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 やがて、俺以外の人たちの活躍により、スライムは無事全滅させることができた。俺は邪魔にならないように隅っこで体育座りしていただけだった。


 ただ、そこから再び歩き出した後も、俺たちは次々に錬金術で作られたと思われるモンスターに襲われ続けた。さすがにスライムばかりではなかったので、俺も普通に倒せたが、普通のザコモンスターよりはかなり強いものばかりのように思われた。ま、どっちにしろ俺の敵じゃないけどなー。


「しかし、こんだけのモンスター生み出すなんて、どっかに工場でもあるのか?」


 その途中、ふと城の廊下の窓から庭を見下ろしながら俺は言った。庭にはそれらしい建物はなさそうだった。


「そうね。生産に使われている設備も気になるところね。でも、何より異常なのは、これだけのモンスターをこんな地下深くで量産できていることよ。いったいどうやって、それに必要な膨大な魔力を調達しているのかしら」


 変態女がそんな俺に言う。確かに、そのへんも気になるところだな。


「……そういえば、彼かどうかはわからないけれど、一人の錬金術師が数百年前に国を一つ滅ぼしたという話を聞いたことがあるわ」


 と、ふと何か思い出したようだった。


「ただ、彼の場合、単にその国の人たちを殺しまわって終わりではなかったの。最初に国民全員を皆殺しにしたのは確かだけれど、そこからのエピソードは正気の沙汰ではないわね。自らが皆殺しにした国民たちと同じ数の、姿かたちも元の人間とそっくりの魔造人間ホムンクルスを用意して、死んだ国民たちの魂をそれぞれそこに入れて、表面上は何事もなかったかのように暮らさせてたんだもの」

「え……いったん皆殺しにしたのに、代わりのボディを与えてたってこと?」


 なんかおぞましい話だな?


「そして、その後その国は五年でびっくりするぐらい繁栄したの。対立していた隣国と和解し、交易を盛んにして商業を発達させ、開墾や治水工事もして農地を豊かにして……というふうにね」

「みんなゾンビなのに?」

「そう。そして、六年目の春には、国民たちは急に気が狂ったようになって、お互いに殺し合いを始めたそうよ。それでその国は滅んでなくなってしまったみたい」

「また極端な話だな」


 発展させるだけさせておいて、急にぶちこわすとか。シムシティ感覚かよ。


「この話で一番気になるのは、なぜ一人の術者がそんな大規模術式を使えたのかということよ。もしかすると彼は、錬金術師の悲願の結晶である賢者の石を手中に収めているのかもしれないわ」

「ああ、金を生み出すとか、無限のエネルギーを生み出すとかいう、神アイテムだっけ」


 そうそう、作品によって微妙に設定が異なるんだよなあ。たくさんの人間を人柱にして錬成したりさあ。


「ここにいるラファディという錬金術師が賢者の石をすでに手に入れているとすれば、非常にやっかいな相手になるわ。文字通り、無限の魔力でなんでもできてしまうのよ」

「確かに、めんどくさそうな相手だな」


 頭のおかしい異常者で、アホみたいな魔力の持ち主とか。なんとかに刃物状態かよ。


「いやあしかし、国まるごと術をかけるなんて、壮大な話ですねえ」


 と、俺の近くの、アホほど魔力を持つ頭のおかしい異常者がつぶやいた。


「僕も昔、一つの国に丸ごと呪術をかけたらどうなるんだろうって思って試そうとしたことがあるんですけど、準備に手間取っているうちにその国の偉い人たちに見つかってしまって、すごく怒られちゃって処刑されちゃったことがあったんですよね。いやー、その錬金術師の人は僕と違って、ちゃんと処刑されずに術を成功させたんですね。うらやましいですねえ」


 うーん、今の話を聞いてこのセリフ。やっぱまぎれもない異常者だわ、こいつ。というか、こいつから間抜けさとユルさを引けば、ラファディという男になりそうな気配すらある。


「勇者様、目には目を、よ。きっと、ラファディという男に対抗できるのはこのサンディーしかいないわ」

「だろうなあ」


 こんなやつの力に頼るのなんてはなはだ不愉快だが、今はそうとしか考えられなかった。争いは同じレベルの者同士でしか発生しないって言うしなあ。

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