここを出ようと思ったわよ。でも、暗くて出口への階段がどこにあるかわからなくて……」

「暗くて? それだけ?」

「う、うん……」


 シャラは幼児のようにこくんとうなずいた。


 さらに話を聞くところによると、氷結魔法一筋で照明になるような魔法を何一つ覚えていなかったシャラは、とりあえず俺たちに明かりになるものをもらおうと、いったん大氷結の間に戻ったらしい。しかし、俺たちの気配はすでにそこになかったので、泣きながらそこをうろうろしていたら下り階段に転落し、そのままネズミの穴に落ちた昔話のおむすびようにごろごろ落ち続けてこの城にたどりついたらしい。相変わらず抜けてるやつだ。


「まあ、事情はわかったから、今度はちゃんと帰れよ」


 俺はそんな間抜け女に携帯していたトーチを渡した。これに火をつければ、出口までは問題なく進めるはずだ。階段上るだけだし。


 だが、シャラはそれを受け取らなかった。真っ青な顔をしたまま変態女の胸にしがみつき、ぷるぷると体を震わせているだけだった。


「こ、ここから一人で帰るなんて無理! 絶対無理!」


 どうやら、一人にされるのが怖いらしい。間抜けな上にめんどくせー女だな。


「まさかお前、俺たちと一緒にいるつもりか?」

「そ、そうね……。ちょっとだけ同行させてもらうと助かるわね……」

「俺たちこれから、ここのボスを倒しに行くんだけど。討伐ミッションなんだけど?」

「えっ」

「なんか超つえーやつらしいんだよな。お前、俺たちと一緒だと逆に危ないんじゃないか? 巻き添えで死ぬかも?」

「え、いや、でも、私が危ないときはあなたたちが助けてくれるはずよね?」

「助けないが」

「えっ」

「むしろ積極的に見殺しにするが」

「な、なによそれ! 私に死ねって言いたいの! どうせ私は、三百年以上も誰にも気づかれないまま放置されてた女よ! おまけに頭に矢は刺さるし、かわいい犬には食い散らかされるし、階段からも落ちるし、今日はもう本当にさんざんな一日よ! うえええんっ!」


 と、シャラは今度はギャンギャン泣き始めた。まためんどくさい女だが、確かによく聞くとろくな目にあってないな、こいつ。運のステータス低い系か。


「いいじゃねえか、アル。かよわい女の子の一人ぐらい、一緒にいてやってもさ」


 と、ヒューヴはへらへら笑って言う。そのかよわい女の頭を矢を刺したのはお前だろうがよ。


「いやでも、こいつ今、魔力ほとんど残ってないっぽいじゃん? ただの役立たずの足手まといじゃん?」

「そんなことないわよ! 何かの手段で魔力が回復出来たら、あなたたちの役には立てるはずよ!」

「何かの手段って? 魔力回復薬とかか?」


 そんなもん持ってきてないんだが。


「ああ、そういうことだったら私に任せて」


 と、変態女は何を思ったのか、左手で近くのリュクサンドールの手首をつかみ、もう一方の右手をシャラの肩に置いて、何やら集中しはじめた。何だろう? 何かオーラのようなものが三人を包んでいるようだが……?


 そして、やがて、


「すごいわ、魔力が回復したわ!」


 シャラは歓喜の声を上げた。今のはMP回復の儀式かよ。


「いったい何したんだよ、お前?」

「魔力譲渡の術で、サンディーの有り余っている魔力をシャラさんに送ったの。ただ、サンディーの魔力は強い闇の力で穢れているから、魔力変換マジックコンバートの術で浄化しながらだけどね」

「へえ、そんなこともできるのか。便利だな」


 しかし、さすがにそのまんま生身の人間に送るのは無理なんだな。やっぱこの男、邪悪そのものか。


「よし、これで凍結時間フローズンタイムの術がまた使えるようになったわ! あなたたちの足手まといになんかならないんだから!」


 シャラは魔力が戻って、だいぶメンタルも回復したようだった。


「……その術は、ここの主には効かないと思うけれどね」


 と、変態女が小声でつぶやくのが聞こえた。まあ、こいつには効かなかったんだし、それもそうか。

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